認知症バリアフリーに向けた、バリアの解消は「困難」が7割(4月27日)
みずほ情報総研は4月27日、「認知症バリアフリー社会の実現等に関する調査研究事業報告書」を公表した。
全国の認知症地域支援推進員を対象に、認知症の人が、それまでの生活を継続し、本人の希望に沿った形で社会参加を続けていくことができる「認知症バリアフリー社会」に関して調査したところ、回答した7割がバリア(障壁)の解消が「難しい」と感じていることが分かった。
バリアの「解消ができる」は2割
同調査研究事業は、厚労省の補助事業によるもの。認知症バリアフリー社会に関して、全1741市区町村の認知症地域支援推進員を対象にアンケート調査を実施し、そのうち852自治体(48.9%)の1855人から回答を得た。
活動する地域でのバリアの状況等に対する評価を尋ねたところ、「その解消は難しいと感じている」が74.1%と最も多く、「解消ができると感じている」は22.4%に止まった。「障壁を感じることは少ない」はわずか0.6%。
認知症バリアフリーを進める上での課題について、「社会参加・働く場づくり」「買い物しやすい環境整備」「消費者被害の防止」など9つのテーマに分けて尋ねたところ、たとえば「社会参加・働く場づくり」について最も多かった回答は、「地域資源が少なくニーズとのマッチングが難しい。又は、できない」であり、35.5%。
認知症バリアフリーを進めていくうえでの優先順位について尋ねたところ、1位は「見守り機能」、2位は「住宅の確保・近所づきあい」、3位は「社会参加・働く場づくり」などの順となった。
認知症バリアフリー社会を実現していくうえでの課題等について地域で話し合いを行った実績については、「話し合いを行ったことはないが、今後話し合いを行いたい」が52.6%で最も多かった。「地域で話し合いを行った実績がある」は25.4%。「地域で話し合いを行った実績がある」との回答について、参加者及び参加機関についてみると、認知症の人は29.9%と3割にとどまった。
話し合いの内容について、認知症地域支援推進員の取り組みや自治体の施策への反映状況について尋ねたところ、「反映することができた」が69.1%、「反映することができなかった」が29.7%であった。認知症バリアフリーを実現していくうえでの課題としては、「当事者、家族のニーズの把握。発信・周知場所の機会づくり」が最も多く、120件であった。
当事者にとってのバリアの具体的な洗い出しを
加えて調査研究では、認知症の人へのインタビューや国内の先進事例の調査、イギリスにおける取り組みに関する文献調査などを実施した。
インタビューの対象は、若年性認知症や高次脳機能障害の人(男性2名・女性1名)。
9つのテーマごとに①どのようなバリアを体験しているか②個人としてどのように対処しているか③バリアフリーを進める上で希望すること─について尋ねた。
たとえば「預貯金の出し入れ」については、「支店のATMのようにサポートしてくれる人がいるととても助かる」「操作をシンプルにしてほしい。ICカードのチャージのように、金額ボタンだけ押せば引き出せるようなものがあると良いのではないか」「同じものを買ってしまうことが続いた時期もあったため、安全装置して口座を分けて対処した」などの回答が寄せられた。
こうしたことを踏まえ、報告書では、「当事者にとってのバリアを具体的に洗い出し、その克服方法を把握していくことは、認知症バリアフリー社会の実現に向けた取組みの第一歩」と指摘。さらに「当事者や家族が、毎回多大な労力を払っている対処方法を、少しでも簡便にできるような支援や技術のあり方を検討することも大事な取組み」としている。
国内の先進事例では、日用品の買い物に関する支援や、百貨店での工夫、公立図書館での配慮などが紹介された。