#27 遺族厚生年金の請求が認められた内縁の妻のケース
今回は、前回とは逆に内縁の妻と亡夫との生計維持関係が明らかだったケースです。内縁の妻に遺族厚生年金の受給権が認められるためには、戸籍上の妻と亡夫との「婚姻関係が実体を全く失ったもの」となっていることが必要で、これが本ケースのポイントです。今回は、「婚姻関係が実体を全く失ったもの」とはどういう状態なのかを中心に見ていきます。
内縁の妻からの遺族厚生年金の請求
老齢厚生年金受給者のA雄さんが死亡したとのことで、内縁の妻というC子さんが年金事務所に遺族厚生年金の請求に来所しました。
A雄さんには厚生年金保険の被保険者期間が439月あり、老齢厚生年金の受給権者(以下「受給権者」という。)であることが基礎年金番号から確認できました。また、A雄さんには、その死亡時において、戸籍上の妻B子さんがいました。
被保険者期間が300月以上の老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合、その死亡当時、その者によって生計を維持した配偶者に遺族厚生年金が支給されます。この「配偶者」には、婚姻はしていないが事実上、婚姻関係と同様の事情にある者(以下「内縁の妻」という。)が含まれます。
また、受給権者に戸籍上の妻のほかに内縁の妻がある場合(以下、このような内縁の関係を「重婚的内縁関係」という。)に、内縁の妻が遺族厚生年金を受給できる配偶者であると認められるためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
① 受給権者によって生計を維持していた事実があること
② 受給権者と戸籍上の妻との婚姻関係が実体を全く失ったものとなっていること
なお、A雄さんは死亡当時、C子さんと生計を同じくしており、C子さんの年収は850万円未満です。2人に生計維持関係があったことは明らかです。
そこで、問題となるのは、A雄さんの死亡当時、戸籍上の妻であるB子さんとの婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっていたか否か、ということになります。
ここから先は
¥ 100