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医療保険部会が医療機関の減収補償の仕組み案を議論(8月19日)

社会保障審議会の医療保険部会は8月19日、感染症法の改正について議論した。厚労省は、感染症医療を提供した医療機関の減収補償の仕組みの案を提示。保険者からも費用負担を求める考えが示されたため、健保連や協会けんぽの代表などから反対・慎重意見が相次いだ。

秋の臨時国会への提出見込まれる感染症法の改正については8月1日の厚生科学審議会感染症部会で、厚労省が感染症に対応する医療機関の抜本的拡充の対応策を提示。次のような事項を示した。

  1. 都道府県は国の定める基本指針に基づき、感染症まん延時等における医療提供体制の確保に関し、数値目標を盛り込んだ計画を平時から策定する

  2. 都道府県があらかじめ医療機関との間で病床や外来医療の確保等の具体的な内容に関する協定を締結する仕組みを創設する

  3. 感染症まん延時等において、協定に沿った履行を確保するための措置の公表や一定の医療機関にかかる感染症流行初期における事業継続確保のための減収補償の仕組みの創設を検討する

保険者委員「公費で賄うべき」

8月17日の医療部会でも議論となった。そのなかで医療機関の減収補償について「全部公費で負担するよりも広く国民で支える仕組みが良いのではないか」「保険医療機関が協力することを健康保険法に明記すべきではないか」といった意見が出された。

これを受け、厚労省は「事業継続確保のための減収補償の仕組みのイメージ案」を次のように示した。

  1. 「初動対応等を含む特別な協定を締結した医療機関」について、協定に基づく対応により一般医療の提供を制限して、大きな経営上のリスクのある流行初期の感染症医療の提供をすることに対し減収補償を行う

  2. 補償額は感染症医療の提供を行った月の診療報酬収入が、感染症流行前の同月の診療報酬収入を下回った場合、その差額を支払う

  3. 事業実施主体は都道府県

  4. 費用負担者は国、都道府県、保険者(被用者保険、国保、後期高齢広域連合)

費用負担者に保険者を加えたことに対し、「新たな感染症における医療インフラは本来全額公費で賄うべき。コロナ禍に匹敵する事態が起こったとしても診療行為がないのにも関わらず保険者が費用負担をすることはおかしい」(健保連の佐野雅宏委員)「国民へのまん延防止を目的とする感染症対策に保険者負担が入ることでこれまでの原則が崩れてしまうため、慎重を期すべきだ」(協会けんぽの安藤伸樹委員)「保険者と被保険者の納得性の観点から到底承服できない。感染症まん延時に必要な医療機能を維持する費用は公費で賄うべきだ」(連合の村上陽子委員)といった意見があがった。

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