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調剤明細書に書かれている点数とは? 調剤報酬の算定方法と『調剤報酬点数表の解釈』

病気やけがで医療機関にかかった際、医師から処方箋の交付を受けることがあります。この処方箋を薬局に持っていくと、薬剤師がさまざまな確認や管理を行ったうえで、私たちに医薬品を渡してくれます。

保険薬局がこのような「調剤」を行った場合、国民健康保険や協会けんぽ、健康保険組合といった保険者から薬局に支払われるのが『調剤報酬』です。

すでにご存じの方には繰り返しになるかもしれませんが、この記事では、調剤報酬の基本的なしくみを説明します。
コンピュータが調剤報酬を瞬時に計算してくれるこの時代に、改めてその根拠をご確認いただければと思います。

なお、この記事の説明は令和5年8月時点の制度に基づく情報となっています。


調剤報酬の算定方法と根拠法令

ここから、少し堅苦しい法令の話が多くなりますがご容赦ください。

調剤報酬は、「健康保険法」と「高齢者の医療の確保に関する法律」の規定に基づく厚生労働大臣告示「診療報酬の算定方法」の別表第三に「調剤報酬点数表」として定められているものです。

第76条 保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。
2 前項の療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定するものとする。

健康保険法(大正11年法律第70号)

健康保険法(大正11年法律第70号)第76条第2項(同法第149条において準用する場合を含む。)及び高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)第71条第1項の規定に基づき、診療報酬の算定方法を次のように定め、平成20年4月一日から適用し、診療報酬の算定方法(平成18年厚生労働省告示第92号)は、平成20年3月31日限り廃止する。
〔略〕
三 (中略)保険薬局に係る療養に要する費用の額は、別表第三調剤報酬点数表により、1点の単価を10円とし、同表に定める点数を乗じて算定するものとする。

診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)

この点数表は、健康保険法や高齢者医療確保法のほか、国民健康保険法や感染症法等に基づく各種公費負担医療においても、これによることとされています。つまり、どのような公的保険でも薬局が受け取る調剤報酬はこの点数表がベースとなっています。

調剤報酬点数表のしくみは、医科や歯科の点数表と同様です。
つまり、調剤に関する行為が細かく項目分けされ、それぞれの難易度等に応じた点数がつけられています。

実施した行為を点数表の中から拾い上げていき、その点数を足し合わせたものが請求点数となります。

請求点数=(1)調剤技術料+(2)薬学管理料+(3)薬剤料+(4)特定保険医療材料料

合計された請求点数に、1点の単価10円をかけたものが調剤報酬となります。私たちは、加入している保険に応じて3割や2割などの自己負担額を窓口で支払います。

ちなみに調剤報酬点数表は医科や歯科と同じタイミングで、2年ごとに大幅に改定されます。現在は令和4年4月からの点数表が適用されています。次の大幅改定は令和6年6月の施行が予定されています。

(1)調剤技術料

薬局と薬剤師

ここからは調剤報酬点数表の区分に沿ってみていきましょう。

まず、薬局の体制や薬剤師の調剤技術等に対する報酬が調剤技術料です。
調剤技術料は①調剤基本料②薬剤調整料および③加算料からなっています。

①調剤基本料

調剤基本料は、処方箋の受付1回につき、薬局の施設基準に係る区分に従い、それぞれの所定点数(下表)を算定します。
調剤基本料の施設基準は、次の項目に応じて区分されています。

  1. 処方箋の受付回数

  2. 特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合(処方箋集中率)

  3. 特定の保険医療機関との間での不動産の賃貸借取引の有無

  4. 当該保険薬局における医療用医薬品の取引価格の妥結率

調剤基本料と施設基準の表
調剤基本料と施設基準

調剤基本料の区分と処方箋受付回数等の関係は下図のようになります。

大型チェーン薬局以外と大型チェーン薬局に分類
出典:厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」

施設基準を満たすとして届け出た以外の保険薬局は、特別調剤基本料を算定します。

なお、同一患者から異なる医療機関の処方箋を同時にまとめて複数枚受け付けた場合、2回目以上の受付分については所定点数の100分の80を算定します。

また、取引価格の妥結率が5割以下である、またはかかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務を行っていない等の保険薬局は、所定点数の100分の50を算定します。

