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福祉・介護職員等特定処遇改善加算の配分ルール柔軟化を提案(11月27日)

厚労省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームは11月27日、▽障害福祉現場の人材確保・業務効率化▽障害者虐待防止の推進・身体拘束等の適正化▽その他─などの各サービスの横断的事項について議論を深めた。人材確保・業務効率化について厚労省は、福祉・介護職員等特定処遇改善加算の配分ルールの柔軟化を提案した。検討チームからは異論も出た。

その他、厚労省は、これまでの検討を踏まえた基準省令改正のパブリックコメント案を示した。

自治体が条例で定める上で必要な基準省令の改正案をまとめたもので、改正省令は来年1月に公布される予定だ。今回示された案に基づき、近日中に意見公募が開始される。


障害福祉現場の人材確保・業務効率化

加算の取得促進で要件を緩和

人材確保・業務効率化では、⑴昨年10月に導入された福祉・介護職員等特定処遇改善加算の配分ルールの柔軟化⑵福祉・介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止等⑶人員配置基準における仕事と育児・介護との両立支援への配慮⑷現場の業務効率化を図るためのICTの活用─の4点を示した。

まず⑴福祉・介護職員等特定処遇改善加算について更なる加算の取得促進を図るため各事業所でより柔軟な配分を可能とする見直しを提案した。

平均賃金改善額について、①経験・技能のある障害福祉人材は他の障害福祉人材の2倍以上とすること②その他の職種(※賃金改善後の賃金額が年額440万円を上回る場合は対象外)は、「他の障害福祉人材」の2分の1を上回らないこと─とする現行ルールの緩和を示した。11月9日の社保審・介護給付費分科会での議論を踏まえ、次のように検討することを説明した。

「経験・技能のある障害福祉人材」は「他の障害福祉人材」の「2倍以上とすること」から「より高くする」とする。また「その他の職種」は「他の障害福祉人材」の「2分の1を上回らないこと」から「より低くする」とした。

さらに11月26日の社保審・介護給付費分科会では、9日の同分科会での検討を踏まえ、厚労省から「経験・技能のある介護職員」について「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」から「より高くすること」とする見直しを再提案したことが報告された(「その他の職種」は、「その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」というルールは維持)。

検討チームのアドバイザーを務める柏市障害福祉課の小川正洋課長は、特定処遇改善加算の要件緩和について、加算の趣旨を踏まえて「現行を維持」するよう求めた。

早稲田大学の岩崎香教授は、障害福祉サービスは介護サービスよりも「多様な職種が働いている」と指摘し「その他の職種」への配分をより柔軟にできるように見直すことを求めた。

処遇改善加算Ⅳ・Ⅴを廃止へ

⑵福祉・介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴについて上位区分の取得が進んでいることを踏まえ、廃止することを提案した。令和3年度からの新規算定は認めないこととし、1年間の経過措置期間を設ける方向も示した。

他方、24年度に福祉・介護職員処遇改善加算を創設した折に、対象職種を限定しないことを主眼として「福祉・介護職員特別処遇改善加算」(特別処遇改善加算)が導入された。

昨年10月に導入された「福祉・介護職員特定処遇改善加算」の事業所内の配分についてより柔軟な配分を可能とする見直しを検討することから、特別処遇改善加算を廃止することも提案した。

また、職場環境等要件について、社保審・介護給付費分科会での検討状況も踏まえ、見直しを提案した。

場環境等要件に基づく取組について当該年度における取組の実施を求める。また職場環境等要件に定める取組について、▽若手の職員の採用や定着支援に向けた取組▽職員のキャリアアップに資する取組▽両立支援に関する課題や腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組▽仕事へのやりがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑等による勤務継続を可能とするような取組─などが促進されるように見直す。

人員配置基準で仕事と育児・介護との両立支援に配慮

⑶障害福祉の現場において、仕事と育児・介護との両立を進め、離職防止(定着促進)を図る観点から次のように提案した。基本的に診療報酬における取扱いと同様にする。

▽常勤換算方法の計算に当たり、育児・介護休業法による短時間勤務制度等を利用する場合、週32時間を下回る場合でも常勤換算での計算上1と扱うことを可能とする。

▽常勤の計算にあたり、育児の短時間勤務制度に加え、介護の短時間勤務制度等を利用した場合、週30時間以上の勤務で常勤として扱うことを可能とする。

▽常勤での配置が、人員基準や報酬告示で求められる職種において、配置されている者が、産前産後休業や育児や介護休業等を利用した場合、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算で確保することを可能とする。

この場合において、常勤職員の割合を要件としている福祉専門職員配置等加算等については、育児休業等を取得した職員がいる場合、当該職員についても、常勤職員の割合に含めることを可能とする。

業務効率化を図るためICTを活用

⑷介護報酬における取組などを踏まえ、報酬の算定で必要な会議等でテレビ会議などのICTの活用について提案した。たとえば居宅介護などの訪問系サービスの特定事業所加算における情報伝達等の会議についてテレビ会議等で可能であることを明確化することを示した。

障害者虐待防止の推進・身体拘束等の適正化

虐待防止の諸規定を指定基準で義務化

障害者虐待の防止の推進のために、①従業者への研修実施や②虐待防止等のための責任者の設置、③研修実施や虐待が起こりやすい職場環境の確認、改善を行うための虐待防止委員会の設置を指定基準において義務化することを提案した。このうち①と②は既に努力義務となっており、③について令和3年4月から努力義務化し、令和4年4月から①~③を義務化するとした。

