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#8 社長の報酬が高く年金が支給停止に。対策は? 会社役員の給与を下げる場合のタイムスケジュール

「報酬が高いと年金がもらえないと聞いたので、年金の手続きはしていない」、「役員報酬を引き下げれば年金をもらえるだろうか」と経営者の方からご相談されることがあります。
実際に経営者や会社役員の方で役員報酬が高額なため、年金を受け取れないと思い、請求手続きをされていない方もいらっしゃいます。
今回は、経営者の年金受給についてご説明しましょう。


在職老齢年金についての誤解

「報酬が高いと年金がもらえない」とよく言われていますが、在職老齢年金制度についての誤解がとても多いと思います。
在職老齢年金(在職中の年金)とは、60歳以降、厚生年金保険に加入しながら、受け取る「老齢厚生年金」または「特別支給の老齢厚生年金」のことで、老齢厚生年金の額(基本月額)と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)の合計額によって、年金額の一部または全額が支給停止となる制度です。
具体的には、給与や賞与の額(総報酬月額相当額)と年金額(基本月額)の合計が月額50万円を超える場合、超えた額の1/2の老齢厚生年金(または特別支給の老齢厚生年金)が支給停止になります。
一般的に経営者や役員の方などは、役員報酬が高いため、在職老齢年金により老齢厚生年金(または特別支給の老齢厚生年金)が全額支給停止になっている人が多いと思います。
また、厚生年金保険の加入は70歳までとなりますが、在職老齢年金は、年齢に関係なく、報酬を受け取っている間は、制度が適用されます。
このため、70歳になるまでは、年金を一切受け取れないと誤解されてしまうようです。

役員報酬とは

役員報酬は、税務上の「役員」に対して支払われる報酬のことで、対象となる役員の範囲は、法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人などと定められています。
役員報酬は、従業員に支払われる給与のように会社の経費(損金算入)にすることはできませんが、一定の条件を満たした場合は、役員報酬を会社の経費(損金算入)とすることができます。
自由に役員報酬の額を変更することができない理由は、会社の業績に合わせて利益操作が行われたり、法人税を過少にするなどしないためです。
このため、役員報酬の額の変更(引き上げ・引き下げ)を検討する場合、変更できるタイミングを知っておくことが必要です。

役員報酬の損金算入が認められるケース

役員報酬の損金算入が認められるケースを説明しましょう。
税務上、損金算入できる役員報酬は、次の➀~➂の3種類があります。
➀ 定期同額給与
定期同額給与とは、毎月決まった日に同じ金額(定額)を支払うことです。
定期同額給与の条件は、額面の金額と手取り金額が同一でなければなりません。
定期同額給与の金額を変更できるタイミングは、事業年度開始(期首)から3か月以内になり ます(図表1参照)。
いったん決定した役員報酬は、原則として1年間、毎月同じ金額になります。
なお、会社を設立した場合は、設立後3か月以内に役員報酬を決めなければ、損金算入するこ とができません。

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