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オンライン資格確認の導入の原則義務化(令和5年4月~)と医療情報・システム基盤整備体制充実加算の新設(令和4年10月~)

令和5年度より、保険医療機関・薬局に、医療DXの基盤となるオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されることを踏まえ、当該システムを通じた患者情報の活用に係る現行の評価(電子的保健医療情報活用加算)が令和4年10月から廃止されます。

その上で、医療DXの推進により、国民が医療情報の利活用による恩恵を享受することを推進する観点から、初診時等における情報の取得・活用体制の充実及び情報の取得の効率性を考慮した評価(医療情報・システム基盤整備体制充実加算)を令和4年10月から新設します。 ここでは、それらの議論の経緯や概要についてまとめていきます。


1 オンライン資格確認の導入の原則義務化に係る議論の経緯

保険医療機関・保険薬局(保険医療機関等)において、オンライン資格確認の導入を促進させるため、システム改修等の費用に充てることのできる補助金が医療情報化支援基金から交付されています。

令和4年5月25日の社会保障審議会医療保険部会において、令和5年3月までに概ね全ての保険医療機関等での導入を目標とし、その達成に必要な導入ペースを踏まえ、令和4年9月末時点での概ね5割の導入が中間到達目標として掲げられました。しかし、運用開始施設の数が伸び悩んでいる(令和4年5月15日時点では19%※)ことから、①システム導入の原則義務化、②システム導入・マイナンバーの保険証利用促進のための財政措置の見直しの必要性等が示されました。(※令和4年9月4日時点では28.3%)

令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」において、①②の内容等が改めて示され、その閣議決定を踏まえ、医療情報化支援基金による補助の拡充等が令和4年8月10日の中央社会保険医療協議会(中医協)において公表されました。

令和4年8月10日 中央社会保険医療協議会 総会(第527回)

また、同日の中医協において、「保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)」等の改正による令和5年4月からオンライン資格確認の原則義務化や、患者の薬剤情報や特定健診情報等の診療情報を活用して質の高い診療を実施する場合の評価の見直し(令和4年9月で現行の電子的保健医療情報活用加算は廃止し、同年10月から医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設)について答申されました。

2 オンライン資格確認の導入の原則義務化(令和5年4月から)

令和4年8月10日の中医協で、オンライン資格確認の導入の原則義務化のため、療担規則の改正(令和5年4月1日施行)が行われることが答申されました(改正省令は令和4年9月5日公布で、令和5年4月1日施行)。

具体的には、

  1. 保険医療機関等は、患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認を求めた場合は、オンライン資格確認によって受給資格の確認をしなければならない

  2. 紙レセプトでの請求が認められている保険医療機関等は、オンライン資格確認導入の原則義務付けの例外とする

  3. 保険医療機関等(例外対象となる保険医療機関等を除く。)は、患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認を求めた場合に対応できるように必要な体制を整備しなければならない

といった規定が療担規則に盛り込まれました。

令和5年4月以降は、オンライン資格確認の導入ができていない保険医療機関等は、療担規則に違反する状態となるため、「令和4年末頃の導入の状況について点検を行い、地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め、検討を行う」という附帯意見が出されています。

3 医療情報・システム基盤整備体制充実加算(令和4年10月から)

オンライン資格確認の導入の原則義務化に伴い、令和4年9月で電子的保健医療情報活用加算を廃止し、令和4年10月からは新たに「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が新設されます(改正告示は令和4年9月5日に告示され、令和4年10月1日適用)。

医療情報・システム基盤整備体制充実加算は、保険医療機関において、初診時に患者の薬剤情報や特定健診情報等の診療情報を活用して質の高い診療を実施する体制について評価するもので、再診時の算定はできません。

「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」は「B001-2小児科外来診療料」「B001-2-11小児かかりつけ診療料」「B001-2-12外来腫瘍化学療法診療料」が包括する診療の費用には含まれず、別途算定できます。また、「B001-2-7の外来リハビリテーション診療料1」「B001-2-8外来放射線照射診療料」を算定する日から起算して7日以内の期間に算定できない診療の費用、「B001-2-7の外来リハビリテーション診療料2」を算定する日から起算して14日以内の期間に算定できない診療の費用からは除外されます。

なお、歯科においては、「B004-1-8外来腫瘍化学療法診療料」が包括する診療の費用には含まれず、別途算定できます。また、「B004-1-6の外来リハビリテーション診療料1」「B004-1-7外来放射線照射診療料」を算定する日から起算して7日以内の期間に算定できない診療の費用、「B004-1-6の外来リハビリテーション診療料2」を算定する日から起算して14日以内の期間に算定できない診療の費用からは除外されます。

【医療情報・システム基盤整備体制充実加算1】
施設基準を満たす保険医療機関で、初診時に医療情報・システム基盤整備体制充実加算1として4点(月1回)を加算

【医療情報・システム基盤整備体制充実加算2】
施設基準を満たす保険医療機関で、初診時に電子資格確認により患者の診療情報を取得した場合又は他の保険医療機関から当該患者に係る診療情報等の提供を受けた場合は医療情報・システム基盤整備体制充実加算2として2点(月1月)を加算

厚生労働省HP(令和4年度診療報酬改定について(10月改定分))
「説明資料について(医療DXの基盤となるオンライン資格確認の導入の原則義務付け及びこれに伴う診療報酬上の加算の取扱いについて)」

医療情報・システム基盤整備体制充実加算、オンライン資格確認導入の原則義務化に関連する省令・告示・通知・事務連絡については、小社ウェブサイト「追補・訂正表」ページの「診療報酬・薬剤」に掲載しています。

診療報酬関連書籍(医科)のご紹介

社会保険研究所が発刊する診療報酬関連書籍のうち上記改正に関連する書籍をご紹介します。

医科点数表の解釈 令和4年4月版

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より詳しい内容は「【新刊】医科点数表の解釈(令和4年4月版)|Web医療と介護」からご覧いただけます。

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