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通所系・短期入所系サービスなどを議論(7月20日)part2

社会保障審議会介護給付費分科会は7月20日、令和3年度介護報酬改定に向けて通所系サービスや短期入所系サービスを中心に検討を進めた。

part2では、通所リハビリテーションや療養通所介護の主な論点と意見を紹介する。

通所リハでは、アウトカム評価の促進を求める意見が出る一方、生活期のリハでは「生活機能の維持も重要なアウトカム」との声も上がった。また通所系サービスにおける「大規模減算」の廃止を複数の委員が訴えた。療養通所介護では、運営上の課題に対応した報酬体系の検討が要望された。

通所リハでもアウトカム評価の促進を

通所リハは、毎年、報酬請求事業所が増加しており、31年4月審査分で7920事業所。開設主体の内訳は病院・診療所が55%、老健施設が45%。事業所規模の内訳は、通常規模型が81%を占め、大規模型(Ⅰ)は8%、大規模型(Ⅱ)は11%になっている。

通所リハの利用者の平均要介護度(要介護のみ)でみると、平均要介護度は2.2であり、通所介護と同様だ。通所リハの利用者の要介護度で最も割合が多いのは要介護1で34.0%、次いで要介護2が33.0%。通所介護はそれぞれ36.4%、30.6%と、ほぼ同様の傾向となっている。

各加算の算定状況を見ると、令和元年10月時点の算定率(算定事業所ベース)は、生活行為向上リハビリテーション実施加算について加算1は0.4%、加算2は0.5%に止まっている。認知症短期集中リハビリテーション加算Ⅰは2.8%、同Ⅱは0.6%。また社会参加支援加算は8.4%などとなっている。

このうち、生活行為向上リハ実施加算は、ADL・IADL、社会参加などの実際の生活行為の向上に焦点を当てた目標設定を行った上でのリハの提供等を評価するもの。また社会参加支援加算は、リハにおいて、社会参加が維持できるサービス等に移行するなど、質の高い通所・ 訪問リハを提供する事業所の体制を評価するもの。いずれも27年度改定で導入された。

また令和元年度の調査研究によると、通所リハで、リハビリテーションマネジメント加算を算定している事業所では、リハ開始時から6か月後に、IADL等が有意に改善していることが示された。

こうしたことを踏まえ、厚労省は、通所リハについて、自立支援等をさらに進めるため、ADLに基づくものも含めたアウトカムによる評価の方策や、生活行為の向上、社会参加の促進、認知症等への対応の強化をさらに進める方策について意見を求めた。

また前出の通所介護との連携を進めるうえで、リハと機能訓練の連携や移行をより効率的・効果的に行うため、その基礎となる計画書等の整合や在り方も論点に示した。個別機能訓練計画書には、治療経過やこれまでのリハの実施状況などは記載されていない。

意見交換で健保連の河本委員は、通所リハのリハマネ加算を算定している事業所では、それ以外の事業所と比べて利用者のIADL等が改善していることが紹介されたことに言及。機能が改善した利用者の割合の実績を含めたアウトカム評価を算定要件に含めることを検討するよう提案した。

日本経団連の井上隆委員も通所リハについて「アウトカム評価を進めていくことが必要」と指摘。具体的に、医療の回復期リハ病棟の実績指数を用いた評価を参考にすることを挙げた。

一方、全老健の東委員は、リハについて「急性期・回復期・生活期」に分けて説明し、「生活期のリハは機能の改善に加えて、生活機能の維持も重要なアウトカムだ。在宅生活を継続するために生活機能の維持は非常に重要な課題だ」と強調した。さらに、生活期にリハに「卒業」などを求めるべきではなく、継続されていくものとの考えを示し、通所介護や一般介護予防事業等への移行を評価する社会参加支援加算の見直しを訴えた。

生活行為向上リハ加算について、「通所介護事業者やケアマネジャーから依頼があって初めて算定できる加算だ」と指摘。自身の老健施設では一例も依頼がなかったことを挙げ、「理念はよくとも現場で使われていないのは仕組みに問題がある」と見直しを求めた。

日医の江澤委員も東委員に同調。生活期のリハについて「活動・参加という心身機能のみならず、生活を支えるリハとして位置づけられている」とした。社会参加支援加算について、状態がよくなれば通所リハのサービス提供を減らし、その分、一般介護予防事業や通所介護等での取り組みを併用することを提案した。

東委員及び江澤委員は、短期集中リハ加算について、単位数の引き上げを要請。江澤委員は、退院・退所後3か月に実施するという要件について、状態が悪化した折にタイムリーに提供できるように見直すように提案した。

また東委員及び江澤委員は、30年度改定で通所リハ・通所介護で実施された、大規模な事業所における基本報酬の減算を大きくした、いわゆる「大規模減算」について廃止を主張した。

東委員は、29年度と30年度の通所リハ事業所の規模別の収支差率に言及し、大規模型施設では、29年度の収支差率は751~900人までは6.6%で、901人以上は6.9%であったのが、30年度には751~900人は5.5%であるのに、901人以上は3.6%と減少したことについて「スケールメリットが全く働いていない。30年度改定で大規模事業所を対象にした減算割合が大きくなった影響と考えられる」と指摘。さらに「人材不足・人材確保や経営の効率化の観点から事業所の大規模化を進めている一方で、このような大規模減算が残っていることは大変問題だ」と述べた。

江澤委員も「大規模減算は質の評価とかなく、経営効率のみで行われており、ほかのサービス類型にはないもの。企業努力を尊重する意味でも廃止すべき」と訴えた。

日本経団連の井上委員も「通所関連のサービスについて、大規模の方が効率性としては高いといえる」とし、大規模減算を行う改定について、「効率性・生産性を高めていく観点から正しい報酬改定の方向であるかは論点」と提起した。

療養通所介護の報酬体系の検討を要望

療養通所介護は、医療と介護の両方のニーズをあわせ持つ在宅の中重度者等の通所ニーズに対応する観点から18年度から導入された。報酬請求事業所数は少なく、平成31年4月審査分で89事業所にとどまる。小規模な通所介護の地域密着型サービスへの移行に伴い、28年4月から地域密着型通所介護の一類型とされた。また30年4月から利用定員を9名から18名に拡大された。

利用者の主傷病名は「脳血管疾患」が30.8%と最も多く、次いで「神経難病」で12.5%など。利用者の状態についてみると、要介護5が61.1%と6割を占める。

家族の介護負担の軽減に役立つとともに、在宅療養の継続を可能にしたなどと評価が高い。さらに利用者・介護者の評価をみると、いずれでも「とても満足」「満足」の合計が8割を超えるなど、満足度が高い。回数や費用の制限がない場合は利用回数を増やしたいという利用者は6割、介護者は7割近くになっている。

30年度の調査研究では、療養通所介護の課題として、看護・介護職員の確保が困難であることが6割程度、「急なキャンセルにより収入が安定しない」が6割弱に上る。

日本看護協会の岡島さおり委員は、医療ニーズのある重度の利用者が多いことから、急な状態の変化でキャンセルが生じたり、送迎でも複数人が必要になるなど、運営面における課題を指摘。そのうえで、家族のレスパイトでも重要な役割を果たすとともに、医療ニーズにも対応できることから必要性を強調し、「柔軟で使いやすい、かつ安定的にサービスが提供できる報酬体系を検討していただきたい」と求めた。

他方、日医の江澤委員は、療養通所介護が元々「通所看護」の発想からできたサービスであることを挙げ、看護小規模多機能型居宅介護との整合性の検討を提起した。

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