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時々刻々|#9 幸せってなんだっけ?(続き)

 いまさらですが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さて、前回(2021年9月24日掲載)、「次回に続くと」と言って、年が明けてしまいましたが、「幸せってなんだっけ?」の続きです。 「自殺」ということから、「幸せ」を考えてみたいと思います。自らの命を絶つからには、自死された多くの方々が、「幸せでない」状況下にあったということでしょう。
 厚生労働省の『令和3年版自殺対策白書』(以下、『白書』。)によると、日本における自殺者数は、平成22年以降10年連続で減少していましたが、令和2年は前年に比べ912人(4.5%)増えて2万1,081人(男1万4,055人、女7,026人)となり、男性は11年連続で減少となりましたが、女性は2年ぶりに増加しました。自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)でみると16.8人(男性23人、女性10.9人)となり、こちらも11年ぶりに増加。死亡率では女性だけでなく、男性も増加しています。

 『白書』では、日本における自殺の特徴を次のように分析しています。
①近年、全世代は低下傾向だが、20歳未満は上昇傾向にある。
②20歳代と30歳代は低下傾向だが、40歳代以上に比べ減少率は小さい。
③15~39歳の死因の第1位は自殺。
④先進国(G7)で10歳代と20歳代の死因第1位が自殺は日本だけ。
――と、「若者」が日本の自殺の状況を特徴づけています。

 また、自殺の原因・動機特定者(令和2年は1万5,127人)について、原因・動機別(自殺者1人につき3つまで計上可能)に自殺の状況をみると、最も多いのが「健康問題」(1万195人)、次いで「経済・生活問題」(3,216人)、「家庭問題」(3.128人)となっています。

 「健康問題」と言ってしまうと、「病気を苦に…」と片付けてしまいがちですが、『白書』では、「健康問題」について、さらに詳しく原因・動機を分類しています。そうしたところ、「健康問題」(1万195人)のうち、最も多いのが「病気の悩み・影響(うつ病)」(4,045人)、次いで「病気の悩み(身体の病気)」(3.090人)、「病気の悩み・影響(その他の精神疾患)」(1,454人)、「病気の悩み・影響(統合失調症)」(868人)となっています(「健康問題」中のさらに詳しい原因・動機は自殺者1人につき1つ計上)。つまり、健康問題の約6割がメンタルヘルスに関係していることがみてとれます。

 日本は、将来のある若者たちがメンタルを病んでしまうという幸せでない状況に陥っています。うつ病等で落ち込まないような状況を、逆説的・積極的に「希望を持てる状況」と言い換えるならば、世の中の人たちが将来に希望を持てる状況というのは、ひとつの「幸せ」のあり方と言えるのかもしれません。
 その場合、いまの世の中の人たちが願っている「希望」とはなんなのか。そして、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」が、世の中の人たちが希望を持てる状況を実現できるのか。それとも、「新しい」ということでは実現不可能で、資本主義でない新しい社会のあり方が求められているのか。

 令和2年については、『白書』でも分析・記述しているように、新型コロナウイルスも自殺者数の増加に影響しているところですが、新型コロナを乗り越え、新自由主義を乗り越えた先に、自殺者数の減少となって、幸せの状況を実感できる社会の実現を期待したいと思います。そして、世の中の人たちの「希望」と「希望の在処(社会のあり方)」について考えていきたいというのが、「時々刻々」の新年の抱負とするところです。

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