数理の目レトロスぺクティブ|#5 給付水準の下限
平成16年改正では、給付水準の下限の規定が設けられた。マクロ経済スライドにより徐々に給付水準を下げていくことにより財政均衡を図る仕組みが導入されたが、財政の均衡のためにはどこまでも給付水準を下げていいというものではない。老齢・障害・遺族という人生における経済リスクに遭遇した人々が困窮化しないだけの給付を行わなければ、公的年金制度の存在意義そのものが失われてしまう。そこで給付水準に下限を設け、これ以上マクロ経済スライドを続けると次期財政検証時までに給付水準がこの下限を下回る見通しのときには、マクロ経済スライドを中止し、制度の抜本的見直しを行うという規定が設けられた。マクロ経済スライドを中止するので財政の均衡は図られていないが、財政の均衡を図る措置も制度の抜本的見直しのなかで採られることになる。
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