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第21回社会保険旬報 地方から考える社会保障フォーラムが開催される(2月12日)

全国の地方議員が参加する、第21回社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」セミナー(主催:地方から考える「社会保障フォーラム」事務局)が2月12日に都内で開催され、厚生労働事務次官の鈴木俊彦氏など3名が講演した。

セミナーは13日にも続く。セミナーの詳細は、社会保険旬報にて掲載する予定だ。

第21回社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」プログラム

■2020年2月12日(水)
講義1 社会保障改革の課題と展望~2040年を見据えて~
講師:鈴木俊彦氏(厚生労働事務次官)
講義2 子ども家庭行政をめぐる最近の動向と今後の展望について~待機児童対策と児童虐待防止対策を中心に~
講師:渡辺由美子氏(厚生労働省子ども家庭局長)
講義3 地域共生と就職氷河期世代支援
講師:伊原和人氏(厚生労働省政策統括官(総合政策担当))
2020年2月13日(木)
講義1 2020年度診療報酬改定とこれからの医療
講師:八神敦雄氏(厚生労働省大臣官房審議官(医療介護連携、データヘルス改革、歯科口腔保健担当))
講義2 社会保障再考─<地域>で支える─
菊池馨実氏(早稲田大学法学学術院副学術院長 法学研究科長 教授/博士(法学))

2040年を見据えた、社会保障改革の課題と展望を解説

厚生労働事務次官の鈴木俊彦氏は「社会保障改革の課題と展望~2040年を見据えて~」と題して講演した。人口構造と社会構造の変化について紹介し、人口減少が進むことからその対策について「国家的課題」と強調した。2065年には総人口が8,808万人になるとともに、高齢化率が4割近くの水準になる推計を示す一方、これは合計特殊出生率が1.4程度と「横置き」した場合であり、「いかに上向きさせていくか」と指摘した。また高齢の単身世帯が増加していく見通しなども示し、「社会の、地域の下支え能力が減退し、あるいは失われていくことは直視すべき現実」と指摘。そのうえで、地域で支えていく体制をどう作っていくかが課題とした。

そうしたことを背景として、鈴木次官は、昨年10月に消費税率が10%まで引き上げられ、社会保障・税一体改革が一区切りになることを見据えて省内で検討を進めてきたことを紹介した。

2018年6月の骨太方針に「2040年頃を見据え、社会保障給付や負担の姿を幅広く共有し、国民的議論を喚起することが重要」と盛り込まれたことを受け、厚労省でも「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置し、社会保障給付の見通しや今後の人口減少による担い手の急減の推移を踏まえて議論。昨年5月には、①多様な就労・社会参加②健康寿命の延伸③医療・福祉サービス改革─について打ち出した。

鈴木次官は、2040年に1,070万人必要とされる医療・福祉の就業者について、本部が打ち出した改革が進めば、926万人~963万人程度となり、需要面・供給面を勘案した就業者数である974万人を下回ると指摘。「2040年段階でも人手不足で社会保障給付のサービスが成り立たない状況にはならないとの見通しが立てられている」と述べ、着実に進めていく必要を強調した。

さらに鈴木次官は、政府の全世代型社会保障検討会議の中間報告について紹介するとともに、今後の最終報告に向けた後期高齢者医療の窓口負担などの論点を提示。社会保障改革の「次の一手」を考える視点として、「地域共生社会の構築」などを解説した。

待機児童対策と児童虐待防止をテーマに講演

厚生労働省子ども家庭局長の渡辺由美子氏は、「子ども家庭行政をめぐる最近の動向と今後の展望について~待機児童対策と児童虐待防止対策を中心に~」をテーマに講演した。

待機児童対策については2018~2020年度の「子育て安心プラン」を展開していることを紹介し、3年間で待機児童解消を図り、女性の就業率8割に対応できるよう約32万人分の保育の受け皿を確保するとした。待機児童数は2019年4月時点で1万6,772人と減少傾向であり、待機児童のいる400超の市町村に対しては個々の特性に応じたきめ細かな支援を実施していく方針を示した。

児童虐待防止対策については、2018年12月に決定した「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を説明した。2022年度までに児童相談所の児童福祉司や児童心理司の増員、市町村の相談体制の強化として虐待相談拠点である「子ども家庭総合支援拠点」の全市町村設置などを盛り込んでいる。

渡辺局長は「虐待は都道府県の話だと思いがちだが、大半は在宅指導であり市町村の体制は重要だ。虐待の問題は起こってからも、起こる前も市町村の役割は非常に大きい」と述べた。

一方、児童虐待防止の観点からも妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援が必要とし、産後ケア事業や子育て世代包括支援センターを説明した。

産後ケア事業は出産後1年を経過しない女子や乳児に対する心身のケアや育児のサポート。昨年12月に公布された改正母子保健法で、予算事業として実施している市町村事業を法制化し、市町村の努力義務とした。 また子育て世代包括支援センターは、保健師等を配置して母子保健サービスと子育て支援サービスを提供する拠点。2019年4月1日現在で983市区町村(1717ヵ所)が設置しているが、2020年度末までに全国展開を目指している。

地域共生社会の実現や就職氷河期世代の支援を紹介

厚生労働省政策統括官の伊原和人氏は「地域共生と就職氷河期世代支援」について講演した。今後、2040年には「介護や看病で頼れる人がおらず、いざという時に支援者が必要と思われる」高齢者世帯が2015年の1.4倍の690万世帯まで増える推計などを紹介。さらにひきこもり状態にある人が15~39歳で54万1千人、40~64歳で61万3千人いると見込まれることを示し、「現役世代でも地域共生、つながりを必要としている方が100万という単位でいる」と指摘。こうした課題が、地域共生社会の実現に向けた議論がなされる背景にあるとした。

2040年を見据えて対応していくうえで、「人口減少への対応が最大の課題だ」と強調。そのために▽女性や高齢者などの就業者数を増やす▽健康寿命を延ばす▽テクノロジーをフル活用し、より少ない人手でも回っていく医療・福祉現場を実現する―必要があると指摘。さらに「人口減少が進む地域社会の中にあっても、暮らし続けるために必要な支えが得られる条件を整える」と述べ、地域共生社会の実現に向けた取り組みを説明した。

伊原統括官は、「地域共生社会」の本質について「『地域において誰も孤立させないこと』ではないか」と指摘した。

地域共生社会の実現に向け、①「縦割り」をどう乗り越えていくか(制度が人を排除することを防ぐ)と②人と人のつながり(地域の支え)をどうつくるか(地域が人を排除することを防ぐ)という2つのアプローチがあるとした。

そのうえで、いわゆる「8050世帯」など、既存の制度ではなかなか対象とされなかった狭間のニーズに対して、今般、社会福祉法を改正して、複合的な課題にも対応した「断らない相談支援」や参加支援、地域づくりの3つを実施する包括的支援体制を市町村で構築していくことを紹介した。

他方で就職氷河期世代(おおむね1993年から2004年に学校卒業期を迎えた世代)の支援について、「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」などを策定して進めていることを紹介し、ひきこもりの支援の重要性を強調。相談支援機関間での情報共有や相談に出向いていくアウトリーチの必要性を指摘した。 また福祉から就労までの一貫した支援策を講じて、ひきこもりをはじめ、無業・非正規雇用で働く人を支援するために、関係団体による都道府県及び市町村におけるプラットフォームづくりを要請した。  

本フォーラムのレポートは追って社会保険旬報に掲載いたします。

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