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公費医療・難病医療の実務情報を詳しく解説! 『公費医療・難病医療ガイド』

「令和5年10月・令和6年4月改正対応版」の一部を公開

平成27(2015)年からスタートした新しい難病対策の医療(難病法の医療、児童福祉法の小児慢性特定疾病医療支援)と軌を一にして発刊された書籍『公費医療・難病医療ガイド』(発行:社会保険研究所)は、好評のうちに版を重ね、対象疾病の拡大や制度の見直しに対応してきました。本書は、公費負担医療を担当する医療機関・薬局・訪問看護ステーションや、制度を実施運営する自治体をはじめ、審査支払機関、医療保険者、MSWやケアマネジャー等の専門職の方々に広くお勧めしたい内容となっています。

そこでこの記事では、本書の一部を抜粋して特別公開します。


それでは以下、本書「Ⅰ:公費医療と医療保険・介護保険」の「第1章:公費医療と保険診療」からの抜粋です!


1.保険診療のしくみ

  • 医療保障は医療保険制度を柱として組み立てられており、誰もが原則として何らかの医療保険に必ず加入します。病気やけがで必要となる医療は、一般的にすべて保険診療でうけられます。

  • 保険診療をうけるとき、患者はかかった医療費の定率の一部負担金を支払います。ただし、所得などに応じた負担上限が設定されており、月の負担が一定額以上となることはありません。

1-1.公的医療保険が必要な医療を保険診療として提供

職業などに応じて公的医療保険に加入

日本の医療保障は、公的医療保険制度を中心としています。公的医療保険は、職業などに応じて加入し、収入などに応じた保険料を納め、医療をはじめとしたサービスがうけられるしくみです。

会社員や公務員(および扶養家族)は職場の健康保険や共済組合に、自営や無職の人は市(区)町村の国民健康保険(一定の職業の人は国民健康保険組合)に加入します。75歳以上と障害認定をうけた65歳以上75歳未満は、都道府県の後期高齢者医療に加入します。日本に住む人は、生活保護受給者を除きいずれかの医療保険に加入します。

一般に必要な医療は保険診療として提供

医療保険による診療(保険診療)は、法律で「療養の給付」として次のとおり原則的な範囲が定められています。療養の給付は、保険医療機関(および保険薬局)が行います。

一般に、病気やけがで必要となる医療は、すべて保険診療としてうけられます。ただし、医学界でまだ有効適切と認められていない特殊な治療法や薬の使用は認められません。

1-2.定率負担は原則3割(小学校入学前や70歳以上は軽減)

患者はかかった医療費の定率を負担

保険診療では、患者が一部負担金として、かかった医療費の一部を負担します。負担割合は原則3割ですが、小学校入学前の児童と70歳以上の高齢者は軽減されています。

入院中の食費については別に標準負担額を負担しますが、低所得者は軽減されています。標準負担額は引上げが行われていますが、難病患者・小児慢性特定疾病患者については据え置かれています。

なお、定率の一部負担金には、高額療養費制度による所得や年齢に応じた自己負担限度額があります。

医療費(保険診療の費用)は「診療報酬点数表」で算定

保険診療の費用(医療費)は、①診療行為は「診療報酬点数表」、②薬剤は「薬価基準」、③一定の医療材料は「材料価格基準」に定められたルールと料金で算定されます。

医療機関では、患者ごとにかかった医療費を算定し、患者からは負担上限の範囲での一部負担金等を徴収します。残りの額は、審査支払機関に請求して支払いをうけます。

訪問看護(訪問看護ステーション)の定率負担も同じ

自宅で継続して療養をうける人が、在宅療養継続のため必要な場合、医師の指示により訪問看護ステーションの訪問看護が行われます。主な対象者は、難病患者、重度障害者、末期がんの患者などです。

訪問看護についても、保険診療と同割合の基本利用料を負担します。

2.公費医療のしくみ

  • 医療保険と並んで、国や地方自治体が費用を負担して実施するのが公費医療です。公費医療により、福祉や公衆衛生の観点から必要な医療が提供されます。

  • 公費医療には、公費優先(対象となる医療費の全額を公費で負担する)と保険優先(医療保険の給付が優先し、一部負担金等を公費で負担する)があります。

2-1.法律や予算措置にもとづき国・地方自治体が実施

福祉と公衆衛生の向上のため国・自治体が提供

日本の医療保障のもうひとつの柱が公費医療です。公費医療とは、国や地方自治体の費用(公費)負担により提供される医療で、主に福祉と公衆衛生の観点から拡充されてきました。その目的からは、例えば次のように区分して理解することができます。

  1. 障害児・障害者への支援(適切な医療等の提供と経済的な支援)

  2. 児童福祉の向上、母子保健の充実

  3. 疾病対策(難病などの医療の向上と患者への経済的な支援)

  4. 戦争に関連した国家補償や、公害などの健康被害の救済

  5. 経済的弱者の救済(生活保護)

受給者証等の交付をうけて指定医療機関を受診

公費医療は、法律にもとづき(または国の予算措置による事業として)行われます。制度ごとに、国・都道府県・市町村が実施主体として定められ、都道府県や市町村・保健所等が窓口となります。

対象となる患者は、一般に、窓口となる都道府県等に申請し、制度ごとに定められた受給者証等の交付をうけます。多くの公費医療は、医学的に専門的な取組みや一定の施設が必要となるため、国や都道府県の指定医療機関・契約医療機関が担当しており、患者は保険証と受給者証等を提示して医療をうけます(受給者証等に受診する医療機関や対象疾患名が記載されることがあります)。

2-2.医療費の全額公費優先と保険優先

制度ごとに定める障害や病気を対象

公費医療は、一般に制度ごとに定めた障害や特定の病気(治療法)を対象とします。公費医療受給者は、公費の対象とならない病気やけがの医療は、一般の保険診療でうけます。ただし、生活保護の医療扶助のように、すべての医療を対象とするものもあります。

なお、複数の公費医療の対象となっている患者の療養については、別に公費の適用の順位が定められています。

多くは保険診療の一部負担金が対象となる「保険優先」

公費医療には「公費優先」と「保険優先」があります。いずれも、患者や扶養義務者(世帯)の収入によっては、公費としての費用徴収が行われ、患者負担が残ることがあります。

公費優先とは、公費対象医療費の全額を公費が負担するしくみです。

保険優先とは、公費対象医療費について、まず医療保険が適用され、医療保険による一部負担金等を公費が負担するしくみです。公費医療のほとんどは、保険優先となっています。


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