さらに、長期投与に係る処方箋のうち、長期保存が困難等の理由により分割調剤を行った場合は、2回目以降の調剤について、1分割調剤につき5点を算定します。初めて後発医薬品を服用等する患者に分割調剤を行った場合は、2回目の調剤に限り5点を算定します。

それ以外の場合で、患者の服薬管理が困難である等の理由により、医師が処方時に指示した場合には、薬局で分割調剤を実施します(処方医は、処方箋の備考欄に分割日数および分割回数を記載する)。
2回目以降の調剤時は、患者の服薬状況等を確認し、処方医に対して情報提供を行います。この場合、調剤基本料、薬剤調製料および薬学管理料(服薬情報等提供料を除く)については、所定点数を分割回数で除した点数を1分割調剤につき算定します。

②薬剤調製料

薬剤調製料は、内服薬(浸煎薬および湯薬を除く)、屯服薬浸煎薬湯薬注射薬外用薬の6区分に分かれています。

内服薬の薬剤調製料は1剤を1単位とし、3剤までを限度として、投与日数にかかわらず1剤につき24点を算定します。
ただし、内服用滴剤を調剤した場合は、投薬日数にかかわらず1調剤につき10点を算定します。

屯服薬については、剤数にかかわらず21点を算定します。

浸煎薬については、3調剤までを限度として、1調剤につき190点を算定します。

湯薬については、3調剤までを限度として、7日分以下190点、8日分以上28日分以下は7日目以下190点で8日目以上は1日分につき10点、29日分以上400点を算定します。

注射薬については、調剤数にかかわらず26点を算定します。

外用薬については、3調剤までを限度として、1調剤につき10点とされています。

③加算料

加算料には、調剤基本料の加算として、地域支援体制加算、連携強化加算、後発医薬品調剤体制加算があります。

また、薬剤調製料の加算として、麻薬加算、向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算、時間外・休日・深夜加算、夜間・休日等加算、自家製剤加算、計量混合調剤加算、在宅患者調剤加算があります。

この他に、内服薬における嚥下困難者用製剤加算、また注射薬における無菌製剤処理加算が設けられています。

(2)薬学管理料


服薬指導を行う薬剤師

次に、医薬品についての情報提供や指導等に対する報酬が薬学管理料です。
薬学管理料には以下のものが定められています。カッコ内は設けられている加算です。

  • 調剤管理料(重複投薬・相互作用等防止加算、調剤管理加算、医療情報・システム基盤整備体制充実加算)

  • 服薬管理指導料(麻薬管理指導加算、特定薬剤管理指導加算、乳幼児服薬指導加算、小児特定加算、吸入薬指導加算、調剤後薬剤管理指導加算)

  • かかりつけ薬剤師指導料(麻薬管理指導加算、特定薬剤管理指導加算1・2、乳幼児服薬指導加算、小児特定加算)

  • かかりつけ薬剤師包括管理料

  • 外来服薬支援料

  • 服用薬剤調整支援料

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料(麻薬管理指導加算、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算、乳幼児加算、小児特定加算、在宅中心静脈栄養法加算)

  • 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料(麻薬管理指導加算、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算、乳幼児加算、小児特定加算、在宅中心静脈栄養法加算)

  • 在宅患者緊急時等共同指導料(麻薬管理指導加算、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算、乳幼児加算、小児特定加算、在宅中心静脈栄養法加算)

  • 退院時共同指導料

  • 服薬情報等提供料

  • 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料

  • 経管投薬支援料 

薬学管理料の例:服薬管理指導料

代表的な薬学管理料として、服薬管理指導料があげられます。
服薬管理指導料は、患者に対して次の指導等を行ったときに算定が可能です。

  1.  薬剤情報提供文書の提供、基本的な説明

  2. 服薬状況等の記録、必要な指導

  3. お薬手帳に調剤日、薬剤名、用法・用量その他必要事項を記載

  4. 残薬の確認にもとづく必要な指導

  5. 後発医薬品に関する情報提供

  6. 処方された薬剤の使用状況等を継続的に把握、必要な指導

これらすべてを対面で「原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合」は45点を算定します。ただし、お薬手帳を提示しない患者は59点を算定します。「初めて処方箋を持参した患者」や「3月を超えて再度処方箋を持参した患者」についても59点を算定します。