虐待防止委員会には、虐待の防止とともに、虐待が発生した場合の検証や再発防止策の検討を求める。

障害者に対する障害福祉施設従事者等による虐待件数は年々、増加。相談・通報は平成30年度で2605件となっている。虐待が認められた事例は592件。虐待者は634人で男性が7割弱を占め、職種は生活支援員が4割となっている。被虐待者は777人で知的障害者が7割を超える。

訪問系サービスでも「身体拘束等の禁止」の規定を追加

介護保険における運営基準及び身体拘束未実施減算の適用要件を踏まえ、障害福祉サービスにおける基準省令の見直しや同減算の算定要件の追加を提案した。また現在、対象となっていない訪問系サービスにも基準省令に「身体拘束等の禁止」の規定を追加するとともに、同減算を創設することを提案した。

現在、通所系・施設系・居住系の障害福祉サービスの基準省令では「身体拘束等の廃止」が明示されており、さらに、「やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない」ことが規定されている。身体拘束廃止未実施減算の適用要件としても、やむを得ず身体拘束等を行う場合の記録が義務付けられている。

一方、介護保険サービスの基準省令では、身体拘束等の廃止とやむを得ず身体拘束等を行う場合の記録の義務付けに加え、「身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について介護職員その他従業員に周知徹底すること」「身体拘束等の適正化のための指針を整備すること」「介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること」が規定されている。身体拘束廃止未実施減算の適用要件にもなっている。

こうした状況を踏まえて見直す。基準省令で新たに規定する事項は令和3年4月から努力義務化し、令和4年4月から義務化する。訪問系サービスでは他のサービスで既に義務化されている身体拘束等を行う場合の記録は令和3年4月から義務化。その他の事項は令和3年4月から努力義務化し、令和4年4月から義務化する。減算の算定要件はいずれも、令和5年4月から適用する。

検討チームの田村正徳・埼玉医科大学特任教授は、虐待防止委員会に自治体関係者が参加することを提案した。

また「身体拘束がもたらす精神的・倫理的な問題だけでなく、身体的な危険性をスタッフを周知したうえで、もし行わなければならなくとも、限られた状況で限られた時間で行うことを徹底すべき」と指摘。身体拘束を防ぐうえでも職員の確保・定着が重要であることを強調した。さらに身体拘束未実施減算の算定要件の適用は令和5年4月より繰り上げることを求めた。

小船伊純・白岡市福祉課長は、虐待防止の規定を令和4年4月から義務化することについて、既に努力義務になっている項目もあることから、時期を早めることを提案した。

成田地域生活支援センターの橋本施設長も虐待防止について、相談支援専門員のモニタリングや苦情解決の第三者委員の面接など「外部の目」を入れていく重要性を指摘した。虐待防止委員会の設置には賛意を示す一方、小規模事業者では設置が難しいことから自立支援協議会の活用を提案した。

平野方紹・立教大学教授も橋本氏に同調し小規模事業者への対応について言及。虐待防止委員会の共同設置を認めることや自立支援協議会に部会を設けて参加してもらうこと、研修も基幹相談支援センターで実施してそこに職員を派遣してもらうことを提案した。身体拘束についても自立支援協議会に部会を設けて、管理者を派遣してもらうことをあげた。家庭の虐待を防ぐために、ヘルパーの虐待への意識を高めていく重要性も指摘した。

柏市障害福祉課の小川課長も、虐待防止に向け、「外部からのチェックとその意見に基づく改善が不可欠」と指摘。第三者委員会の設置や、虐待防止委員会には民生委員や有識者などが参加することを提案。「必ず外部の目が入り、意見が取り入れられるような構成とする。適切な施設運営をチェックできるような仕組みを取り入れることを義務化し、事業所の実地指導で確認できるシステムを導入してもいいのではないか」と述べた。

その他の横断的事項

食事提供体制加算の経過措置を延長

食事提供体制加算の経過措置を延長することを提案した。

補足給付の基準費用額は令和2年度障害福祉サービス等経営実態調査等を踏まえて検討することとした。

地域区分の特例を一部見直し

地域区分について11月18日の会合で介護報酬と同じ区分で設定すること等を提案した。その後、一部の自治体から「隣接地域との間に4級地差はないが、3級地差であっても隣接地域とのバランスにより、人員確保等において大きな困難を来している」との意見が寄せられた。そこで厚労省は、次のように改めて提示。特例の一部を見直すこととした。

自治体の移行を確認し、令和3年度から5年度末までの間は、現在の区分と見直し後の区分の範囲内で自治体が選択した区分を設定できるようにする。

原則としては公務員の地域手当の設定に準拠する。他方で、隣接する地域とのバランスを考慮して特例として、次の①又は②の場合、隣接地域の地域区分のうち一番低い区分までの範囲で見直すことを認める。

① 高い地域区分の地域にすべて囲まれている場合(低い級地に囲まれている場合の引き下げも可能)。

② 公務員の地域手当の設定がない(0%)地域であって、当該地域よりも高い地域区分の地域が複数隣接しており、かつ、その中に3級地以上の級地差がある地域が含まれている場合(当該地域よりも低い地域区分の地域が複数隣接しており、かつ、その中に3級地以上の級地差がある場合の引き下げも可能)。

このうち②について、11月18日では「4級地以上の級地差がある場合」における見直しの特例を示していた。

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