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三宅社労士の年金実務セミナー|#6  令和4年度からこう変わる!公的年金制度 Part3 厚生年金・健康保険の適用拡大

三宅明彦(みやけ・あきひこ)/特定社会保険労務士

本年4月、年金制度改正法(「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」令和2年6月5日公布)の目玉の事項が施行となります。年金実務セミナーでは、直前の1月から3月にかけて、次の3つのパートごとに改正内容を再確認しています。

3月はpart3の「厚生年金・健康保険の適用拡大」について見ていきます。

part1:在職中の年金受給(令和4年4月施行)→1月21日(金)掲載
part2:年金の繰上げ受給と繰下げ受給(令和4年4月施行)→2月18日(金)掲載
part3:厚生年金・健康保険の適用拡大(令和4年10月・令和6年10月施行)

各パートの最後に「理解度テスト」を設けましたので、施行前にポイントを確認していただければと思います。

1.厚生年金・健康保険の適用拡大(令和4年10月・令和6年10月施行)

(1)これまでの短時間労働者への社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大の変遷
短時間労働者への社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大は、これまで以下のように実施されています。
① 平成28年10月から実施された適用拡大
【適用要件】
・従業員数(適用拡大前の厚生年金の適用対象者数)が501人以上の企業  
・週の労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・勤務期間が1年以上の見込み
・学生は除外
※令和元年11月末日時点の対象事業所(特定適用事業所)は3万741件、短時間被保険者は45万6,863人

② 平成29年4月から実施された適用拡大(任意)
【適用要件】
・従業員数(適用拡大前の厚生年金の適用対象者数)が500人以下で労使合意を得た企業、国及び地方公共団体(規模を問わない)
・他の条件は①と同じ
※令和元年11月末日時点で、任意に適用拡大を申し出た事業所(任意特定適用事業所)は5,742件、短時間被保険者は7,852人

(2)厚生年金・健康保険の適用拡大 第1段階(令和4年10月実施)
適用拡大の企業規模要件は前述の「501人以上」から段階的に緩和されます。第1段階として、令和4年10月からは「101人以上」になります。

また、「勤務期間が1年以上の見込み」という要件は、実務上の取扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の「勤務期間が2ヵ月以上の見込み」に変わります。

改正にあたっては各要件について検討されましたが、結果として「適用要件の考え方」の基準を下げていくことになりました。なお、企業規模要件が101人以上になることで、新たに約45万人が適用されることが見込まれます。

【適用要件】
・従業員数(適用拡大前の厚生年金の適用対象者数)が101人以上の企業  
・週の労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
勤務期間が2ヵ月以上の見込み
・学生は除外

参考①厚生年金の適用拡大に伴う経過措置
特別支給の老齢厚生年金の定額部分の受給権者(障害者特例・長期加入者特例に該当する人)が厚生年金の被保険者資格を取得すると、定額部分が支給停止されることになっています(厚生年金保険法附則第11条の2)。
そもそも上記の人が定額部分を受給するには、「厚生年金の被保険者でないこと」が要件となっています。しかし、中には厚生年金が適用されない働き方で収入を得ている人もいます。
本人の働き方に変更がないにもかかわらず、適用拡大という外部要因により定額部分が支給停止されることのないよう、経過措置が設けられています。
経過措置の対象となるのは、障害者・長期加入者の特例に該当する人が、適用拡大の施行日前に支給事由の生じた受給権を有し、施行日前から引き続き同一の事業所に勤務している場合となります。こうした場合は、適用拡大の施行日に厚生年金の被保険者資格を取得しても、定額部分の支給停止は行われません。

参考②法律・会計に関わる士業への厚生年金・健康保険の適用拡大
令和4年10⽉から、5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所は厚生年金・健康保険への加入が必要になります。適用の対象となる士業および適用対象者は次の通りです。
【対象となる士業】
弁護士  沖縄弁護士  外国法事務弁護士  公認会計士  公証人  司法書士 土地家屋調査士  ⾏政書⼠  海事代理⼠  税理⼠  社会保険労務士 弁理⼠
【適用対象者】
①正社員
②パート・アルバイト等のうち、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である人

(3)厚生年金・健康保険の適用拡大 第2段階(令和6年10月実施)
前述の企業規模要件「501人以上」が、令和6年10月から第2段階として「51人以上」になります。企業規模要件が51人以上になることで、新たに約65万人が適用されることが見込まれます。

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