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2040年を見据えた基本指針の議論を開始——第90回社会保障審議会介護保険部会(2月21日)


介護保険部会が第8期計画の基本指針案について議論

社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫部会長)は2月21日、2021年度から開始する第8期介護保険事業(支援)計画の基本指針案に盛り込む事項について厚労省から説明を受け、議論を行った。

厚労省は2025年に止まらず2040年も見据えた基盤整備を進めることを提示した。今般の意見を踏まえて基本指針案を固めて再度、部会から意見を求め、そのうえで6月を目途に都道府県等に示す方向だ。

2040年までを見据えた基盤整備を進める

厚労省は、昨年12月にまとまった介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」を踏まえ、第8期基本指針で充実する事項として大きく6項目を示した。

具体的に、➀2025年・2040年を見据えた介護サービス基盤、人的基盤の整備②地域共生社会の実現③介護予防・健康づくり施策の充実・推進④有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化⑤認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の推進⑥介護人材確保及び業務効率化の取り組みの強化─の6つ。

このうち①2025年・2040年を見据えた基盤整備では、地域ごとの推計人口等から導かれる介護需要等を踏まえて計画を策定する考えを示した。

介護療養型医療施設の設置期限は第8期計画の終わりの2023年度末までであり、介護医療院への転換等を進めるための具体的な方策について記載する。

介護を理由に離職せざる得ない人を生じさせない「介護離職ゼロ」の実現に向けた基盤整備や、医療計画・地域医療構想との整合性を踏まえる必要がある旨について第7期基本方針に引き続いて盛り込む。 基盤整備に当たっては、2020年度予算案で地域医療介護総合確保基金のメニューを拡充し支援することも説明した。

②地域共生社会の実現では、複合的な課題にも対応する市町村における包括的な支援体制の整備等について記載する。包括的な支援体制の構築のための新たな事業の創設については今通常国会に提出される社会福祉法等改正法案に盛り込まれる。

リハビリテーションの目標を設定

③介護予防・健康づくり施策の充実・推進では、次のようなことを記載する。

  • 要介護者(要支援者)に対するリハビリテーションの目標

  • 一般介護予防事業についてPDCAサイクルに沿った推進や専門職の関与、他の事業との連携

  • 総合事業の対象者や単価の弾力化

  • 保険者機能強化推進交付金等を活用した施策の充実・推進

  • PDCAサイクルに沿った推進に当たりデータの利活用とその環境の整備

要介護者(要支援者)に対するリハビリテーションの目標については、厚労省が示す指標を参考に定める。 そのため厚労省は2020年度に調査研究事業を実施し、検討会を立ち上げ、指標の作成を進める。指標としては、ストラクチャー・プロセス・アウトカムを想定しており、アウトカムでは要介護度の改善度やリハビリテーションの終了人数などが考えられている。調査研究事業では、計画担当者向けの手引きも作成する。 また、2021年度介護報酬改定の議論に向け、直近のリハビリテーションの実態を把握するための実態調査を実施する。

一般介護予防事業と他の事業の連携の1つとして、「高齢者の保健事業と一般介護予防事業等との一体的な実施」について市町村・都道府県の任意記載事項として新設される。

④有料老人ホームとサ高住に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化としては、具体的に住宅型老人ホーム及びサ高住の設置状況を記載することや、設置状況を勘案した計画策定を行うことを盛りこむ。

⑤認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の推進では、大綱の5つの柱に基づき、普及啓発の取り組みやチームオレンジの設置、通いの場の拡充等について記載する。

⑥人材確保及び業務効率化の取り組みの強化としては次のようなことを盛りこむ。

  • 介護現場における業務仕分けやロボット・ICTの活用、元気高齢者の参入による業務改善の具体的な方策

  • ポイント制度や有償ボランティアなど総合事業等の担い手の確保に関する取り組み

  • 要介護認定を行う体制の計画的な整備の重要性

  • 文書負担軽減に向けた具体的な取り組み

意見交換では、複数の委員がPDCAサイクルに沿った取り組みの促進に言及した。

また▽特養等の入所待機者を正確に把握した上での基盤整備▽介護離職ゼロに向けた相談支援体制の充実▽介護人材の確保における数値目標の記載▽介護療養型医療施設から介護医療院への転換支援策の継続の検討─なども指摘された。

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