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電子処方箋、リフィル処方と重複投薬等チェックの口頭同意への対応は10月頃からプレ運用開始(2023年6月8日)

厚生労働省は6月8日、健康・医療・介護情報利活用検討会の下に設置した「電子処方箋等検討ワーキンググループ」の初会合を開き、電子処方箋の機能拡充について検討を開始した。

同ワーキンググループ(WG)で示された全体スケジュール案では、❶リフィル処方箋や、❷重複投薬等チェックの口頭同意に加え、❸マイナンバーカードを活用した電子署名への対応について、令和5年10月に追加機能をリリース予定としている。

また、令和6年3月には、❹調剤済み電子処方箋の保存サービスをリリース予定で、❺院内処方への対応については、令和6年4月以降となっている。

なお、❶及び❷については、現在のモデル地域や早期導入施設等を中心に、令和5年10月頃からプレ運用を開始する予定で、令和6年4月頃の全国展開を目指す。

そのほか同WGでは、電子処方箋の用法コード・用法マスタの改善等についての資料も掲載されている。

❶リフィル処方箋への対応

電子処方箋管理サービスでは、令和4年度から導入されたリフィル処方箋については非対応で、現在は紙の処方箋で運用している。

リフィル処方箋に対応するためには、①長期処方(データ保存期間)、②異なる薬局での調剤の可能性、③複数回の調剤結果の登録や処方内容と異なる調剤の可能性、に対応可能な仕組みとする必要があるため、令和5年3月29日に開催された第12回健康・医療・介護情報利活用検討会でリフィル処方への対応等が示されていた。

また、6月2日にとりまとめられた「医療DXの推進に関する工程表」では、「2023年度内にリフィル処方等の機能拡充を実施する」とされている。

第12回健康・医療・介護情報利活用検討会「資料4 電子処方箋について」p3

リフィル処方箋および重複投薬等チェックの口頭同意については、令和5年5月末にシステム事業者向け技術解説書が公開済で、同年10月には追加機能がリリースされ、モデル地域等でのプレ運用が始まる予定となっている。

なお、現在、電子処方箋対応施設となった際には、医療機関・薬局が電子処方箋ポータルサイトで運用開始日を入力し、それをもって厚生労働省HPで電子処方箋対応施設として公表されているが、電子処方箋としてのリフィル処方箋に対応した場合も同様となる。

また、リフィル処方箋の「処方内容(控え)」について、氏名欄に氏名フリガナを追加し、被保険者番号等の情報のみでは院内の患者情報との突合が難しいため、診察券番号等、医療機関側が独自で設定できる患者特定コードが追加される。

❷重複投薬等チェックの口頭同意への対応

現在、電子処方箋管理サービスを導入している医療機関・薬局において、➀保険証での受付の場合や、②顔認証付きカードリーダーで患者が過去の薬剤情報の提供について、「同意しない」を選択した場合には、「重複投薬等チェック」において併用禁忌がある場合でも、過去の薬剤を確認できない仕組みとなっている。

そこで、医師・薬剤師が診察等において、併用禁忌等があることを説明し、患者から過去の薬剤情報を取得・閲覧することに同意を得られた場合は、重複投薬や併用禁忌の対象となる過去の処方・調剤内容を確認することが可能となる仕組みとする。この場合の同意については、口頭で良いこととし、患者から口頭で同意を得たことを電子カルテシステムや薬局システムに記録として残しておくこととする。

また、一旦、過去の薬剤情報の提供に同意しない旨を意思表示しているにもかかわらず、口頭での同意を求められることに不安を覚える患者もいることから、口頭同意を行うことで何ができるようになるかだけではなく、重複投薬等チェックの仕組みも説明する予定としている。

ただし、現場では説明する時間が限られていることも踏まえ、シンプルな周知素材を活用しつつ、詳細を知りたい患者向けに詳細版の周知素材を作成することが検討されている。

❸マイナンバーカードを活用した電子署名

医師・歯科医師による電子処方箋の登録、薬剤師による電子処方箋の調剤結果情報の登録には、有資格者本人であることを電子的に証明する「電子署名」を付与する必要があり、物理カードを用いた署名方式(ローカル署名)と、物理カードを用いない署名方式(カードレス署名)のどちらかを選択できることとなっている。

現時点では、ローカル署名・カードレス署名ともにHPKI(保健医療福祉分野の公開鍵基盤)の仕組みを活用しているため、HPKIカードの発行申請が必要となっている。一方で、電子署名に必要なHPKIカードの発行が課題となっていること等を踏まえ、マイナンバーカードを活用したHPKIカードレス署名の検討が進んでいる。

マイナンバーカードでの電子署名は、HPKIリモート署名の仕組みを用いて、医師等の個人の現住所を含まない形での署名を可能とし、原則マイナンバーカードで1日1回PIN入力することで、処方箋発行時に自動で署名が付与される仕組み。

なお、HPKI認証局への利用申請は引き続き必要で、マイナポータルを活用した申請とすることを予定している。

この仕組みは、令和5年10月に追加機能がリリースされ、HPKIカードが不足する中、カード発行を待たずに、すでに保有しているマイナンバーカードを活用したHPKI署名が可能となる。

❹調剤済み電子処方箋の保存サービス

調剤済み電子処方箋の保存サービスとは、薬局の希望に応じて、調剤済み電子処方箋を電子処方箋管理サービスで保管する仕組みで、令和6年3月に追加機能がリリースされる予定。

同サービスを利用したい薬局は、電子処方箋ポータルサイト経由で申請を行うことで、保存開始日以降に保管登録があった調剤済み電子処方箋を調剤年月日から5年間保存することができる。この保存期間中であれば、取得および再登録ができるが、再登録においても調剤年月日から5年間の保存期間は変わらない(5年を超える延長保管については、現場のニーズを踏まえて検討)。

費用は同サービスを利用する薬局が負担することとし、利用実績に応じた負担とする。


❺院内処方への対応

院内処方情報(退院時処方を含む)への対応については、令和5年5月24日の健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループで議論が行われ、①電子カルテ情報共有サービス(仮称)に登録し、電子処方箋管理サービスに情報連携する方法、②電子カルテ情報共有サービスを介さず、電子処方箋管理サービスに直接登録する方法の2パターンが示されている。

実装方法が決定された場合でも、➀院内処方情報の共有範囲、登録タイミング、②医療機関内の電子カルテと部門システムの関係整理、過去情報の閲覧や、重複投薬等チェックの運用方法といった点について検討を進める必要があるとしている。

なお、「医療DXの推進に関する工程表」では、「2024年度以降、院内処方への機能拡充や重複投薬等チェックの精度向上などに取り組む」とされている。

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