三宅社労士の年金実務セミナー|#1 繰下げ制度の改正と未解決点について
令和3年4月から高年齢者雇用安定法により、70歳までの雇用措置が企業の努力義務となりました。また、令和4年4月からは年金法の改正により、年金は75歳まで繰下げて受給ができるようになります。
これらのことから、今後は年金の繰下げ受給をする方が増えてくるものと思われます。今一度、繰下げ受給のしくみと注意点、改正による変更点をまとめてみました。また、改正後も繰下げ制度の恩恵を受けられない例が散見されますので、この制度改正の未解決点についても考えてみました。
(1)繰上げ受給と繰下げ受給のしくみ
まずは、繰上げ受給と繰下げ受給のしくみについて簡単に説明します。
公的年金の受給開始時期は、原則として、個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができます 。65歳より早く受給開始した場合(繰上げ受給)には、年金額は減額(1月あたり▲0.5%、最大▲30%)され、66歳より後に受給開始した場合(繰下げ受給)には、年金額は増額(1月あたり+0.7%、最大+42%)されます。
図表1 繰上げ・繰下げ受給率(現行)
令和4年4月から繰下げ受給制度について、高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう、より柔軟で使いやすいものとするために見直されます。
具体的には、現行70歳の繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられます。よって、受給開始時期は60歳から75歳の間で選択可能になります。ただし、改正後の繰下げ受給の対象者は、改正法施行時点で70歳未満の人(昭和27年4月2日以降生まれ)で、年金を受給していない人になります。また、繰下げ増額率は1月あたり+0.7%(最大+84%)となります。一方、繰上げ受給については、減額率が1月あたり▲0.4%(最大▲24%)になり、昭和37年4月2日以降生まれの人に適用される予定です。
また、75歳以降に繰下げ申出を行った場合、75歳に繰下げ申出があったものとして年金が支給されます。
図表2 改正後の繰上げ・繰下げ受給率[▢部分が改正部分]
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