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謎の新興国アゼルバイジャンから|#47 伝える力(上)社会保障を理解するということ

香取 照幸(かとり てるゆき)/アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使(原稿執筆当時)

*この記事は2019年5月23日に「Web年金時代」に掲載されました。

本稿は外務省とも在アゼルバイジャン日本国大使館とも一切関係がありません。全て筆者個人の意見を筆者個人の責任で書いているものです。内容についてのご意見・照会等は全て編集部経由で筆者個人にお寄せ下さい。どうぞよろしくお願いします。

みなさんこんにちは。令和元年最初の連載です。

はじめに近況報告を少し。
今回は「大使夫人の活動」の紹介です。

最近は外交官の配偶者も仕事を持っている方が多くなったので、各国とも単身で赴任される館員が多くなっています。
当地の各国大使館や国際機関代表部の話を聞いても、職員の家族が常に帯同している、という人はもはや多数派とは言えないようです。

公館長である各国大使や国際機関代表の場合も同様で、単身で赴任している方、配偶者が仕事を持っていてその関係で本国や勤務地と任国の間を定期的に行き来している方、当地の大学や出身国関係機関・企業、国際機関に勤務されている方など、様々です。

外交官同士のカップルも結構いらっしゃいます。このケースだと、同じ任地に配属するよう本国が人事で配慮している国はかなりあります。
以前おられたEU代表部大使(女性)はスウェーデン人でしたが、夫君は(財務省出身でしたが)当地のスウェーデン代理大使として勤務されていましたし、今回新しく赴任されたアルゼンチン大使の夫人はやはり外交官ですが、これまで基本的に夫君の任国に配属されて一緒に勤務してきたとのことで、今回も、夫君の赴任時期は少しずれますが秋には前任地であるアメリカから当地のアルゼンチン大使館に経済担当アタッシェとして赴任し、一緒に勤務する予定と話されていました。
他にもポーランドの次席と文化担当はご夫婦ですし、館員同士のカップルであれば探せば結構ありそうに思います。

さて、そんな中で「大使夫人」たちは任国でどんな活動をしているのでしょうか。
もちろん、大使館の公的業務や館内での大使の日常業務に夫人が関わることは基本的にありません。
他方、外交団のおつきあいは基本的にカップルが原則です。任国政府主催のイベントでもカップルで招待されることが多くあります。各国主催のレセプション、文化行事、各国大使公邸で開催されるディナーやパーティなどの招待状には「ambassador and spouse」と書かれているのが通例です。同様に、日本大使公邸で外交団を招いて行う公的行事や会食も招待状が「大使と大使夫人」の名前で出されますから、大使夫人も同席して接遇役(ホステス役)を務める、ということになります。
なので、例えば以前にこの連載で書いたような「パーティの作法」は大使夫人もマスターしていないといけないことになります(!)。

大使夫人同士のおつきあい、というか活動というのも当然あります。
当地には大使・国際機関代表の配偶者で構成される「HOMS Group:Head of Missions’ Spouses」という親睦組織があります。常駐の配偶者はもちろん、「パートタイム駐在」の配偶者もメンバーで、当地滞在中に参加するという形で皆さん活動されています。
日本大使夫人は昨年春に退官したのを機会に昨夏から当地に帯同赴任しましたので、HOMSの常駐メンバーになりました。

ここアゼルバイジャンは外交団の結束が固い、というお話を前にしましたが、このHOMSの結束もまた非常に強く、これまた以前にご紹介した年に一度のチャリティワインガラディナーをはじめ、文化活動、民間の福祉施設や病院の訪問・支援、国連の女性自立支援活動(AZRIP)とのコラボなど、各国大使館・国際機関の公的活動とは別に様々な独自の活動を展開しています。
というわけで、大使同様、当地で初めての「外交官夫人経験」をしている日本国大使夫人も結構忙しくいろいろな活動に参加しています。

アゼルバイジャン外務省主催の外交団(+HOMS)地方視察で
ギョイギョル(Goygol)地方の幼稚園を訪問したときの様子。
民族舞踊の熱烈歓迎を受けました。

このHOMSですが、例年、ノブルズ明けの時期に、アリエヴァ第一副大統領(大統領夫人、つまりファーストレディ)が日頃の外交団・HOMSの活動へのお礼をかねて、女性大使とHOMSメンバーを招いて盛大なレセプションを開催します。
今年も3月28日にレセプションが開催されました。

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