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物価高騰対策を調査項目に追加 令和5年度介護事業経営実態調査等を了承(2月1日)

社会保障審議会介護給付費分科会の介護事業経営調査委員会は2月1日、令和4年度介護事業経営概況調査の結果と、令和5年度介護事業経営実態調査の実施を了承した。なお、任期満了により退任した田中滋前委員長の後任として、今回より新たに委員として加わった国立社会保障・人口問題研究所所長の田辺国昭委員が選出された。

令和5年度介護事業経営実態調査を2023年5月に実施

平均収支差率は0.9%低下 給与費等が収益を上回ったか——令和4年度調査

令和4年度介護事業経営概況調査は令和4年5月に実施。令和2年度および令和3年度の決算を調査したもので、有効回答率は48.3%だった。

サービス種類ごとの収支差率では、①新型コロナウイルス感染症に関する補助金収入を含めた税引き前の収支差率、②同補助金を含まない税引き前収支差率、③同補助金を含めた税引き後の収支差率の、3種類の数値が併記された(以下の具体的な数値については①によるもの)。

全サービス平均の収支差率では、令和2年度決算では3.9%、令和3年度決算では3.0%と、その差は▲0.9%と、福祉用具貸与(+1.9%)・居宅介護支援(+1.5%)など一部のサービスを除き、全体的に低下傾向にある(下図)。

各介護サービスにおける収支差率
(介護療養型医療施設・夜間対応型訪問看護は有効数値が少ないため参考数値)

厚労省はこの要因として、令和2年度から令和3年度にかけて、多くのサービスで収入が増加する一方で、給与費やその他の費用が収入を上回って増加した結果と分析した。

また、新たに新型コロナウイルス感染症の影響を判断するために調査した『陽性者等の発生状況』(利用者に陽性者が発生した場合などと該当しない場合を比較)や『施設・事業所運営への影響の状況』(一時休止・運営縮小・利用者現象等の場合などと該当しない場合を比較)などを加味した収支差率も示された。

どちらにおいても、「該当なし」の方が収支差率の高いサービスがある一方、そうではないサービスも見受けられ、厚労省は「規模の大きな事業所は陽性者の発生するケースが多いなどもともとの収支差が大きい可能性なども考えられる」と説明した。

委員会は令和4年度介護事業経営概況調査の結果を了承。今後、介護給付費分科会で報告される。

「本部から事業所への繰入」の項目等を追加——令和5年度調査

続いて、令和5年度介護事業経営実態調査の実施について、厚労省より案が示された。調査時期は令和5年5月に実施し、令和4年度決算額を調査する。令和5年度をもって廃止する介護療養型医療施設については、調査から除外する。

介護事業経営調査委員会における結果の公表は令和5年10月頃を予定しており、その後、介護給付費分科会に報告される予定だ。

調査票においては令和4年度介護保険事業経営概況調査の調査項目を基本としつつも、必要な調査項目を追加することが示された。

新型コロナウイルス感染症に関する影響では、内訳として施設内療養に関する補助金についての調査項目を追加する。また、物価高騰対策に関する項目と、介護職員処遇改善支援補助金に関する項目が新たに追加される。

  • 物価高騰対策に関する項目:「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」等による支援を受けている場合に、その状況を把握するため、金額を記載する欄を追加

  • 介護職員処遇改善支援補助金に関する項目:賃金引き上げにかかる費用(令和4年2月及び3月分)は令和3年度分の支出に計上されることがある一方、補助金は令和4年度の収入に含まれることから、より正確な分析が行えるよう、金額を記載する欄を追加

さらに、令和4年度介護事業経営概況調査の際に今後の検討とされていた、特別損益に関する項目について、「本部から事業所への繰入」についての調査項目が追加される(繰入金の内訳を把握できていない事業所が見られることから、按分指標を把握するための調査項目を追加)。

有効回答率の確保に調査項目の簡素化等——記入者への負担に配慮

また、有効回答率の確保策等が示された。

  • 建物の状況や面積等のプレプリント対応:毎年変わる可能性の低い建物の状況や面積等については、前回調査と同一の施設・事業所であった場合、記入者負担に配慮し、プレプリントを行う

  • 一括送付の仕組みの創設:希望する法人については、法人本部に対して調査対象となった施設・事業所名の伝達や調査票の一括送付を行うことにより、調査精度及び回収率の向上を図る

  • 調査項目の簡素化:集計結果に大きな影響を与えることなく、代替による簡素化が可能と思われる項目の削減(食事提供数・送迎利用者数) /職種ごとの給与費に関する調査項目について、職種区分を統合

調査項目の簡素化については、このほか利用頻度が低い項目についても同様の見直しを行い、記入者負担の軽減を図る。

有効回答率の確保については、委員からも課題とする声が相次いだ。

早稲田大学の野口委員は、令和4年度調査の報告を受けた際に、5割を切っているのは非常に問題があるとの認識を改めて示し、「行政記録情報として自動的に吸い上げるようなシステムをなんとか将来作っていただきたい」と要望した。

さらに、独立行政法人福祉医療機構の松本委員も、特に営利法人を中心に提供されているサービスについては回答率が3割程度にとどまっている現状を振り返り、「差が改善しないのであれば抜本的な解決の検討を」と求めた。

また、EY新日本有限責任監査法人の泉委員は、担当者に元のイメージが刷り込まれている可能性があるとして、調査票を渡す際に簡素化したことを伝えた方がよいと述べた。

実態調査の実施についても委員会において了承され、後日行われる給付費分科会に報告される。

サービス種別等ごとの調査票案

介護事業経営概況調査と介護事業経営実態調査の比較


介護事業経営概況調査は改定前後の2年分の収支状況を、介護事業経営実態調査は改定後2年目の1年分の収支状況を調査するもの

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