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精神科救急医療の体制整備で厚労省WGが初会合(8月28日)

厚労省の「精神科救急医療体制整備に係るワーキンググループ」は8月28日、初会合を開催した。

「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」の下に設置されたもので、座長には、国立精神・神経医療研究センターの藤井千代氏が就いた。WGは、精神科救急医療体制の整備や相談体制などを議論し12月に取りまとめ、検討会に報告する予定だ。

精神科救急医療体制整備事業の課題などが報告される

「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」は今年3月に設置され検討を進めており、令和3年3月に取りまとめを行う予定だ。それを踏まえ、厚労省は必要に応じて施策を見直す方針。同検討会では、精神科救急医療体制の確保の重要性や課題などが指摘されており、WGを設置して議論を深めることとされた。

初会合で、厚労省は、平成20年度から実施している「精神科救急医療体制整備事業」について現状と課題などを報告した。

同事業の実施主体は都道府県・政令指定都市。令和2年度の予算額は17億円だ。具体的に、▽緊急対応が必要な患者の重症度に応じた受け入れ先の調整などを24時間365日対応する「精神科救急情報センターの設置▽関係機関間の連携などを図る「精神科救急医療体制連絡調整委員会」の設置▽精神科救急・外来・身体合併症対応などを行う各医療施設の整備─を実施する。

精神科救急医療施設については、複数病院の輪番制で対応する「病院群輪番型」と、同一の医療機関で重度の症状を呈する精神科救急患者を中心に24時間365日対応する「常時対応型」の2タイプを導入している。常時対応型でも24時間・365日の対応を行っていない病院があるなど、役割を正確に認識できていない実態も指摘されている。

精神科救急医療圏域の設定は各都道府県で異なり、2次医療圏よりも多く設定しているのは千葉県のみで、2次医療圏と同数なのは大阪府など5府県、41都道府県では2次医療圏よりも少なく設定している。

圏域は自治体における各年度の精神科救急患者等の状況や圏域の人口などを総合的に評価して設定するものとされているが、精神科救急医療体制に参加している病院数は1圏域の平均で6.7だが、0から52までと幅も小さくない。

身体合併症への対応も課題だ。対応できる医療機関が無い都道府県が4割弱、また精神科と一般科の連携による対応医療機関が無い都道府県も6割に上る。

他事業に移行した「24時間精神医療相談窓口」で電話相談を受けている都道府県で、精神科救急情報センターに直接相談が寄せられるケースが30年度に約4万2千件に上った。役割分担が求められている。

こうした状況から、厚労省は、検討事項として①精神科救急の対象者②精神科救急医療体制連絡調整委員会の役割③常時対応型や病院輪番型の各医療機関の役割④精神科医療救急圏域の設定で考慮すべきこと⑤身体合併症の対応の在り方⑥24時間精神医療相談窓口と精神科救急情報センターの役割分担─を示した。

初会合では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける精神科救急医療体制を整備することが確認された。構成員からは、精神科救急医療体制整備事業の評価指標の必要性や、精神科救急にかかる前の予防の重要性などが指摘された。

構成員は次の通り(五十音順)。
▽小阪和誠(日本メタンルヘルスピアサポート専門員研修機構理事)▽来住由樹(日本公的病院精神科協会)▽杉山直也(日本精神科救急学会理事長)▽辻本哲士(全国精神保健福祉センター長会会長)▽長島公之(日本医師会常任理事)▽長谷川直実(日本精神神経科診療所協会)▽藤井千代(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域・司法精神医療研究部部長)▽松井隆明(日本精神科病院協会理事)▽松本晴樹(新潟県福祉保健部部長)▽山本賢(全国精神保健福祉相談員会副会長、埼玉県飯能市健康福祉部障害者福祉課主幹)

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