見出し画像

通所リハに月単位の包括報酬の導入を提案(11月16日)

社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は11月16日、令和3年度介護報酬改定に向け、通所系・訪問系サービスやショートステイなどの個別の論点について議論を深めた。
厚労省は通所リハビリテーションに、リハの機能や利用者の心身機能の維持・改善などを包括的に評価する新たな月単位の報酬体系を導入することを提案した。賛否両論が出た。
また訪問看護の配置基準で看護職員を6割以上とすることを提案した。複数の委員が賛意を表明した。


老健施設の基本報酬と同様の体系を導入

厚労省は、通所リハビリテーションにおいて、①新たに月単位の報酬体系を導入することや、②リハビリテーションマネジメント加算の見直し、③社会参加支援加算の見直しなどを提案した。

まず①月単位の報酬体系の導入では、現行の報酬体系も残し、希望する事業所が新たな報酬体系に移行できるようにする。新たな報酬体系では、▽リハの機能▽事業所の体制▽活動・参加に対する取組▽利用者の心身機能の維持・改善─などを包括的に評価する。利用者のADLに基づく評価を行う。評価は、「強化型」「加算型」「通常型」(いずれも仮称)の3段階で設定する方向も示した。


通所リハの報酬体系

関係団体からのヒアリングで「全国リハビリテーション医療関連団体協議会」から、通所リハにリハ専門職の配置や加算算定率、社会参加などを含めた総合的なリハの評価を導入して老健施設の基本報酬と同様の構造に近づけることが提案されていた。

健保連の河本滋史委員は月単位の包括報酬の導入について賛成する一方、「選択制はやや疑問。報酬体系の簡素化の観点から経過措置を設けて新たな報酬体系に一本化していく方向で検討すべき」と主張した。

日本医師会の江澤和彦委員は、「事業所の体制評価が居宅サービスであるデイケアでなじむのか」などと疑問を示し、慎重な検討を求めた。

リハマネ加算Ⅰ・Ⅳを廃止

②リハマネ加算を次のように見直すことを提案した(訪問リハも同様)。

算定率が高い加算Ⅰは廃止するとともに、同要件は基本サービス費の要件とする。訪問リハのリハマネ加算との整合性も踏まえ、リハマネ加算Ⅱ・Ⅲの評価を見直す。令和3年度からのVISIT・CHASEの一体的な運用に伴い、リハマネ加算Ⅳは廃止する。

定期的なリハ会議による計画の見直しが要件であるリハマネ加算Ⅱ・Ⅲについて、VISIT・CHASEへデータ提出しフィードバックを受けPDCAサイクルを推進することを評価する。

VISIT・CHASEへの利用者情報の入力負担の軽減及び、フィードバックに適するデータを優先的に取得する観点から、リハ計画書の項目についてデータ提出の必須項目を定める。リハ計画書の固有の項目の簡素化を図り、個別機能訓練計画書の項目の共通化も進める。


データ提出内容

またリハマネ加算の算定要件の1つである「定期的な会議の開催」について、利用者の了解を得た上で、テレビ会議などの対面を伴わない方法での開催を可能とする。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、事業所のデータ入力の負担感を踏まえ、「必須項目があってはならない」と異論を唱えた。「事業所ではICT機器の導入が進んでいない現状がある」と指摘。ICT機器の導入を促進するとともに、必須項目の入力は「3年程度の経過措置が必要」とした。

日医の江澤委員は、「生活期リハのアウトカムは社会参加」とし、「社会参加」の項目は必須項目にするように主張した。

社会参加支援加算を「移行支援加算」に

③社会参加支援加算の算定要件や名称について次のように見直すことを提案した(訪問リハも同様)。

社会参加支援加算の算定要件

まず算定要件の社会参加への移行状況の計算式とリハの利用の回転率を実情に応じて見直す。また要件で、「評価対象期間中に指定通所リハビリテーションの提供を終了した日から起算して14日以降44日以内に、指定通所介護等の実施が、居宅訪問等をした日から起算して、3月以上継続する見込みであることを確認し、記録している」ことについて、「提供が終了した日から起算して1月後の移行の状況を電話等で確認する」とする。

移行を円滑に進める観点から、リハ計画書を移行先の事業所に提供することを要件に加える。加算の名称は「移行支援加算」に変更する。

連合の伊藤彰久委員は、社会参加支援加算の見直しについて、「移行を支援している」という加算の効果を1年以内にきちんと把握する必要を指摘した。

通所介護の個別機能訓練加算Ⅰと加算Ⅱを統合

(地域密着型)通所介護の個別機能訓練加算について、身体機能向上を目的とする加算Ⅰ(46単位/日)と、生活機能向上を目的とする加算Ⅱ(56単位/日)を統合し、人員配置要件や機能訓練項目を見直すことを提案した。

