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令和6年1月頃に諮問答申へ――改定に向けた分野横断的なテーマ等を議論 介護給付費分科会(2023年5月24日)

厚生労働省は5月24日、第217回社会保障審議会介護給付費分科会を開催。介護分野の最近の動向を確認するとともに、令和5年介護報酬改定に向けた分野横断的なテーマやスケジュールについて議論した。

分野横断的テーマ案は4つの柱、スケジュール案について異論はでず

厚生労働省は、介護保険を取り巻く状況として、認定者数や保険料・費用に関する統計などを紹介した。

このうち高齢人口に関しては、要介護認定率は85歳以上で上昇することを前提に、85歳以上人口が2035年頃までは一貫して増加する推計などが示された。

また、第8期介護保険事業計画に基づき算出した介護職員数として、2025年度には約243万人、2040年度には280万人を要する推計などを提示。国においても介護職員の処遇改善や人材確保、生産性向上等の対策に取り組むこととしている。

この上で、「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」が示された。

ここでは、診療報酬との同時改定であることや、新型コロナウイルス感染症への対応の経験等を踏まえ、令和6年度介護報酬改定に向け議論するための、分野横断的なテーマ案が示された。

具体的には、次の4つが例示されている。

・地域包括ケアシステムの深化・推進

・自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進

・介護人材の確保と介護現場の生産性の向上

・制度の安定性・持続可能性の確保

これは、令和3年度介護報酬改定に関する審議報告や、令和4年介護保険部会意見書(介護保険制度の見直しに関する意見)における指摘などを踏まえたものとなっている。

なお、令和4年12月20日に示された介護保険部会意見書のうち、介護給付費分科会での議論が見込まれる概要は、次のとおりとなっている。

さらに今後の議論のスケジュールとして、12月中に報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめを行い、令和6年1月頃に介護報酬改定案を諮問・答申する流れが示された(基準に関しては、条例の制定・改正に要する期間を踏まえ先行して取りまとめを実施)。

スケジュールに関しては、委員からの異論などもみられず、着実に進行していくことが見込まれる。

「医療介護連携」をテーマに加える要望の声、医療・介護・障害部門の継続的な意見交換の希望も

議論では、医療と介護の連携に関する意見が複数あげられた。

全国健康保険協会の吉森委員は、「医療介護連携の深化」を分野横断的テーマとして追加することを要望。医療と介護の同時改定という背景を考慮し、介護分野における医療介護の連携をどのように具体化し重点化していくか、推進していくかが重要な論点であるとした。

日本看護協会の田母神委員も、医療と介護の複合的なニーズを持つ高齢者が増加していくことを背景に、医療と介護の連携強化について明示することを提案した。

全国老人保健施設協会の東委員も、同時改定ならではの議論として医療介護連携についてしっかりと議論することを希望。特に、「介護で担う医療はどうあるべきか」を議論するべきと主張した。また、医療と介護では異なった別々の情報ツールを用いていることを踏まえ、共通ツールの足がかりとなるような改定を求めた。

さらに、日本慢性期医療協会の田中委員は、医療と介護のみならず障害部門にも大きくサービスが振り分けられている現状に言及。現在意見のとりまとめが行われている「令和6年度の同時改定に向けた意見交換会」を念頭に、今後も意見交換の場を継続的に設けていくことを要望した。

職員への処遇改善をそれぞれの立場から要望、生産性向上には「業務改善」とする提案も

物価高や他業種との賃金格差を背景に、職員への処遇改善への要望も相次いだ。

全国市町村会の長内委員と日本介護支援専門員協会の濵田委員は、ケアマネジャーの人材確保が困難になっている現状に触れ、処遇改善を要望した。

また、全国老人福祉施設協議会の古谷委員も、テーマに「介護人材の確保および処遇改善と介護現場の生産性の向上」とはっきり示した上で検討するべきと主張。日本労働組合総連合会の小林委員も、すべての職種・すべての医療介護施設を処遇改善の対象とするべきと訴えた。

さらに、民間介護事業推進委員会の稲葉委員は介護職の高齢化に言及し、若い世代が安心して暮らしていける処遇改善を求めた。日本医師会の江澤委員もすでに介護人材が他業界に多数流出している現状に触れ、提供体制の崩壊への危惧をあらわにした。

日本経済団体連合会の井上委員は、介護従事者は重要な役目を持つ「分厚い中間層」との認識を示し、社会保障全体の安定に繋がることに期待を示した。

処遇改善に注目が集まる一方、高齢社会をよくする女性の会の石田委員は、「生産性の向上」に注目。生産性という言葉に対し「現場が拒否感を抱いているように感じる」とし、「業務改善」のような適切な言葉を用いることで働く方々の心に響くのではないかと提案した。


次回の介護給付費分科会は、6月28日(水)午後を予定。議題は調整中としている。

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