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#2 経産省若手役人の提言「不安な個人、立ちすくむ国家」を読んでみた

香取 照幸(かとり てるゆき)/上智大学総合人間科学部教授、一般社団法人未来研究所臥龍代表理事

※この記事は、2017年5月31日に「Web年金時代」に掲載されたものです。

日本の友人からコメントを求められ…

何人かの日本の友人から、最近日本でネットを中心に話題になっているという経産省の若手の方々がとりまとめた報告書についてのコメントを求められました。

恥ずかしながらその報告書のことは知らなかったので、早速経産省のホームページに行き、「不安な個人、立ちすくむ国家」という件の資料を読みました。

五神真東大総長や松岡正剛編集工学研究所所長をはじめ、大沢真幸元京大教授、田中優子法大学長、藤原帰一東大教授(私の中高の同級生です)など、産業界のみならず幅広い分野の有識者と積極的な意見交換・ヒアリングを重ねてこれだけの報告書をとりまとめた経産省若手諸君の熱意と、それを支援した次官以下省幹部の見識は大いに評価されるべきです。

厚生労働省はじめ霞ヶ関の各省も是非見習ってほしいです。

加えて、いつもながら経産省諸兄の「発信力」「プレゼンテーション能力」の高さにも改めて感心しました。

「報告書」といわれていますが、公表されているものは長々しい文章ではなくパワポのプレゼン資料、そのパワポ資料の完成度、わかりやすさ、随所にちりばめられたキャッチフレーズなど、いずれも「人に読んでもらう」「関心を持ってもらう」ことを明確に意識した実に卓越した構成になっていますし、加えて、こういったテクニカルな点(もちろんそれはとても重要なことです)もさることながら、これを経産省の基幹審議会である「産業構造審議会」の「総会資料(公式資料)」として、しかもまずHPで―つまりネットで―公表し、FBやブログで拡散させていく、というのもなかなかの戦略です。

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