具体的に機能訓練指導員の配置は現行の加算Ⅱと同様に専従1名以上の配置とし、配置時間については特に定めない。利用者心身の状況に応じて、身体機能・生活機能向上を目的とする項目を柔軟に設定。訓練の実施も加算Ⅱと同様に5人程度以下の小集団又は個別で機能訓練指導員が直接実施することとする。

なお機能訓練指導員を専従1名以上、サービス提供時間帯を通じて配置する上位区分も導入する。

個別機能訓練加算の見直し案
個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱ

全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は見直しの方向性を支持した。

協会けんぽの安藤伸樹委員も賛成する一方、単位数の設定では加算Ⅰと同等にするとともに、上位区分の要件を満たした場合に加算Ⅱと同じ単位数を算定できるようにするようメリハリのある評価を求めた。

訪問看護の看護職員の割合を6割以上へ

訪問看護の人員配置基準において、サービス提供を行う従業員に占める看護職員の割合を6割以上とする要件を設けることを提案した。一定の経過措置期間を設ける。また理学療法士などリハ職が行う訪問看護費の単位数や提供回数の適正化も示した。

厚労省は平成27年度介護サービス施設・事業所調査の特別集計を示した。それによると看護職員の割合が80%以上の事業所では、介護保険の緊急時訪問看護加算や特別管理体制の届出の割合が高く、前者は75・8%、後者は75・0%になっている。一方、60%未満の事業所ではいずれも1割以下になる。40~60%未満ではそれぞれ6・8%、7・2%になる。

看護職員の割合と加算届出状況

医療ニーズがある高齢者のさらなる増加が見込まれる中、訪問看護の一環として理学療法士等による訪問が増えている現状について、「訪問看護の役割を十分に果たせるか」などの懸念とともに適正化を求める意見が複数の委員から出ていた。

また厚労省は、現行に加えて、診療報酬上の取扱いと同様に、主治の医師が必要と認める場合は、退院当日の訪問看護の算定を可能とすることを示した。

看護体制強化加算について、利用者の実態を踏まえて、「特別管理加算を算定した割合30%以上」の要件について「20%以上」に見直すこととした。要件緩和や介護予防訪問看護にはターミナルケア加算の算定について要件に含まれていないことを踏まえ、加算単位数の適正化も示した。

看護体制強化加算

日本看護協会の岡島さおり委員はいずれの提案にも賛成した。協会けんぽの安藤伸樹委員も訪問看護の人員配置基準に看護職員の割合を導入することを支持する一方、「見直しの実態などを検証して段階的に引き上げていくことも検討してほしい」と求めた。

看取り期の訪問介護の「2時間ルール」を弾力化

看取り期の対応の充実のため、利用者の訪問介護に係る「2時間ルール」の弾力化を提案した。

看取り期の利用者については、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者(認知症対応型共同生活介護等の看取り介護加算を算定する対象者と同様)と説明。

「2時間ルール」とは、前回のサービス提供から概ね2時間未満の間隔で訪問介護が提供された場合、2回分の報酬を算定するのではなく、それぞれのサービス提供に係る所要時間を合算して報酬を得ることをいう。

たとえば間隔が2時間未満で身体介護を25分提供した場合は、合算して50分提供したものとして、30分以上1時間未満の395単位を算定することになる。ちなみに20分以上30分未満の単位数は249単位であり、2回分算定できると、498単位となる。

日本介護福祉士会の藤野裕子委員は、「看取り期の支援は短期間集中的に行われることが多く、柔軟な対応が求められる」と「2時間ルール」の弾力化に賛成した。

老健の短期入所療養介護に「総合医学管理加算」を導入

老健施設が提供する短期入所療養介護について、基本サービス費の見直し(引き下げ)を改めて提案。他方、「総合医学管理加算」(仮称)の新設を示した。

要件は▽入所に際して医師が必要な診療、検査等を行い、診療方針を定めて文書で説明する。医師が中心とした多職種共同で診療計画を策定する。当該計画について入所から3日以内に入所者に文書で説明する。退所時に入所者の主治医に診療状況の情報を提供する。

全老健の東委員は、基本サービス費の引き下げに反対を表明する一方、「総合医学管理加算」の新設は支持した。

短期入所生活介護の看護職員は外部との連携で確保

短期入所生活介護の看護職員に係る配置基準の見直しを提案した。類型・定員に関係なく、同一の基準とし、利用者の状態像に応じて、「密接かつ適切な連携」により確保することとする。通所介護と同様の規定とする。病院や診療所、訪問看護ステーションとの連携により看護職員がサービス提供日ごとに利用者の健康状態を確認するとともに、必要に応じて駆けつけることができ体制や適切な指示ができる連絡体制をつくる。

現行では併設型・定員20人以上では常勤の看護職員の配置が求められる。また単独型や併設型・定員19人以下の事業所では看護職員の配置は必ずしも求められない。こうした不統一をあらためる。

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。