
DCの拠出限度額を見直しへ――企業年金・個人年金部会における議論の整理
厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会(部会長=森戸英幸・慶應義塾大学大学院法務研究科教授)は昨年12月26日、次期年金制度改革に向けた取り組みの方向性について審議し、取りまとめを行った。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢の上限の引き上げについては、政府が令和4年11月に決定した「資産所得倍増プラン」で70歳未満に引き上げるために必要な措置を講ずることとされており、同部会で具体的な内容について検討を行った。引き上げの対象となるのは、国民年金被保険者であるという現在の加入可能要件に加え、①iDeCoの加入者・運用指図者だった人②企業型確定拠出年金(DC)等の私的年金の資産をiDeCoに移換する人――であって、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない人にiDeCoの加入・継続拠出を認めるべきとしている。
一方、iDeCoの受給開始可能年齢の上限を引き上げることについては、高齢期における手続きが困難であることや、令和4年5月に75歳に引き上げられたばかりで状況が明らかでないことなどから引き続き75歳とすることにした。
iDeCoの拠出限度額については、企業年金がない場合や、事業主掛金が少ない場合にも企業年金と合わせた共通の拠出限度額まで拠出できるように見直しを行うことにしている。企業型DCの拠出限度額については、賃金の上昇等の経済・社会情勢の変化を踏まえた見直しを行うべきだとし、企業型DCのマッチング拠出について、従業員の加入者掛金が事業主掛金額を超えられないとする制限を見直す必要があるとしている。このほか、継続投資教育の充実や自動移換防止策、企業年金の普及に向けた周知広報などに取り組むよう提言している。
昨年12月27日には、令和7年度厚生労働省関係税制改正事項が公表され、企業年金・個人年金に関しては具体的に以下点を見直すことが示されている。
第2号被保険者の企業型DCの拠出限度額を現行の月額5.5万円から6.2万円に引き上げる
第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額を現行の月額2.0万円または2.3万円から6.2万円に引き上げる
第1号被保険者の拠出限度額(iDeCoと国民年金基金で共通)を現行の月額6.8万円から7.5万円に引き上げる
60歳以上70歳未満でiDeCoに加入できない人のうち、個人型DCの加入者・運用指図者だった人または私的年金の資産を個人型DCに移換でき、老齢基礎年金と個人型DCの老齢給付金を受給していない人を新たに加入対象とし、その拠出限度額を月額6.2万円とする
企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えることができない要件を廃止する
