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外国人介護人材の人員配置基準上の取り扱いを議論(8月26日)

厚労省は8月26日、社会保障審議会の介護給付費分科会(田中滋分科会長)に、外国人介護人材の人員配置基準上の取り扱いについて意見を求めた。委員からは、きちんと実態把握をした上で検討する必要があるなどの慎重な意見が出された。

日本で働く外国人介護人材には、EPA(経済連携協定)、技能実習介護、特定技能1号、在留資格「介護」があり、人員配置基準上の現状の取り扱いは、EPAと技能実習は、就労または実習が始まって6か月経過後、特定技能と在留資格「介護」は即時算入される。

厚労省は、単に人手不足対策ととられてはならないとしつつ、このうちEPAと技能実習介護についても、一定の要件のもと、就労開始直後から人員配置基準に算入することを提案した。厚労省が提案する要件は以下のとおり。

  • 受け入れ先の施設を運営する法人の理事会で審議・承認するなど、適切かつ透明性の高いプロセスを経ること

  • 上記プロセスを経て外国人介護人材の受け入れを実施することについて、都道府県等に報告すること

  • 厚労省から、都道府県および事業者等に対し、就労後6か月未満の外国人介護人材について、次を周知する

    • 1)報酬額を、日本人が従事する場合と同等以上にする必要がある旨

    • 2)他の従業者と同様に、介護保険法に基づく介護サービスの実施状況等に対する運営指導(介護保険施設等指導指針等に基づく指導)を行う必要がある旨

厚労省は、外国人介護人材の就労実態として、令和3年度老人保健健康増進等事業で行った利用者の評価や受け入れ事業者の考え方等の調査結果についても示した。




委員の賛否は分かれた。

反対を表明した連合の小林司委員は、利用者の介護サービス満足度や働きぶりのアンケートについて、調査対象となっているEPA介護福祉士候補者のN数が42人、技能実習生は6人と少なく信頼性に欠けることを指摘。また、即時算入することで「他の介護職員の負担増やそれによってケアの質の低下、専門性の向上を妨げることも懸念される」と述べた。

利用者のアンケート結果については、日本介護福祉士会の及川ゆりこ委員も、「利用者の方に不安や不満足感を抱くことがないように、介護施設や介護事業所では介護職員たちがフォローしているはず」として、このアンケート結果をもって検討することは難しいとした。

認知症の人と家族の会の鎌田松代委員は、「日本に来てすぐ人員配置基準にカウントされることは家族的にはとても不安。事業所のアンケート結果も、現行どおり6か月以上でいいと6割が回答しており、なんらかの不安があってのことではないか」と述べた。また外国人介護人材の実態把握の必要性を指摘した。

日本医師会の江澤和彦委員は、「見直しの方向性を検討するのであれば、受け入れ施設の動機や技能実習生の賃金を含む処遇状況、受け入れ施設の初期費用、ランニングコスト、監理団体の実態等の調査を徹底して行った後に検討をするというのが本筋ではないか」と訴えた。

一方、賛成する意見として、日本慢性期医療協会の田中志子委員は、「日本人で介護の経験がない人が入ったとき、外国人と変わりがないくらい教育が必要。いきなり直接介護に関わるわけではなく、周辺業務から関わることがほとんどだと思う。不安なく現場で育成できる」との考えを示した。ただ、アンケートのN数が少ないなど、データの取り方に関しては疑問を呈した。

日本介護支援専門員協会の濵田和則委員は、「日本人は経験や雇用形態に関わらず人員配置基準に算入できること。またEPAや技能実習生は日本語や介護の技能については一定程度の要件が課されていること。さらに近年の介護福祉士養成施設や大学等での留学生の割合を考えると、今後は外国人を区別するよりは、日本人を雇用する場合と同様の扱いとすることが望ましい」との考えを述べた。

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