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通所系・短期入所系サービスなどを議論(7月20日)part3

社会保障審議会介護給付費分科会は7月20日、令和3年度介護報酬改定に向けて通所系サービスや短期入所系サービスを中心に検討を進めた。

part3では、短期入所生活介護や短期入所療養介護、さらに福祉用具貸与・販売などの主な論点と意見を紹介する。

短期入所生活介護における長期利用の見直しや、福祉用具貸与・販売などのサービスの向上における福祉用具専門相談員に担当利用者数を設定するよう求める意見が出された。

短期入所生活介護の長期利用も課題

短期入所生活介護にも平成30年度改定で生活機能向上連携加算が導入されたが、算定率は低い。回数ベースでは0.1%。事業所ベースでは、個別機能訓練加算を算定している事業所で1.6%、算定していない事業所で0.6%にとどまる。

令和元年度の調査研究によると、算定していない理由では、「外部のリハ事業所等との連携が難しいため」が40.0%で最も多く、次いで「加算の算定に取り組む余裕がないため」で37.1%などとなっている。他方、メリットとしては「利用者の状態や希望に応じたケアの機会が増えた」59.6%、「介護職員のケアの質が向上した」54.4%など。

短期入所生活介護の長期利用も課題だ。

1か月に事業所を利用した延べ人数について、連続利用日数別の割合を見ると、最も多かったのは「2~3日」で41.5%であった。「31日以上」は8.6%。31日以上連続利用の主な目的では、「特養入所までの待機場所として」が89.2%などとなっている。

短期入所生活介護の長期利用では、30日を超える日以降に受けたサービスは介護報酬の算定の対象外となるが、自費利用を1日挟んだ場合、32日目以降は1日につき30単位を減算した単位数の算定が可能となる。長期の利用者については事業所での生活に慣れるための初期加算相当分の評価が必要ないとしている。

短期入所療養介護については、平成31年4月審査分で3781事業所。老健施設での取り組みは年々増加傾向であり、病院及び診療所は減少傾向である。老健施設は30年4月審査分と比べて83事業所増加して3527事業所になる一方、病院及び診療所は58事業所減少し226事業所になっている。

緊急時の短期利用を比較すると、短期入所生活介護や(看護)小規模多機能型居宅介護は原則7日以内の利用でやむを得ない事情がある場合には例外的に14日まで受け入れることができるが、短期入所療養介護は、例外規定がなく7日以内になっているなど整合性がない。

日医の江澤委員は、短期入所生活介護の長期利用に言及し、「本来のショートステイの役割・理念に立ち返る必要があるのではないか」と指摘。自立支援の取り組みや医療的な支援も行い、中重度者も短期入所と自宅の間で行き来ができるように考えることを提案した。

全国老施協の小泉委員は、看取り期にある利用者が短期入所生活介護を利用している最に、かかりつけ医と相談するケースがあることを挙げ、「具体的な状態のモニタリングを含めてICTを活用した情報連携について、何らかの配慮をいただきたい」と求めた。また質の高いサービスの提供で社会福祉士による、居宅介護支援事業所や家族などからの情報収集について評価を導入するように要望した。

神奈川県知事の黒岩佑治委員の代理で出席した、同県の水町友治参考人は、短期入所生活介護での生活機能向上連携加算の推進に当たって、ICTの活用を認めるように求めた。

また新型コロナウイルス感染症により家族で介護ができなくなった場合など緊急に短期入所生活介護で受け入れる体制を補正予算により整えていることを説明。「緊急短期受入加算を増額するなど恒久的な加算として介護報酬の評価をお願いしたい」と要望した。

福祉用具専門相談員の担当利用者数の設定を

福祉用具貸与については報酬請求事業所が29年4月審査分の7314事業所をピークに減少傾向を示しており、31年4月審査分で201事業所減少し7113事業所になっている。

30年度改定で福祉用具貸与の上限の見直しについて「1年に一度」とされていたものを「3年に一度」とする方針が6月1日の分科会で了承された(新商品の上限設定は従前通り概ね3か月に一度公表する)。見直しは令和3年度から適用することとしており、厚労省は令和3年4月から見直す商品の上限価格を今年10月に公表することを示した。

また福祉用具貸与・販売事業所に配置が義務付けられている福祉用具専門相談員については、質の向上を目的に、指定講習カリキュラムの拡充を行うなど、累次の見直しを行ってきていることを報告。30年度からは、商品の特徴や貸与価格、当該商品の全国平均貸与価格を説明することや、機能や価格帯の異なる複数の商品を提示することを義務化した。

住宅改修については30年度の給付費が378.9億円であることや、要介護2以下の給付件数が約80%であることが報告された。

こうした点を踏まえ、厚労省は、福祉用具専門相談員の質の向上・確保への取り組みなどについて意見を求めた。

連合の伊藤委員は、1人の福祉用具専門相談員が担当できる利用者数が決められていないことから業務負担が大きくなっているとして、専門相談員が担当できる利用者数を設定することを提案。また「ケアマネジャーの認識や主観が福祉用具の選定に影響していると聞いている。そこも含めて対応していかないと、質の向上につながらないのではないか」と提起した。

日医の江澤委員は「福祉用具専門相談員の研修の場をつくり、利用者の安全性を高め、有益な取り組みができるようにしてほしい」と要望した。  

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