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ポリファーマシー対策モデル事業団体が中間報告 高齢者医薬品適正使用検討会(11月30日)

厚労省の高齢者医薬品適正使用検討会(座長:印南一路慶應大教授)は11月30日、令和4年度モデル事業実施団体からの中間報告を受けるとともに、高齢者医薬品適正使用にかかる今後の取組みについて議論した。

高齢者は複数の併存疾患を治療するための医薬品を多数服用することによって、多剤服用による害を生じる(ポリファーマシー)に陥りやすい状況にある。そこで高齢者医薬品適正使用検討会では、多剤併用時の「重篤副作用の発見・対処」「薬剤選択情報(推奨薬と安全性)」を中心に、有害事象回避のための処方見直し等の具体的な方法について定めた指針や「業務手順書」を策定し、情報周知に取り組んでいる。

  • 〖高齢者医薬品適正使用検討会のこれまでの取組み〗

    • 平成30年度:指針策定

    • 令和元年度:療養環境別の指針を策定

    • 令和2年度:「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」(業務手順書)の策定

    • 令和3年度:指針・業務手順書を特定の病院で実際に運用し、有効性の検証・課題の抽出

    • 令和4年度:令和3年度の延長で地域(病院、薬局、介護施設等)で実際に運用し、有効性の検証・課題の抽出

同日は令和4年度のモデル事業に採択された地域薬剤師会等4団体による中間報告が行われた。各団体はそれぞれの事業体制や成果および課題、ポリファーマシー対策を効率的に進めるための独自の工夫等を紹介した。

広島市薬剤師会は、薬剤師だけでなく市医師会役員を含む高齢者医薬品適正使用推進委員会を設置。薬剤師医師間の連携体制を図った。身近なところでポリファーマシー対策を始める方法として、かかりつけ薬剤師やケアマネジャーから対象患者を提案してもらう方法があることや、重点取り組み期間を設定すると関係者の意識を高める可能性があることを紹介した。

富山県薬剤師会は、薬局薬剤師や地域医師会会員、基幹病院に勤務する医師等へのアンケートを実施。服薬情報提供書(トレーシングレポート)のやりとりや減薬提案の経験については、これまで必ずしも高くないことを明らかにした。ポリファーマシー対策に取り組むことで算定可能な診療報酬(薬剤総合評価調整加算等)の認知度も高いとはいえなかった。これらを踏まえて症例検討会の実施やポスター作成等を行った。

神奈川県保険医協会は、資材として「実施手順書」「薬のリストアップ表」「特に慎重な投与を要する薬物のリスト・フローチャート」「一般向けパンフレット」を用意した。薬の調整希望に同意を得られた患者に対し、薬剤師は患者に減薬を提案。医師は外来のたびに患者の状態を観察し、処方についての「継続・減量・中止・代替薬」対応の理由を関係者と情報連携できるようにした。

宝塚市薬剤師会は、薬剤師がトレーシングレポートを送信しやすい環境をつくるため、入力や印刷ができる様式を同会Webサイトに掲載した。また、お薬手帳の「カバー」を活用し、ケアマネジャーの名刺などを高齢者がはさみこんで必要な情報をなるべく1冊にまとめてもらえるようにした。薬局にとっては残薬の確認をしやすく、他職種へのフィードバックや連携がしやすくなる効果があったという。

検討会座長は各団体に対し、引き続きモデル事業を進め、ポリファーマシー対策に精力的に取り組むように依頼した。

検討会の令和5年度の活動としては、ポリファーマシー対策状況のアンケート調査や好事例の抽出を行うことを予定している。また、これまでの事業の成果を踏まえた指針及び業務手順書の見直し等を実施する。事務局は今後の活動について、医療機関・薬局の負担に配慮しつつ実効ある取組みになるよう検討していくとした。  

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