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日歯、骨太方針「国民皆歯科健診」の明記を評価(6月8日)

日本歯科医師会は6月8日、都内で会見を開き、骨太の方針2022に対する見解を発表した。骨太の方針に国民皆歯科健診の具体的な検討が明記されたことについて堀憲郎会長は、「生涯切れ目のない歯科健診の制度化の具体的な検討が始めることを期待している」と評価した。

7日に閣議決定された骨太の方針では、◇全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供◇生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的検討◇オーラルフレイル対策や疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実―などが盛り込まれた。

堀会長は、「本会が提言してきた内容のほぼすべてが反映された。歯科界が目指す『歯科医療と口腔健康管理の充実により、国民の健康寿命の延伸を図り、働き手や支え手を増やすことで人口減少問題にも貢献する』との方向性を国と共有していることを高く評価するとともに、関係各位のご尽力に深く感謝したい」と述べた。

特に「生涯を通じた歯科健診の充実」については「過去5年連続して骨太の方針に記載されてきたが、今回さらに『生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討』と明記されたことで実効性が増すものと受け止めている。これまで実施されている幼児歯科健診や学校歯科健診、歯周疾患検診に加え、妊産婦・大学生・労働者・成人期・高齢期における生涯切れ目のない歯科健診の制度化について具体的な検討が始まることを期待している」と述べた。

骨太の方針が決定される前に国民皆歯科健診が大きく報じられたことについては「正直驚いている。各方面に関心を持ってもらえることはありがたいが誤解が生じるおそれがある。それは歯科健診の義務化がすぐに始まることや歯科健診が医療費抑制の目的であることといったイメージが一人歩きすることを懸念している」と指摘。

骨太の方針2022への見解を述べる日本歯科医師会の堀憲郎会長=6月8日

その上で歯科健診の義務化については、「これから必要なこととして口腔と全身の健康の関係のエビデンスの精緻化、歯科健診の重要性のさらなる理解、健診の仕組みの検討やデータの標準化などまだまだ課題は多い。一つひとつ取り組んで議論を深化させることが必要であり、直ちに義務化の部分だけが議論されることはないと認識している」と述べた。

歯科健診の充実の目的については「口腔と全身の健康増進と健康寿命の延伸であり、医療費の削減は結果としての可能性であって目的ではない。歯の数が多いと医療費が低いというデータや歯周病の治療で糖尿病が改善するといった事例報告、口腔と全身の関係のエビデンスが示されているのはご承知のとおりで、歯科健診は歯科以外にも全身の健康にかかわると考えている。また、5年ほど前の経済財政諮問会議では入院患者に口腔機能管理を徹底することで入院期間が10%以上短縮するといったデータも示された。これらは医療現場の負担を減らし、医療ニーズの総量を減らす可能性があることに貢献することを期待している」と述べた。

オンライン資格確認義務化「現時点で賛成しかねる」

記者から国民皆歯科健診の実現時期が問われたことに対し、「まだ具体的な数値目標は確定していない」と述べた上で、「妊産婦、成人期、高齢期の健診はみんな違うところで実施しているが、それを上手く制度化するには相当時間がかかる。しかし、制度化できないまでも、いろいろなところで取組みが進むのであれば3~5年後を目途にすることも可能ではないか」との見通しを示した。

一方、骨太の方針にオンライン資格確認の原則義務化が明記されたことについては「対応できない医療機関に対する例外的措置や財政的支援、経過措置期間の設定といった配慮が明らかになっていない現時点では賛成しかねる。医療界として慎重な対応を求めていきたい」と反対した。  

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