見出し画像

#8 どっちが先進国? アゼルバイジャンのIT事情【前編】

香取 照幸(かとり てるゆき)/上智大学総合人間科学部教授、一般社団法人未来研究所臥龍代表理事

※この記事は、2017年9月1日に「Web年金時代」に掲載されたものです。

みなさんこんにちは。今回はちょっと社会保障から離れて、IT/ICTのお話をしたいと思います。私がいうまでもなく、IT/ICTは社会のあらゆる分野に大きな変革をもたらし、そのありようを根底から変えてしまうような革命的な技術革新です。人々の価値観をさえ変えてしまうほどのインパクトがあります。

アゼルバイジャンはIT先進国

おそらく皆さんご存知ないと思いますが、実は、ここアゼルバイジャン、なかなかの「IT先進国」です。私も着任するまで全く知りませんでした。様々なIT技術が普及し、日常生活の中にしっかり定着していますし、それが実際に役に立っていることが実感できます。場面によっては日本よりも進んでいてどっちが先進国かわからないような感じさえします。

というわけで、まず、私たちの日常生活に最も身近なIT機器である「携帯電話(スマホ)」を例に、この国のITインフラ事情のお話をしたいと思います。

さて。

何よりも最初にお話ししなければならないのは、通話・通信料金の安さです。

ものすごく安い。本当に安いです。

こちらで契約している私の携帯電話。通話料金は国内電話で全国一律1分0.05マナト(3円弱)、国際電話は(相手国によって違いますが)最大でも1分0.3~0.4マナト(20円強)。データ通信は上限無制限で1ヶ月30マナト(2,000円弱)です。

固定電話は設置費が30マナト(2,000円弱)、市内電話はかけ放題月額2.5マナト(150円)、国内遠距離(市外)電話は1分0.05マナト(3円)、国際電話は1分0.32マナト(20円)、

といった具合です。

アメリカやヨーロッパの料金体系はよく知りませんが、日本との比較でいったら固定電話も携帯電話も本当にウソみたいに安い。しかも両者に差がほとんどない。そしてシンプル。なんとかパックのような(「有料の付加サービス」があれこれついてくる)複雑で面倒な仕組みはありません。

日本でも最近ではLINEモバイルとか関西電力のmineoとか格安料金のSIMも登場していますが、それでもアゼルバイジャンより高いし面倒で、利用者にそれなりのリテラシーがないと使いこなすのが難しい。

それに比べるとこの国の料金体系は実に安くてシンプル、とても使い勝手がいいです。

(っていうか、日本の通信料金ってどうしてあんなに高くて複雑なんでしょう? 誰か詳しい人がいたら教えてください。)

ここから先は

3,920字 / 2画像

¥ 100

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。