遺族年金のしくみと手続~詳細版|#2 重婚関係にある場合の遺族年金の受給権
今回は、家を出奔したA雄さんが年金受給中に死亡し、A雄さんが転がり込んだ先のB子さんが遺族年金の請求に年金事務所を来訪したケースです。A雄さんには、戸籍上の妻C美さんがいて、C美さんも遺族年金の請求に年金事務所を訪れました。
B子さんとC美さんのどちらに遺族年金の受給権があるか、その判断プロセスについてご紹介します。
【事例概要】
内縁の妻B子さんの遺族年金の請求
A雄さんが死亡したので遺族年金の請求をしたいとのことで、内縁関係にあったB子さんが年金相談に来所されました。状況確認のために話しを聞いて行くと、次のようなことがわかりました。
B子さんの話によると、B子さんには婚姻歴がなく、戸籍は亡父親を筆頭者とし、母親と一緒の戸籍になっています。小さな居酒屋を営んでいた平成22年5月頃に客として飲みに来ていたA雄さんと顔見知りとなり、その後、同居を始めたのですが、住民票上はA雄さんとB子さんはそれぞれが世帯主となっているとのことでした。
この同居はA雄さんが特別支給の老齢厚生年金の請求をするために居住地が必要となり、B子さん宅を住所と定めて同所に転入手続をしたものです。住民票謄本によると、A雄さんの前住所欄には転入前の住所の記載はなく、「住所設定」との記載があるのみです。このことから、A雄さんはトラブルによって家族の許を出奔し、住民基本台帳法上の届出をしないまま長期間が経過して、その間、住民票が消除されていたものと推認されます。
また、A雄さんにはわずかな年金のほかに収入もなく、長期間の放浪生活であったこと、病気の治療費が必要であったことから、同居はしていたもののB子さんを生計維持していたとは言えない状態でした。
なお、A雄さんには別居中の戸籍上の妻C美さんがおり、夫婦には長男Xさん、長女Yさんがいます。A雄さんの特老厚の請求時には、加給年金対象配偶者としてC美さんを届け出ています。
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