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障害福祉サービスにおける短期入所の日中活動支援の評価を提案(10月21日)

厚労省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームは10月21日、令和3年度報酬改定に向け、⑴短期入所⑵療養介護⑶施設入所支援⑷生活介護─の4サービスについて議論を深めた。

厚労省は短期入所における日中活動支援について評価することを提案するとともに、医療型短期入所の整備を促進する方向を示した。


医療型短期入所の整備促進の方針を示す

⑴短期入所には、▽福祉型(障害者支援施設等で実施可能)▽福祉型強化(施設等で実施可能。看護職員を常勤1人以上配置)▽医療型(病院・診療所・老健施設・介護医療院において実施可能)─3類型がある。

このうち福祉型強化は、区分1以上で、レスピレーター管理など、厚労大臣が定める状態に該当する医療的ケアが必要な障害児・者が対象。

医療型は、重症心身障害児・者や遷延性意識障害児・者、筋委縮性側索硬化症等の運動ニューロン疾患の分類に属する疾患を有する者などを対象とする。

厚労省は、論点として①医療的ケア児者の受入体制の強化と②日中活動支援の充実─を示した。

論点①では、医療型短期入所事業所の整備促進を図る上で、特別重度支援加算の算定要件や単価の見直しを提案した。加算Ⅰの要件について新たな医療的ケア児者の判定基準とスコア表を活用する方向だ。 また基本報酬について近く公表する障害福祉サービス等経営実態調査の結果を踏まえて検討することとした。

高度な医療的ケアが必要で強度行動障害により常時介護を要する場合など、報酬上は現在の医療型短期入所の対象に該当しないが、福祉型(強化)短期入所事業所では支援が困難との指摘がある。その場合、医療型短期入所事業所が支援することになるが、現行では報酬単価の低い福祉(強化)短期入所サービス費を請求せざるを得ない状況だ。

厚労省は、基本サービス費において、動ける医療的ケア児者の受け入れについて新たな評価を導入する方向で検討する。

論点②では、子どもの発達・成長を支援するための知識・経験を有する保育士やリハ専門職を配置した上で、日中活動に係る支援計画を作成し、日中活動を実施している場合に評価することを提案した。

この計画作成に当たっては、他のサービスにおける個別支援計画の作成を参考とし、それに準じた対応を要件とすることとした。

アドバイザーの田村正徳・埼玉医科大学特任教授は、見直しの方向性を支持した。

小川正洋・柏市障害福祉課長は、動ける医療的ケア児者の受け入れ体制整備における財政支援の必要性を指摘。その一方、短期入所の日中活動支援の評価については、「短期入所はあくまでも緊急やレスパイトなどの短期間の受け入れである。利用者の成長や発達を見ることに越したことはないが、短期入所で長期入所的な利用を促すことを容認するようなりかねない」などと慎重な姿勢を提示。引き続き検討するよう求めた。

療養介護の対象者を明示へ

⑵療養介護の対象者は、障害者総合支援法及び同法施行規則において、「機能訓練、療養上の管理、看護及び医学的管理の下における介護その他必要な医療並びに日常生活上の世話を要する障害者であって、常時介護を要するものとする」と規定されている。

さらに告示で人工呼吸器装着・障害支援区分6及び、筋ジストロフィー患者又は重症心身障害者・障害支援区分5以上など具体的な対象者が規定されている。

他方で、医療的ケアが必要で強度行動障害を有する者など、障害者支援施設での受け入れが困難な者について、運用上、個別判断で療養介護の算定対象とした例がある。

そこで厚労省は、人工呼吸器装着・障害支援区分6及び、筋ジストロフィー患者又は重症心身障害者・障害支援区分5以上などに「準ずる者」(たとえば高度な医学的管理が必要である者であって、強度行動障害や遷延性意識障害等により常時介護を要する者)も対象として明示することを提案した。また療養介護の対象者の要件は、医療型短期入所においても準用されているため、合わせて検討を求めた。

