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#8 65歳以降も働いた場合の年金と雇用保険は?知っておきたい年金・雇用保険のポイント

望月 厚子(もちづき あつこ)/ 望月FP社会保険労務士事務所 所長

この記事は社会保険研究所刊「くらしとねんきん」2023年冬号に掲載したものです。

現在、企業には、65歳までの雇用が義務付けられています。令和3年4月からは、70歳までの人についても雇用や就業機会の確保が努力義務化されました。このため、65歳以降も働き続ける人が増えています。65歳を境にして年金や雇用保険の給付が一部変わります。今回は65歳以降の年金と雇用保険についてご説明しましょう。


65歳時の繰下げ受給の選択

特別支給の老齢厚生年金を受給している人が65歳になったときは、特別支給の老齢厚生年金に代わり、新たに「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受給することができます。
65歳になる誕生月の初めごろ(1日生まれの人は前月の初めごろ)に、日本年金機構から「年金請求書(はがき)」が送付されますので、誕生月の末日(1日生まれの人は前月末日)までに提出します。この提出が遅れると、年金の支払いが一時保留になります。
なお、65歳で受け取らずに66歳以後75歳*までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることもできます。老齢基礎年金・老齢厚生年金のどちらか一方のみを繰り下げたいときは、「年金請求書」の「老齢基礎年金のみ繰下げ希望」または「老齢厚生年金のみ繰下げ希望」のどちらかに丸を付けます。また、両方を繰下げしたいときは、「年金請求書」の提出は不要となります。
*昭和27年4月1日以前生まれの人(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金の受給権が発生している人)は70歳。

65歳以降の在職老齢年金と在職定時改定

65歳以降も働きながら厚生年金保険に加入している場合、月額にした老齢厚生年金と給与や賞与(直近1年間の賞与額÷12)の合計が月48万円を超えると、超えた部分の半額の年金が支給停止となります(在職老齢年金制度)。ただし、国民年金から支給される老齢基礎年金は、減額されることはありません。
ところで、従来、65歳以上の厚生年金加入期間の年金額への反映(増額改定)は、退職するかあるいは70歳になるまで待たなければ行われませんでしたが、令和4年4月より、在職中でも毎年10月から改定される「在職定時改定制度」が導入されました。
これは、毎年9月1日(基準日)時点の老齢厚生年金受給者の年金額について、前年9月から当年8月までの1年間の被保険者期間を算入し、毎年10月分(12月支払い分)の年金額を再計算するというもの。これにより、在職中でも、年金額が増額改定されることになりました。対象者は、65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者です。

退職した場合の雇用保険の給付

65歳以上で退職した場合、雇用保険の「高年齢求職者給付金」の対象となります。高年齢求職者給付金の支給条件は、次の①~③のすべてに該当する人です。
①退職時の年齢が65歳以上、②離職前の1年間に被保険者期間が通算6ヵ月以上、③働く意思があること。
給付額は被保険者期間が1年未満であれば「基本手当日額の30日分」、1年以上であれば「基本手当日額の50日分」を一時金で受け取ることができます。
なお、高年齢求職者給付金と老齢厚生年金は、同時に受給することができます。

65歳以降も今の職場で働き続ける予定のUさんのケースを見てみましょう。

現在63歳、65歳以降も今の職場で働く予定です。65歳後の年金や雇用保険等についてアドバイスをお願いします。

60歳で雇用継続となり、65歳以降も働き続ける予定です。節目の65歳で年金はどう変わりますか。また65歳以降に退職した場合、雇用保険の給付は受けられますか。

Uさん(63歳女性。標準報酬月額30万円、特別支給の老齢厚生年金45万円を受給中。
夫は67歳。リタイア後、老齢厚生年金・老齢基礎年金を受給中)

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