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介護職員等特定処遇改善加算の要件緩和を再提案(11月26日)

厚労省は11月26日、令和3年度の介護報酬改定に向けて検討を続けている社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)に、各サービスの横断的な事項に関してさらなる議論を求めた。

横断的事項の「自立支援・重度化防止の推進」を除く、▽介護人材確保・介護現場の革新▽制度の安定性・持続可能性の確保▽地域包括ケアシステムの推進▽感染症や災害への対応力強化▽その他─の主な内容を紹介する。介護人材確保・介護現場の革新については、介護職員等特定処遇改善加算の要件緩和が再提案された。


介護人材の確保・介護現場の革新

経験・技能のある介護職員の賃金改善は、その他の介護職員より高くすることに緩和

介護職員等特定処遇改善加算の要件の緩和について11月9日の議論を踏まえて見直し、改めて提案した。

具体的に、平均の賃金改善額の配分ルールについて、「その他の職種」は、「その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」は維持したうえで、「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」から「より高くすること」を示した。

経験・技能のある介護職員について、「月額8万円」の賃金改善又は、「年収440万円(役職者を除く全産業平均水準)」を設定・確保するというルールは維持する。

その他、廃止する介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴについて令和3年度からの新規算定は認めず、経過措置は1年間とすることを示した。

特定加算の要件緩和について、日本医師会の江澤和彦委員や健保連の河本滋史委員などは慎重な検討を要請した。

他方、日本介護支援専門員協会の濵田和則委員は、「その他の職種」について「その他の介護職員」に準じた柔軟な運用を可能とするよう求めた。

サービス提供体制強化加算の最上位区分を新設

サービス提供体制強化加算について、財政中立を念頭に、より介護福祉士割合が高い事業所や職員の勤続年数が長い事業所を高く評価する最上位区分を新設することを提案した。たとえば介護保険施設では介護福祉士が80%以上であること又は勤続年数10年以上の介護福祉士の割合が35%以上であることを設定する。

施設や特定施設の最上位区分の要件として、サービスの質の向上につながる取組を1つ以上実施することを求める。

また介護職員処遇改善加算で求められる項目と同趣旨の要件は廃止する。

テクノロジー機器の活用で一部加算の配置要件を緩和

複数のテクノロジー機器を活用し、利用者に対するケアのアセスメント評価や人員体制の見直しをPDCAサイクルによって継続して行う場合の評価を提案した。特養の日常生活継続支援加算や特定施設入居者生活介護の入居継続支援加算で、「介護福祉士数が常勤換算で6:1」の要件を「7:1」に緩和する。

複数のテクノロジー機器とは、見守りセンサーや移乗支援機器、インカム、記録ソフトなどを想定している。

令和2年度介護ロボット実証結果では、テクノロジーを活用した施設では、活用していない施設よりも「1・2倍程度充実している」などと紹介した。

制度の安定性・持続可能性の確保

訪問介護が大部分のケアプランを作成するケアマネ事業所を抽出

訪問介護の生活援助の訪問回数が多い利用者への対応の仕組みの見直しについて次のように提案した。

検証は、地域ケア会議のみならず、行政職員やリハ職等の専門職を派遣する形で行うサービス担当者会議でも行う。さらに検証したケアプランの次回の届出は1年後に行う。

他方、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占めるケアプランを作成する居宅介護事業者を事業所単位で抽出する点検・検証の仕組みを導入することを示した。

11月2日の財政制度等審議会財政制度分科会において、届出を避けるために生活援助が身体介護に置き換えられているケースがあることを指摘し、「訪問介護全体での適切なサービスを確保するため、身体介護も含めた訪問介護全体の回数で届け出を義務付ける等、制度の改善を図るべき」という提起がされたことを受けての対応。

健保連の河本滋史委員は、厚労省の提案に賛意を表明。「生活援助が身体介護に安易に置き換えられる場合の対応について、適正な検証ができる仕組みとすべき」と主張した。

一方、認知症の人と家族の会の鎌田松代委員は、届出の仕組みそのものを見直し、「適切なアセスメントに基づく回数」に戻すよう改めて訴えた。

地域包括ケアシステムの推進

認知症の評価をCHASEに入力へ

地域包括ケアシステムの推進では、認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応力の向上のため、施設等の入所者等に対し定期的にDBD-13やVitality Indexの評価を実施し、その結果をCHASEに入力し、フィードバックに基づくサービスの改善を推進していくことを提案した。

CHASEの事業所単位での評価を行う方向だ。対象サービスは施設以外に、グループホームや小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護などを想定している。また入力する評価指標についてNPI-NHも任意で求めることとした。

認知症行動・心理症状緊急対応加算の対象に(看護)小規模多機能型居宅介護を追加することを提案。またBPSDへの対応も含め、認知症に係る各事業所の取組状況(研修の受講状況等)を、利用者が介護サービス情報向上システムで確認できるようにすることを示した。

その他、介護職員のすべての無資格者に受講を義務付ける認知症基礎研修について全カリキュラムをeラーニングで実施できるようにするとともに、一定の経過措置を設けることとした。

認知症の人と家族の会の鎌田松代委員は、NPI-NHも任意とはせずに入力を行う指標に位置付けることを要請した。

感染症や災害への対応力強化

BCP策定の経過措置は3年間

感染症や災害が発生した場合の業務継続に向けた計画(BCP)の策定や研修・訓練の実施などを運営基準上ですべての介護サービス事業者に義務付けることについて、3年間の経過措置を設けることを提案した。また感染症対策の委員会の開催や指針の整備なども同様に3年間の経過措置を設けることとした。

連合の伊藤彰久委員は、BCP策定等の経過措置の期間について「喫緊の課題であり、1年間で対応できるように特段の支援をしていくことも重要」と述べた。

感染症発生時などの通所サービスの事業所規模は直近の利用者数で判断

通所介護や通所リハビリテーションの基本報酬について、感染症や災害等の影響により利用者の減少等がある場合に、事業所規模別の報酬区分の決定にあたって、前年度の平均延べ利用者数ではなく、直近の一定期間における平均延べ利用者数の実績を基礎とすることを提案した。

その他

食費の基準費用額を見直し

介護保険施設の食費・居住費の基準費用額について次のように提案した。

食費の基準費用額は令和2年度介護事業経営実態調査による平均的な費用額との差の状況を踏まえ、利用者負担への影響を考慮しつつ対応する。

居住費の基準費用額については、今般の調査で減価償却費の減価償却法を統一した場合の推計値を参考として記載することとしたが、平均的な費用額との差の状況を踏まえ、引き続き把握を進めることとした。

現在、食費の基準費用額は月額4万2317円で設定されている。令和2年度実態調査では4万3914円であることが分かった。

全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は、食費の基準費用額の引き上げを要望した。

地域区分の級地設定案を提示

地域区分の級地の設定では、自治体の意向を踏まえて、令和3年度から令和5年度までの間の地域区分の適用地域案を示した。

また各サービスの人件費割合(地域差を勘案する費用の範囲)について、継続的に実態把握を進めることを提案した。

地域差を勘案する人件費の範囲に派遣委託費を含めることや介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の影響を除くこと、安定的な人件費の把握や区分移動のルールの設定も検討することとした。

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