
令和3年度の公的年金財政状況報告を審議ーー第96回年金数理部会
厚生労働省の社会保障審議会年金数理部会(部会長=翁百合・日本総合研究所理事長)は3月30日、第96回部会を開催し、令和3年度の公的年金財政状況報告について審議した。公的年金財政状況報告は、公的年金各制度における毎年度の決算や財政検証との比較を踏まえ、各制度の財政状況を分析・評価したもの。報告書の冒頭に掲載している「公的年金財政状況報告-令和3(2021)年度-(ポイント)」は、「一般の人にもわかりやすく」という観点から議論を重ね、年金財政のしくみと現況、これに対する評価を簡潔に掲載し、令和2年度版から大幅な見直しを行った。
令和3年度における公的年金の収支状況を見ると、全体では運用損益分を除いた収入総額54.0兆円、支出総額53.7兆円となり、運用損益分を除いた単年度収支残はプラス0.3兆円だった。さらに、運用損益が11.9兆円だったため年度末積立金は246.1兆円と対前年度比で12.2兆円増加した。
令和3年度までの実績と令和元年財政検証との比較や、長期的な財政の均衡の観点から評価を行ったところ、国民年金第1号被保険者は財政検証の見通しを下回り、厚生年金被保険者は上回る状況が続いていることが確認された。一方で、令和元年以降の合計特殊出生率は、平成29年人口推計における出生中位と出生低位の仮定値の間に位置し、出生中位の仮定値との乖離は拡大していることが確認された。これらの将来見通しからの乖離が、一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなると分析。年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであるとしている。
委員からはポイントについて評価する意見が多く出された一方で、報告書をいかに広く周知し情報提供を行っていくという点で課題があると指摘されたほか、「これ以上平易に一般的な言葉にしていくと今度は正確性の問題が出てくる。自分が将来いくら受けられるのかというところに圧倒的に関心があるため、そうした方向でもう一工夫があるとわかりやすさや身近な感じがあるのではないか」という意見があった。報告書は、委員から指摘のあった軽微な修正などを含めて部会長一任となった。