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財政審が令和5年度予算編成の建議、全世代型改革へ加速を(11月29日)

財政制度等審議会は11月29日、令和5年度予算の編成等に関する建議を鈴木俊一財務大臣に提出した。社会保障制度改革について全世代型への改革をはじめ、医療費のあり方や医療提供体制、介護保険制度などについて見解を示している。

財政制度等審議会「令和5年度予算の編成等に関する建議」=令和4年11月29日

全世代型社会保障制度への改革については、「『能力に応じて負担し、必要に応じて給付し、持続可能な制度を次世代に伝える』という社会保障の基本中の基本の考え方がまだまだ徹底されていない部分が目立っている」と指摘。その上で、「今まさに、ウィズコロナに移行する中で、改めて給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全世代型で持続可能な制度を構築するための取組みを加速すべき時である」と明記した。

医療保険については「喫緊の課題の一つは、現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、『負担能力に応じた負担』を実現することである」とし、後期高齢者の保険料や前期高齢者納付金の仕組みの見直しを求めている。

医療費のあり方では、毎年薬価改定や既存医薬品の保険給付範囲の検討をあげた。令和3年度から実施している毎年薬価改定については改定対象品目数が7割にとどまったことをあげ、「令和3年度においても医薬品市場は拡大しているとの指摘もあり、令和5年度薬価改定は物価高における国民の負担軽減の観点から、対象品目を広げ、完全実施を実現すべきである」と提案した。

既存医薬品の保険給付範囲の検討では、見直しの手法として①OTC 類似医薬品等の保険給付範囲からの除外、②医薬品を保険収載したまま、患者負担を含めた薬剤費等に応じた保険給付範囲の縮小―をあげた。

医療提供体制については、「効果的・効率的な医療提供を行う体制を実現することは医療制度改革の最重要課題」とした。その上で、地域医療構想や地域包括ケアの早急な実現とともに、「診療所等の外来機能分担も不可避であり、『かかりつけ医機能』を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要がある」と明記した。

かかりつけ医機能については、「新型コロナを契機に必要な医療が必要なときに受けられる重要性が国民に認識されており、医療資源が限られる中、地域における役割分担を機能させるためにも、かかりつけ医機能を強化するための制度整備は不可避である」と記した。

医療法人の経営状況の「見える化」では、「事業報告書等について令和5年度から都道府県 HP 等での閲覧が可能となる予定であり、早急かつ確実な実施を行うべきである。また、施設別の詳細な経営情報の提出を求め、経営情報のデータベースを構築する新たな制度が検討されているが、職種ごとの一人当たりの給与額についても確実に把握できるような制度設計を行うべきである」と提案した。

介護の利用者負担2割の対象範囲の拡大やケアマネジメントの利用者負担導入を

介護保険制度については、利用者負担の見直しとして「少なくとも、次期計画において、後期高齢者医療制度の2割負担の対象範囲にあわせて介護保険も対象範囲を拡大する必要がある。さらに、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや、現役世代との均衡の観点から現役世代並み所得等の判断基準を見直すことについて、次期計画に向けて早急に結論を得る必要がある」と提言した。

多床室の室料負担については、老健施設や介護医療院、介護療養病床に対して「居宅と施設の公平性を確保し、どの施設であっても公平な居住費(室料+光熱水費)を求めていく観点から、給付対象となっている室料相当額を基本サービス費等から除外する見直しを行うべきである」とした。

ケアマネジメント(居宅介護支援)については、利用者負担を設定していなかったが、事業者数や受給者数が制度創設時と比較して倍以上に増加するなど既に相当程度定着している状況であることや介護施設でのケアマネジャーのサービス計画作成の費用には利用者負担が存在していることをあげ、「次期計画においてケアマネジメントに利用者負担を導入することが適切である」と明記した。

介護保険の第1号保険料負担については「今後、高齢化の進展による第1号被保険者数の増加や、給付費の増加に伴う保険料の上昇が見込まれる中で、低所得者の負担軽減に要する公費の過度な増加を防ぐため、負担能力に応じた負担の考え方に沿って、高所得の被保険者の負担による再分配を強化すべきである」と見直しを求めた。

要介護1・2への訪問介護・通所介護については、「次期計画に向けて地域支援事業への移行を目指し、段階的にでも生活援助型サービスをはじめ、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすべきである」と提言した。  

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