見出し画像

新年を迎えて (年頭御挨拶)

厚生労働省年金局長 間 隆一郎

 令和7年の新春を迎えるに当たり、謹んでお慶び申し上げます。
 また、日頃からの年金制度・事業運営へのご理解とご協力に、厚く御礼を申し上げます。
 近年は、平均余命の伸長による高齢期の長期化や働き方の多様化が進んだことにより、高齢者や女性の就業率が上昇しており、こうした時代の変化を年金制度に反映し、高齢期の経済基盤の充実を図ることができるよう、制度の見直しを行っていくことが必要です。
 昨年公表した5年に一度の財政検証では、近年の女性や高齢者の労働参加の進展や積立金の好調な運用等により、前回検証に比べ、将来の給付水準が改善することが確認できました。また、今回新たに実施した個人単位の分布推計では、若年世代ほど厚生年金期間が延伸し、年金額の増加へ寄与することも確認されました。こうした財政検証の結果を踏まえて、社会保障審議会年金部会で議論を深め、昨年12月には、議論の取りまとめを行いました。
 この取りまとめに基づき、働き方に中立な制度とする観点や、年金の所得保障機能、所得再分配機能の強化を図る観点から、引き続き制度の見直しに取り組みます。具体的には、賃金要件や企業規模要件の撤廃等による被用者保険の適用拡大、高齢期の活躍を後押しする観点からの在職老齢年金制度の見直し等に取り組むとともに、将来の基礎年金水準を確保する観点からの基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了についても、与党や年金部会のご指摘を踏まえて、更なる検討を進めます。
 また、高齢期に向けた資産形成を支援し、多様な働き方やライフコースに対応する観点から、私的年金制度の見直しにも取り組んでまいります。具体的には、昨年12月の社会保障審議会企業年金・個人年金部会の議論の取りまとめ等に基づき、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢の上限の引上げや拠出限度額の見直し等に取り組みます。
 年金積立金の運用については、2001(平成13)年度の自主運用開始以来、昨年9月末までに、累積で153.6兆円の運用収益という年金財政上必要な利回りを確保しております。昨年12月の社会保障審議会資金運用部会の議論の取りまとめに基づき、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の新たな中期目標を策定いたします。
 社会保障協定については、これまでに23カ国との間で協定が発効しております。昨年は、オーストリアとの社会保障協定が国会で承認されたところであり、協定の早期発効に向けた準備を着実に進めてまいります。
 年金事業の運営については、厚生労働省と日本年金機構の一体的な連携の下、今年度から始まった第4期中期目標・中期計画等の着実な取組を進めております。国民年金については納付率が80%を超えましたが、厚生年金保険と併せ、引き続き適用・徴収対策を推進するとともに、迅速で正確な事務処理を実施してまいります。また、皆様の利便性を向上すべく、業務運営の効率化に資するシステム構築等を図ってまいります。
 年金制度について、多くの皆様に分かりやすく正確にお伝えすることが重要と考えており、例えば、働き方・暮らし方の変化に伴う将来の年金受給見込み額の変化を「見える化」すること等を目的に運用を行っている「公的年金シミュレーター」について、2026(令和8)年度からの機能強化に向けた開発を進めてまいります。
 年金制度には、取り組むべき多くの課題がありますが、長期的な視野に立って全力で取り組んでいく所存です。結びに、本年が皆様方にとって実りある年となることを祈念いたしまして、御挨拶といたします。


社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。