年金部会が次期制度改正の方向性、障害年金、遺族年金等で2巡目議論に
第17回社会保障審議会年金部会(部会長:菊池馨実 早稲田大学理事・法学学術院教授、部会長代理:玉木伸介 大妻女子大学短期大学部教授 )が7月30日に開催され、「次期年金制度改正の方向性」「障害年金制度」「遺族年金制度等」について、2巡目の議論に入った。厚生労働省は、次期年金制度改正の方向性については、「働き方に中立的な制度を目指すとともに、ライフスタイル等の多様化を年金制度に反映しつつ、高齢期の経済基盤の安定や所得保障・再分配機能の強化を図る」ことを見直しの基本的な考え方に据え、その対応の方向性として、
①働き方に中立的な制度の構築(論点:被用者保険の適用拡大、いわゆる「年収の壁」と第3号被保険者制度、在職老齢年金制度等)
②ライフスタイル等の多様化への対応(論点:高齢期より前の遺族年金、加給年金等)
③平均寿命の延伸や基礎年金の調整期間の長期化を踏まえた、高齢期の経済基盤の安定、所得保障・再分配機能の強化(論点:マクロ経済スライド調整期間の一致、標準報酬月額の上限等)
④業務運営改善関係・その他所要の事項への対応
――の4点を掲げた。
障害年金制度の見直しでは、「現時点で議論が求められる課題」として、
①初診日要件(障害厚生年金において、保険事故の発生時点を初診日とすることを維持しつつ、延長保護や長期要件を認めるべきかどうか。)
②事後重症の場合の支給開始時期(事後重症の場合でも、障害等級に該当するに至った日が診断書で確定できるのであれば、その翌月まで遡って障害年金を支給することを認めるべきかどうか。)
③直近1年要件(直近1年要件について、令和8年3月31日が当該措置の期限となっているが、次期制度改正に向けて、これまで同様に10年間の延長をすべきかどうか。)
④障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い(障害年金受給者の法定免除期間について保険料納付済期間と同じ扱いにするべきかどうか。)
⑤障害年金と就労収入の調整(障害年金と就労収入の関係をどのように考えるか。両者の間で一定の調整を行うべきか。)
――の5つの論点を提示した。
遺族年金制度等の見直しでは、「20代から50代に死別した子のない配偶者の遺族厚生年金の見直し」を提案。現行制度では、夫が働き、妻を扶養する片働き世帯を中心に、夫と死別後、女性の就労が困難になることから、性別による固定的役割分担を念頭においた給付設計となっている。具体的には、妻に対しては30歳未満の場合には有期給付、30歳以上の場合には期限の定めのない終身給付が行われ、その一方で、夫は就労して生計を立てることが可能であるとの考えから、55歳未満の夫には遺族厚生年金の受給権は発生しない。また、女性には、受給権取得当時の年齢が40歳以上65歳未満である中高齢の寡婦のみを対象とする加算があるなど、制度上の男女差が存在している。
現在は、男女とも働く世帯が一般的となり、配偶者と死別後も就労し続けることが可能となってきている。そこで、遺族年金についても性別による固定的役割分担を前提としない給付設計としていく考えから、20代から50代に死別した子のない配偶者の遺族厚生年金の見直しの方向性として、遺族厚生年金を配偶者の死亡といった生活状況の激変に際し生活を再建することを目的とする5年間の有期給付と位置付け、年齢要件に係る男女差を解消していくことを検討。妻については、時間(20年間)をかけて段階的に有期給付に移行していく考えを示した。
厚労省の説明に対して、年金部会の委員が意見を述べ、最後に菊池部会長が「事務局からの提案に対して、基本的な方向性はおおむね(年金部会委員に)了承いただいた」とこの日の議論を取りまとめた。