見出し画像

「貸与・販売の選択制」などは給付費分科会の議論へ――福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会が取りまとめ(2023年10月30日)

厚生労働省は10月30日、第9回介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会を開催した。

検討会ではこれまでの検討を踏まえた「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会 対応の方向性に関する取りまとめ(案)」が示され、議論により挙げられた構成員からの意見等を踏まえ、取りまとめは座長に一任された。

この取りまとめについては今後、社会保障審議会介護給付費分科会に報告され、議論される。


モニタリング実施時期については福祉用具貸与事業所等の運営基準改正により明確化

取りまとめ案における「福祉用具の貸与と販売のあり方等」は、福祉用具貸与・販売に関する、①安全な利用の促進、②サービスの質の向上、③給付の適正化に分類した「現状と課題」と、それを踏まえた「対応の方向性」、そして「一部貸与種目・種類における貸与と販売の選択制の導入」により構成される。

このうち「現状と課題」を踏まえた「対応の方向性」では、次の8つが示された。

(1)「事故報告様式案」及び「利用安全の手引き」の活用の促進
(2)「福祉用具・介護ロボット実用化支援等一式(委託事業)」等を活用した事故及びヒヤリ・ハット情報の共有及び安全利用に向けた取組の促進
(3)全国課長会議等における消費生活用製品安全法に基づく重大事故報告の周知徹底
(4)サービス提供におけるPDCAの適切な実践に向けた周知徹底
(5)「福祉用具専門相談員指定講習カリキュラムの見直しに向けた調査研究事業」を通じた指定講習カリキュラムの更新に向けた取組の実施
(6)「介護保険における福祉用具の選定の判断基準の見直しに向けた調査研究事業」を通じたサービスの質の向上や判断基準の見直し、医師やリハビリテーション専門職等の医療職を含めた多職種連携の促進
(7)「在宅高齢者の多様な状態を踏まえた福祉用具貸与事業者の支援のあり方に関する調査モデル研究事業」を通じたモニタリングの実施時期等の明確化及び多職種連携の好事例の収集と横展開
(8)「自治体における福祉用具・住宅改修の適正化施策等の取組促進に向けた研究事業」を通じた自治体向け点検マニュアルの作成

このうち(7)は、福祉用具貸与事業所のモニタリング実施時期の明確化を図るため、介護予防福祉用具貸与・福祉用具貸与に係る運営基準を改正するもの。

モニタリングの実施時期を、計画の記載事項として追加することを検討する。

併せて、福祉用具貸与においてはモニタリング時に、福祉用具の使用状況等を記録し、介護支援専門員に交付することを検討するものとしている。

また、(8)の自治体向け点検マニュアルの作成は、制度の適正な運用の観点からチェック体制の充実・強化を図るもの。

作成にあたっては、次の点などに留意する。

  • 地域ケア会議やサービス担当者会議等の多職種連携の場における点検のポイントや検証のしくみ

  • 点検における市区町村の業務負担軽減

  • 自治体が把握している福祉用具貸与事業所における事故情報の活用

選択制については、対象・プロセス・メンテナンス等のあり方を取りまとめ

「一部貸与種目・種類における貸与と販売の選択制の導入」では、選択制の対象種目・種類や判断体制・プロセス、モニタリング・メンテナンスのあり方などが示された。

貸与・販売の選択制とは、従来貸与の対象となっていた一部の福祉用具について、貸与ではなく販売を選択できるようにするもの。

貸与原則の例外である、「他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が伴うもの、使用によって形態・品質が変化し、再利用できないもの」という範囲を拡大し、特定福祉用具販売においても介護保険の給付対象に加えることになる。

対象は4つ、支給限度基準額については導入後に検討を

この選択制の対象品目については、比較的廉価で長く利用している者の割合が相対的に高い「固定用スロープ」「歩行器」「単点杖」「多点杖」の4つが挙げられた。

なお、特定福祉用具販売においては、1種目あたり1つと限定されるが、「固定用スロープ」は複数個の使用が必要とされる場合がある。そのため、必要に応じて複数個支給を認めるよう、国から自治体に対して周知を行うこととなっている。

また、こうした特定福祉用具販売の選択肢が生じたことで、同一年度の支給限度基準額(同一年度10万円)を超えてしまう可能性も見込まれる。そのため、選択制導入による限度額への影響や限度額を超過する利用者の傾向等について、選択制導入後に実態を把握し、その結果を踏まえ、今後検討を行うこととする。

対象者は限定せず、多職種意見を踏まえた提案により利用者が選択

福祉用具貸与利用者の「介護が必要になった原因」は多様であり、対象者を限定することは困難であることから、対象者は限定しない。

一方、貸与か販売かの選択を行う際は、サービス担当者会議等を活用するか介護支援専門員が各専門職への「照会」により、多職種の意見を確認する。
介護支援専門員または福祉用具専門相談員は、取得可能な医学的所見等に基づき、サービス担当者会議等での判断を踏まえ、利用者等に貸与・販売に関する提案を行う。

こうした提案を受け、利用者等の意思決定に基づき、貸与または販売を選択することができることとする。

この選択により貸与した場合は、福祉用具専門員は次の対応を行う。

  • 福祉用具専門相談員のモニタリングの実施時期の実態や分岐月数を踏まえ、利用開始後少なくとも「6ヶ月以内に一度」モニタリングを行い、貸与継続の必要性について検討

  • モニタリング時に記録する福祉用具の利用状況などを踏まえ、利用開始から6ヶ月以降においても、必要に応じて、貸与継続の必要性について検討

一方、福祉用具を販売した場合、福祉用具専門員は次の対応を行う運用が示されている。

  • 福祉用具サービス計画における目標の達成状況を確認

  • 保証期間を超えた場合であっても、利用者等からの要請に応じて、販売した福祉用具の使用状況を確認し、必要な場合は、使用方法の指導、修理等(メンテナンス)を行うよう努める

  • 利用者に対し、商品不具合時の連絡先を情報提供

なお、厚生労働省からは販売後の保証期間を超えた後のメンテナンス費用などについて、個別の利用者と事業者との契約によるとの考えが説明された。


検討会は昨年2月17日の第1回より、約1年8ヶ月の間に9回を実施。

今後は介護給付費分科会での議論や制度の執行などにあたり、効果検証等の際に、必要に応じて収集されることが見込まれる。

最後に、間隆一郎老健局長より検討会への感謝が告げられ、「今回いただいた方向性を実施するにあたり、関係者の皆様と協力しながら必要な運用上の工夫・周知をし丁寧に進めていきたい」との考えが伝えられた。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。