なお、情報通信機器を用いた「オンライン服薬指導」で上記の指導等を行った場合も服薬管理指導料の算定が可能です。

(3)薬剤料

さまざまな医薬品

医薬品の価格を点数にしたものが薬剤料です。
薬剤料は、薬剤調製料の所定単位につき使用薬剤の薬価が15円以下である場合は1点とし、15円を超える場合は10円又はその端数を増すごとに1点を加算します。

保険給付の対象となる医薬品の価格は、厚生労働大臣により定められています。これを「薬価基準」といい、医薬品の性質等と組み合わせて便利に参照できる書籍も市販されています(たとえば『薬効・薬価リスト』)。

(4)特定保険医療材料料

万年筆型注射器

特定保険医療材料の価格を点数にしたものが特定保険医療材料料です。
特定保険医療材料とは保険給付の対象となる医療材料で、たとえば患者さんが自宅で使う使い捨て注射器などが該当します。

処方箋により支給が認められている特定保険医療材料を保険薬局が支給した場合は、材料価格を10円で除して得た点数により算定します。
特定保険医療材料の価格は薬剤料と同様、「材料価格基準」として公定されています。

告示と通知

以上が調剤報酬の基本的なしくみであり、大部分は厚生労働大臣が定めた「告示」に書かれている規定です(上記とはかなり書きぶりが違います)。
ただし、告示で規定している内容だけで調剤報酬を算定することは現実的ではありません。

そこで、具体的な取扱いや補足的な事項は、当局(厚生労働省保険局医療課)が「通知」という形で示しています。


調剤明細書を見てみよう

保険薬局には領収証や明細書の発行が原則義務づけられています。領収証等の様式例が、次のように通知で示されています。

1 保険医療機関及び保険薬局に交付が義務付けられる領収証は、医科診療報酬及び歯科診療報酬にあっては点数表の各部単位で、調剤報酬にあっては点数表の各節単位で金額の内訳の分かるものとし、医科診療報酬については別紙様式1を、歯科診療報酬については別紙様式2を、調剤報酬については別紙様式3を標準とすること。
〔略〕
7 明細書については、療養の給付に係る一部負担金等の費用の算定の基礎となった項目(5の場合〔編注:一部負担金等の支払いがない〕にあっては、療養に要する費用の請求に係る計算の基礎となった項目)ごとに明細が記載されているものとし、具体的には、個別の診療報酬点数又は調剤報酬点数の算定項目(投薬等に係る薬剤又は保険医療材料の名称を含む。以下同じ。)が分かるものであること。なお、明細書の様式は別紙様式5を標準とするものであるが、このほか、診療報酬明細書又は調剤報酬明細書の様式を活用し、明細書としての発行年月日等の必要な情報を付した上で発行した場合にも、明細書が発行されたものとして取り扱うものとすること。
〔以下略〕

医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について(令和4年3月4日保発0304第2号)
別紙様式3:領収証
 別紙様式5:調剤明細書

薬局で会計をした際に渡される「調剤明細書」には、上図のように、調剤報酬の「調剤技術料」「薬学管理料」「薬剤料」といった項目ごとの点数が記載されています。

次回薬局で調剤を受けた際は、ぜひ、調剤明細書を確認してみてください。

書籍『調剤報酬点数表の解釈』

以上のような調剤報酬点数の算定や取扱いの根拠となる告示・通知を見やすいようまとめて編集した書籍が市販されており、当社(社会保険研究所)が発行している書籍『調剤報酬点数表の解釈』はその代表的なものといえます(この記事も同書を参考に作成しています)。

調剤報酬についてさらに詳細を知りたいという方には、調剤報酬の算定・請求に必要な情報を、実務上活用しやすいよう編集し、法令上の根拠とともに示している『調剤報酬点数表の解釈』をおすすめします。


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