見直しの方向性について検討チームのアドバイザーは概ね賛同した。

介護保険での取り組みを参考に口腔衛生管理や摂食・嚥下機能の支援を充実

⑶施設入所支援は、夜間に介護が必要な者で、障害支援区分4以上の生活介護の利用者などが対象。

厚労省は論点として、口腔衛生管理や摂食・嚥下機能の支援を充実させることを挙げた。

具体的に介護保険における取り組みを参考に、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、施設職員に口腔ケアに係る技術的助言を行っている場合に評価する仕組みの創設を提案。さらに経口移行加算及び経口維持加算については、咀嚼能力等の口腔機能及び栄養状態を適切に把握しつつ、「口から食べる楽しみを支援」するための多職種による取り組みのプロセスを評価することも提案した。

見直しの方向性について検討チームのアドバイザーは概ね賛同した。

また厚労省は、施設入所支援・生活介護の共通事項として重度障害者支援加算の見直しを提案した。

平成30年度改定で、生活介護においても重度障害者支援加算を導入した。生活介護の重度障害者支援加算(施設入所支援における同加算Ⅱ)は、行動障害のある利用者に対して支援計画を作成する体制評価と個別支援評価の2つで構成される。個別支援評価部分の算定の要件として配置基準に規定される人員等に加えて、強度行動障害支援者養成研修修了者の配置を求めている。

障害者支援施設では、利用者に対する支援が1日を通じて適切に確保されるように支援計画を策定することを前提に、施設入所支援で重度障害者支援加算の算定を可能としているため、障害者支援施設が行う通所サービスの生活介護では重度障害者支援加算が算定できない。その結果、障害者支援施設が実施する生活介護を通所で利用している障害者に対して支援しても加算による評価ができない仕組みになっている。

そこで厚労省は、障害者支援施設が実施する生活介護を利用している障害者に対して支援計画を作成し支援した場合も加算を算定できるようにすることを提案した。

他方、利用者の状態確認や利用者が環境の変化に適用するためのアセスメント期間等を一定程度見直し、算定期間を延長できるようにすることを提案。期間を延長した場合は財政影響も考慮しつつ単価も見直すこととした。

生活介護の常勤看護職員等配置加算を拡充

⑷生活介護は、地域や入所施設において、常時介護等の支援が必要な障害支援区分が区分3以上の者などが対象。昼間における介護や日常生活上の支援、生産活動の機会の提供などを行う。

厚労省は、①常勤看護職員等配置加算の拡充と②重症心身障害者への支援に対する評価について論点を示した。

論点①では、常勤看護職員を3人以上配置している事業所の評価として「常勤看護職員等配置加算Ⅲ」(仮称)を導入することを提案した。背景には、生活介護は、支援区分5以上の利用者が70%以上占めているとともに、既に看護職員を常勤換算で3人以上配置している事業所も存在していることなどがある。

さらに常勤看護職員等配置加算Ⅱ及びⅢについて、新たな医療的ケア児の判定基準案を活用し、一定の要件を満たす利用者を受け入れた場合に算定を可能とすることを示した。

論点②では、重度障害者支援加算に「重症心身障害者を支援している場合」に算定可能となる区分を創設し、人員配置体制加算と常勤看護職員等配置加算に上乗せする形で評価する仕組みの導入を提案。

重症心身障害者の支援では、人員配置体制加算や常勤看護職員等配置加算で評価している体制以上に手厚い体制を整える必要があるため。

小川アドバイザーは、論点①「常勤看護職員等配置加算Ⅲ」(仮称)の導入について、「まずは常勤換算1人以上の看護師配置を行う事業所を更に増やし、医療的ケア者の受け入れのすそ野を広げる方が急務ではないか」と指摘し、加算Ⅰの見直しを提案した。

たとえば医療的ケア必要な人や強度行動障害を持っている人など特定の状態の利用者を支援している場合は加算を増やすが、そうでない場合は少し引き下げるなどとすることをあげた。

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