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#13 夫が妻の扶養に入れるのはどんなとき?

働き方改革や社会保険の適用拡大で厚生年金保険・健康保険に加入する働き方が増えています。
すでに定年退職を迎えて年金生活者となった場合、働く妻の扶養に入ることはできるでしょうか?
Yさんは、67歳の年金生活者ですが、妻は、パート勤務から正社員になり、厚生年金保険・健康保険(以下、「社会保険」という。)に加入しています。
社会保険には、「扶養家族」という考えがあり、扶養家族の場合、保険料の負担をしないでも社会保険(要件あり)に加入することができます。
扶養家族には、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」があり、それぞれ要件があります。
今回は、社会保険上の扶養を中心にご説明しましょう。


社会保険上の扶養とは

社会保険上の扶養(被扶養者)になるためには、日本国内に住所(住民票)があり、かつ、「収入要件」と「同一世帯」の条件を満たす必要があります。
令和2年4月以降、被扶養者の認定にあたっては、「日本国内に住所を有する(住民票がある)こと」が要件として追加されました。
なお、留学生や海外赴任に同行する家族等の日本国内に生活の基礎があると認められるものについては、国内居住要件の例外(別途、添付書類等必要)として、被扶養者の認定が可能となります。
1)収入要件
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)で、かつ、次の➀または➁のいずれかを満たしていること(図表1参照)。

➀同居の場合
収入が扶養者(被保険者)の収入の2分の1未満であること
➁別居の場合
収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であること

ここでいう「年間収入」とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。
たとえば、4月1日を扶養の認定日として申請する場合は、4月から今後1年間(当年4月~翌年3月)の見込み収入額を計算して、その額が認定基準を満たすかどうかで判断することになります。
また、収入には、公的年金や雇用保険の失業等給付、健康保険の出産手当金や傷病手当金も含まれます。
収入のうち、公的年金は、老齢年金のみならず、障害年金と遺族年金も含まれます。
たとえば、60歳未満で給与収入がある場合は、月額10万8,333円以下、雇用保険の基本手当を受給中の場合は、日額3,611円以下であれば要件を満たすことになります。
なお、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上ある場合でも、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときで、その世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。

(2)同一世帯の条件
次に、被扶養者となれる家族の範囲は、3親等内の親族と決まっています(図表2参照)。
さらに、扶養者(被保険者)と同居しているか、別居かによって、条件が異なります。

➀ 被保険者と同居している必要がない人
配偶者、子、孫および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属です。
➁ 被保険者と同居していることが必要な人
上記➀以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)、内縁関係の配偶者の父
母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む。)です。

出典:協会けんぽホームページ

健康保険の扶養に入れる年齢

ところで、健康保険の扶養に入れる年齢をご存じでしょうか?
健康保険の扶養に入れる年齢は、75歳になるまでです。
75歳(65歳以上75歳未満の一定の障害のある人で、申請して広域連合の認定を受けた人を含む。)になると、「後期高齢者医療制度」に移行するからです。
ちなみに、健康保険の被保険者についても75歳になるまでで、75歳以降は、すべての人が後期高齢者医療制度に移行します。

税法上の扶養

「扶養控除」といい、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。
控除額は、扶養親族の年齢(その年の12月31日時点で判断)、同居しているか否かなどにより決まります(図表3参照)。

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