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#20 アルコール依存症による障害年金請求

 国民年金法第69条及び厚生年金保険法第73条には、「故意に障害又はその直接の原因となつた事故を生じさせた者の当該障害については、これを支給事由とする障害基礎(または厚生)年金は、支給しない。」とあります。
 また、国民年金法第70条及び厚生年金保険法第73条の2には、「被保険者又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生ぜしめ、若しくはその障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができる。」とあります。
 以上のことから、どんなに症状が重たい精神障害でも、その原因が違法薬物使用によるものである場合は、障害年金は支給しないということを、本連載#15の事例で解説してきたところです。
 では、これが違法薬物ではなくて、お酒が原因で精神障害になった場合はどうなるでしょうか。お酒も過度の摂取をすれば、違法薬物と同じような精神副作用を引き起こす場合もありますし、依存性もあります。また、自ら摂取しなければ、体内に取り込むこともありません。従って、心情的には、お酒が原因で障害年金を支給はしたくないところですが、結論から言いますと、アルコール依存症が原因による精神の障害年金は支給対象となります。
 今回は、そんなアルコール依存症による障害年金請求事例を検証していきます。

1.アルコール依存症とは

 飲酒を続けると体内にアルコールに対する耐性ができ、酔いにくくなることから、次第に飲む量が増えてしまいます。そうるすと、脳に異常が発生して、お酒を飲む量や飲む場所、飲む時を自分の意志でコントロールできなくなり、お酒を飲まないと手の震えや幻覚が見える等、離脱症状を引き起こすのがアルコール依存症です。
 同時にうつ病等、他の精神疾患が発症することも多々あり、合併すると重たい障害に繋がります。今回の相談者は、まさにアルコール依存症とうつ病を併せて発症している様子がうかがえます。

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