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#2 年金と雇用保険の給付の関係は?知っておきたい給付調整の仕組みと注意点

望月 厚子(もちづき あつこ)/望月FP社会保険労務士事務所 所長

この記事は社会保険研究所刊「くらしとねんきん」2022年冬号に掲載したものです。

定年後も働き続ける場合、定年前に比べると、賃金が下がる人もいらっしゃいます。
その場合、雇用保険の給付金を受けられることがあります。「高年齢雇用継続給付」といい、同じ会社で働き続ける場合に支給される「高年齢雇用継続基本給付金」と、退職して失業給付(基本手当)の受給後に再就職した場合に支給される「高年齢再就職給付金」があります。
給付額に応じて特別支給の老齢厚生年金の一部が支給停止となります。
今回は年金と雇用保険の給付についてご説明しましょう。

60歳以降も働いた場合ー60歳時よりも賃金が下がると受けられる高年齢雇用継続給付

〇高年齢雇用継続給付の受給条件

  • 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者で、被保険者期間が5年以上あり、60歳以降の賃金が、60歳時点の75%未満に低下していること

  • さらに、高年齢再就職給付金は、再就職の前日において基本手当の支給残日数が100日以上あり、再就職手当を受給していないこと

〇給付額

  • 60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下した場合、低下した率に応じた額(上限は賃金の15%)

  • 賃金が364,595円(毎年8月1日に改定)を超える場合は支給されない

高年齢雇用継続給付を受けると年金が減額される

65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受給中の人が高年齢雇用継続給付を受けられるときは、在職老齢年金制度による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。支給停止される年金額は、高年齢雇用継続給付の支給率に応じて、最高で賃金(標準報酬月額)の6%に当たる額です。

60歳以降退職した場合ー失業給付(基本手当)を受けると年金は停止される

特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の失業給付(基本手当)は同時に受給できません。
これは、現役を引退した人を対象とする年金とまだ働こうと思っている人を対象とする失業給付とでは給付目的が違うためです。
「特別支給の老齢厚生年金と基本手当のどちらを受けるか」を選ぶ必要がありますが、一般的に基本手当を選ぶ方が多いです。基本手当を受給するためにハローワークで求職の申込みをすると、その翌月から特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止になります。
なお、65歳以降は、この併給調整はありません。

節目の60歳が近づいてきた会社員Nさんのケースを見てみましょう。

60歳定年後の働き方を模索中です。年金や雇用保険についてアドバイスをお願いします。

60歳で定年を迎えます。今の会社で65歳まで働き続ける選択も可能なのですが、いずれは退職して自分の得意分野を生かせる仕事をしたいと考えています。年金の受給方法の選択や雇用保険制度の利用などについてアドバイスをお願いします。

Nさん(58歳女性。年金の支給開始年齢は64歳。夫は60歳で厚生年金に加入中)

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