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コロナ感染症の間氷期に思う(中村秀一)

霞が関と現場の間で

急速な第5波の終息

昨年1月15日に日本国内で最初の感染者が確認されて以来、コロナに振り回された2年間であった。世界の感染者は2億4809万人、502万人が死亡し(11月3日現在)、100年前のスペイン風邪以降最大のパンデミックとなった。

日本では新型コロナウイルス感染症の第5波が到来し、7月12日に東京では4度目となる緊急事態宣言が出された。東京オリンピック・パラリンピックは、緊急事態宣言下での開催となった。その後も感染の拡大は収まらず、東京での1日の新規感染者数は8月13日に5773人というピークを記録した。筆者が居住する世田谷区(人口約90万人)では、8月22日の自宅療養者が3365人であった。

その後、新規感染者数は急速に減少し、9月30日には緊急事態宣言が解除された。11月8日の東京の新規感染数は18人という激減振りである。世田谷区の自宅療養者は8人(10月24日)と8月とは全くの様変わりである。

「間氷期」の到来

振り返ると、2年近く続いた自粛生活はまるで「氷河期」であった。現在は第6波という次の氷河期を控えての「間氷期」であろう。筆者の身辺でも「雪解け」が急速に進んでいるように思える。

創立30周年を迎えたさわやか福祉財団の記念集会は、11月に東京會舘で対面で開催された。世田谷区では、地域密着型サービスの指定・更新について審議する運営委員会があるが、止むを得ず書面審査でしのいできたが、久しぶりに委員参集で開催された。

昨年開催予定の東北ブロック地域包括・在宅支援センター職員研修会において基調講演を依頼されていたが、開催延期となっていた。この度、1年遅れで開催され、新幹線で盛岡まで出向いた。遠隔も併用での研修会だが、久しぶりの対面での講演を行うことができた。 もちろん、遠隔での会議も続いている。多くの医療・介護関係者が参加し、夜間の開催となる世田谷区医療連携推進協議会や練馬区在宅療養推進協議会などは、遠隔で行うメリットが感じられる。

「新しい日常」に向けて

第6波が来るだろうが、第5波(大阪では第4波の方が大変であったとのことであるが)という難局の中で、行政、医療・介護関係者が苦労しつつ、乗り越えてきた。それらの経験が、第6波への対応に生かされなければならない。

コロナはいつか終息する。しかし、単純にコロナ前の世界に戻るわけではない。「新しい日常」はどのような姿になるのか。総選挙も終わり、第2次岸田内閣も船出した。政策を実らせる時だ。

(本コラムは、社会保険旬報2021年12月1日号に掲載されました)


中村秀一(なかむら・しゅういち)
医療介護福祉政策研究フォーラム理事長
国際医療福祉大学大学院教授
1973年、厚生省(当時)入省。老人福祉課長、年金課長、保険局企画課長、大臣官房政策課長、厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政担当)、老健局長、社会・援護局長を経て、2008年から2010年まで社会保険診療報酬支払基金理事長。2010年10月から2014年2月まで内閣官房社会保障改革担当室長として「社会保障と税の一体改革」の事務局を務める。この間、1981年から84年まで在スウェーデン日本国大使館、1987年から89年まで北海道庁に勤務。著書は『平成の社会保障』(社会保険出版社)など。

 

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