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#4 第4回年金部会「被用者保険の適用拡大」、第5・6回「雇用の変容と年金」の議論を巡って①

権丈 善一(けんじょう よしかず) 
坂本 純一(さかもと じゅんいち)
藤森 克彦(ふじもり かつひこ)
司会:年金時代編集

※この記事は、2018年12月10日に「Web年金時代」に掲載されたものです。

今回の「居酒屋ねんきん談義」では、第4回から第6回の年金部会の資料をつまみとして、店主の権丈善一氏、常連客の坂本純一氏、そして、雇用と年金の専門家、藤森克彦氏も加わり、ねんきん談義に大いに花を咲かせていただきました。
● 第4回「被用者保険の適用拡大」(9月14日)
● 第5回「雇用の変容と年金(主として高齢期の就労と年金に関して)」(10月10日)
● 第6回「雇用と変容と年金(高齢期の長期化、就労の拡大・多様化と年金制度)」(11月2日)

居酒屋で談義する左から権丈氏、坂本氏、藤森氏(撮影協力:番屋 神田駅前店)

第4回年金部会「被用者保険の適用拡大」を巡って
厚生年金の適用拡大の大切なこと①基礎年金の給付水準を上げる

権丈:まずは、「被用者保険の適用拡大」についてです。ここは、10月26日に開催された日本年金学会のシンポジウム*において、厚生年金の適用拡大について研究発表された藤森さんにお願いすることにしましょう。

*日本年金学会は2018年10月26日にシンポジウム「2019年財政検証に向けて」を開催した。シンポジウムのオーガナイザーは「居酒屋ねんきん談義」の権丈店主、今回の「居酒屋ねんきん談義」のお客さん藤森さんは「労働力減少社会における公的年金の進むべき方向性―「厚生年金の適用拡大」をめぐって―」で、また、常連客の坂本さんも「保険料拠出期間の延長と繰下げ増額支給の活用」を研究発表。ちなみに、前回のお客さん玉木さんも「「長生きリスク保険」としての公的年金の再認識」を発表。「居酒屋ねんきん談義」、人材豊富です(笑)!

藤森:厚生年金の適用拡大では、大切なことが2つあります。1つは、あまり知られていませんが、適用拡大によって基礎年金の給付水準が上がっていくことです。これまで公的年金保険制度の大きな課題として議論されてきたのは、マクロ経済スライドによって基礎年金の給付水準が低下していくことでした。しかし、適用拡大を行えば、基礎年金の給付水準が上昇していきます。これは、現在の公的年金の抱える課題への対応として、非常に重要です。

前回の財政検証においてもオプションⅡの②は、月収5.8万円以上の全ての被用者を適用拡大の対象として試算をしています。この場合の適用拡大の対象者は1,200万人に拡がり、基礎年金の所得代替率が7.3ポイントも高まるのですね。これはかなり大きな上昇です。

●適用拡大による基礎年金の給付水準の上昇

出所:藤森氏が日本年金学会のシンポジウムで使用したスライド
「労働力減少社会における公的年金の進むべき方向性―「厚生年金の適用拡大」をめぐって―」 (2018年10月26日 日本福祉大学/みずほ情報総研 藤森克彦)より。

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