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居酒屋ねんきん談義|#10  On-line居酒屋ねんきんの店主が著者に聞く――佐藤麻衣子さん『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』を語る

※この記事は2020年7月16日に「Web年金時代」に掲載されました。

 ある日、居酒屋ねんきん談義の店主から、「暇してないか? これからの年金の議論を担っていく若い人たちに「来店」してもらい、その著書について語ってもらおうか」との連絡が。しかし、いまは緊急事態宣言発令中。そこで店主は「ZOOM使ってやってみようか」と。・・・というわけで、別に暇してるわけではないのですが、「On-line居酒屋ねんきん」開店と相成りました。前回ご来店の是枝さんの著書のタイトルには「35歳から創る~」とありましたが、第2回目となる今回は「30代のための」を書名に掲げる佐藤麻衣子さんです。その著書『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』について語っていただきました。【編集部】

今回もZoomを使って、居酒屋ねんきん店主の
権丈善一さん(上)が佐藤麻衣子さんに
インタビューしました。

著者:佐藤麻衣子(さとう・まいこ)ウェルス労務管理事務所代表
1981年神奈川県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒業後、上場企業の経営企画室にて主にIR(株主向け広報)業務を担当。信託銀行へ転職し、窓口において投資信託・保険などをコンサルティングセールス。信託銀行退職後、税理士事務所、社会保険労務士法人等に勤務しながら、社会保険労務士試験に合格。2015年ウェルス労務管理事務所を開業、19年研修事業拡大のため株式会社ウェルスプラン設立、代表取締役に就任。社会保険労務士のほか、CFPⓇ(日本FP協会)、1級ファイナンシャル・プラニング技能士、証券外務員一種、企業年金管理士(確定拠出年金)などの資格を持つ。

聞き手:権丈善一(けんじょう・よしかず)慶應義塾大学商学部教授
1962年福岡県生まれ。2002年より現職。専門は社会保障・経済政策。『Web年金時代』での「居酒屋ねんきん」店主として、座談会をとりしきり、インタビュアーも担当する。『再分配政策の経済学』シリーズⅠ~Ⅶ巻、人気のへのへのもへじの本は、今年2月に『ちょっと気になる社会保障 V3』に成長。最近「オンラインへGO!」を開店したとのこと(http://kenjoh.com/online/)。

『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』
著者:佐藤 麻衣子
発行:日本実業出版社
定価:本体1,400円+税
発行:2018年7月

49頁のイラストがこの本のすべてを語っている

権丈:きょうは佐藤さんに存分にこの本のことを語ってもらいたいと思います。さっそくだけど、ぼくとしてはこの本の49頁に掲載のイラストをぜひとも紹介したいんだよね。

佐藤:こちらですね。

権丈:まあ言ってみれば、この本はそういう本だよね。

佐藤:そうですね。

権丈:佐藤さんは、公的年金のことをよく理解してくれていて…っと、ついついぼくは、公的年金の立場になって話をしてしまうんだけど(笑)、世の中の人たちに仕事でいろいろと年金の話をするときに、きっと、このイラストに描かれているような感じなんだろうね。

佐藤:そうですね。

権丈:右側からセールスマンが「年金は破綻シマース」、「将来は暗いデース」、「若い人は損シテマース」と若者に近寄ってくる。すると、若者は「え!」と飛び上がってびっくり。すると、若者の隣にいる女性、佐藤さんかな、彼女が「きちんと事実を調べてくださいね!」、「はた迷惑な…」とびしっと言っている。

佐藤:公的年金がなかったら大変です。土台となる社会保険がなければ安定したライフプランを立てられないし、世の中の格差もいまよりもっと広がってしまいます。

権丈:だね。

編集部:佐藤さんのプロフィールを拝見すると、以前、金融機関において、投資信託・保険などのコンサルティングセールスをされていたということなんですが、佐藤さんご自身は、信託銀行で保険商品を取り扱っていたときに、どのような販売のしかたをされていたのでしょうか。

佐藤:豊かな老後生活を過ごすには、年金だけでは足りないということはお伝えしていました。足りない分は自分できちんと確保しておきましょう、いまある資金については増やしておきましょうというスタンスでお客様には対応していました。とはいえ、わたしが働いていたのは信託銀行だったので、どちらかというとある程度の資産をお持ちの方がお客様でしたから、お客様の資産運用の目的が公的年金で足りない部分を確保するということよりも、定期預金では増えないからほかに有効な資産運用ができる金融商品はないか、というようなご相談が多かったですね。

編集部:佐藤さんは自身の著書である『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』で、具体的なライフスタイルをお示しになって、不安の解消に努めていますが、佐藤さんご自身、年金に対して、不安がらなくてもいいと確信するようなご経験がなにかあったのでしょうか。

佐藤:親が年金をもらい始めたことが、制度に対する信用ということでは大きかったですね。わたしの父は高校を卒業してからずっと会社員として働いていました。働いている間ずっとしっかり厚生年金に入っていたので、ちゃんとした額の年金をもらっているんです。

編集部:そうなんですよね、年金って、実際にちゃんと支払われているという事実が制度に対する信頼感を生むんですね。そして、実際にもらうようになるとそのありがたみを実感するんです。若い人は30年先、40年先のことですから、まだそのリアリティーがないというのはどうしようもないのですが、イラストの男のように、そこにつけこむのはほんと許しがたいです。ちなみにわたしの母親は厚生年金を受けています。しかも、介護保険を利用して特別養護老人ホームに入所しているのですが、自己負担は母親の厚生年金ですべて賄い、わたしからの持ち出しはありません。親の年金制度のおかげで、子としてのわたしもそのありがたさを十分に実感しています。だから、年金制度改革を妨害しようとするキャンペーンは、将来の持続可能性の確保ということも妨げることになりますから、制度改革が遅れることで、マクロ経済スライドによる調整期間は長期化し、将来の給付水準の減少は大きくなってしまいます。そう考えると、年金を政争の具にすることは、将来世代から過去にさかのぼって、責任を追及されてもしょうがないのではないかとさえ思いますね。

権丈:保険って安心感が便益なわけだから、年金保険が破綻しているって、政治家や学者や記者の話は、年金保険の便益をゼロにして、保険料の負担だけを感じさせるものだったから、なぐってもよかったよね。

編集部:権丈さんなら、ほんとうになぐりかねませんね(笑)。

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