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マイナンバー制度の活用で医療系資格の届出手続きの簡素化などを促進(10月20日)

厚生労働省は10月20日、「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」の初会合を開催した。検討会は、医療・介護などの関係団体や学識者で構成され、座長には、田中滋・埼玉県立大学理事長が選出された。

マイナンバー制度を活用しての医療・介護資格などの届出手続きの簡素化や人材確保への利用などについて検討し、年内に報告書を取りまとめる予定だ。この報告書や他の省庁での検討状況も踏まえ、政府は来年の通常国会にマイナンバー法の改正案の提出を目指す。


対象は当面31職種、令和6年度からの導入を目指す

7月に閣議決定された骨太方針2020及び「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」において、各種免許・国家資格、教育等におけるマイナンバー制度の利活用について検討し、必要に応じて共通機能をクラウド上に構築することが盛り込まれている。また基本計画では、地域における看護や介護の担い手の確保などの観点からITを活用した有資格者の掘り起こしについて検討することとされている。

政府は、マイナポータル等と連携した「国家資格等管理システム」(仮称)を導入し、令和6年度からの運用開始を目指す。

こうした状況を受け、検討会では、▽社会保障に係る資格におけるマイナンバーとの情報連携等に関する利活用策や、▽マイナポータルを活用した資格情報の閲覧や人材確保策など更なる利活用策について議論を深めていく。

対象資格は、医師や歯科医師、薬剤師、看護師、介護福祉士、社会保険労務士など31職種。ただ今後の政府全体の議論等を踏まえ、対象資格の拡大も随時、検討する。

登録の申請や変更をマイナポータルで完結

厚労省は、主な論点として①届出の簡素化及びオンライン化②マイナポータルを活用した資格所持の証明・提示③マイナンバー制度を利活用した資格管理簿と就業届等の情報の突合による人材活用─の3点を示した。

まず①届出の簡素化及びオンライン化では、登録の申請時(免許取得時)や登録事項の変更時、死亡時での効率化等を図る。

現在、たとえば医療系資格の免許証の取得では、申請書や戸籍抄(謄)本又は住民票の写し、診断書、合格証明書、収入印紙などを資格取得者が保健所等に持参する。免許証の交付も対面で行われている。

これについて、マイナンバーを提供する場合は戸籍抄(謄)本又は住民票の写しの提出を省略できるようにする。さらにマイナンバーカードを所持している場合はマイナポータルで申請手続きを完了できるようにする。マイナポータルの公金決済機能を活用して登録免許税・手数料も納付できる。国家試験の合格証明書は、申請書に国家試験の施行年月や受験番号、受験地を記載することで添付を省略。免許証等は郵送する考えだ。医療系資格の一部で診断書原本の提出が必要になるため電子情報による発行の普及を図る。

登録事項の変更でも、マイナンバーを提供する場合は住民票等の写しの提出は省略。マイナポータルで完結できるようにする。登録事項の変更後、登録済証明書を全員に発行することとし、免許証等の書き換えは希望者のみとする。法令順守の観点から、1年に1回の頻度で、住基ネットを運営する地方公共団体システム機構に資格者情報を照会し、必要な届出がなされていない有資格者には届出を勧奨する。

将来的に、氏名・本籍地等の変更を自動的に把握できるシステムの整備が可能となれば、届出の手続き自体を不要とすることも検討する。

本人の死亡時の届出制度については残す。他方でマイナンバーを持っている人については、地方公共団体システム機構等に照会することで、死亡情報の提供を受けることが可能であることから、職権での登録原簿の抹消を行うこととする。厚労省は1年に一回など定期的に照会をかけることを考えている。免許証等の返還は求めない。

②マイナポータルを活用した資格所持の証明・提示では、パソコンやスマホからマイナポータルにログインした後、資格所持者が当該資格情報を照会し、第三者に提示できるようにする。

この機能は、マイナンバーカード保有者のみが利用できる。必要性の高い資格から順次導入する。

潜在看護職の効果的な就労支援にも活用

③マイナンバー制度を利活用した資格管理簿と就業届等の情報の突合による人材活用では、資格保有者が定期的に届け出る就業状況と連携することで、潜在資格者の的確な特定と、効果的な就労支援につなげる。離職時の届出が努力義務化されている看護職でまず導入を進める考え。就業状況等の届出においてマイナポータルの活用を検討している。地方公共団体情報システム機構から住所情報を得て、離職中の看護職の研修歴や居住地に応じた求人情報を提供して、人材確保につなげていくことを考えている。

就業状況等の届出先は現行通り都道府県とし、国と都道府県が共通のサーバーを通して情報の共有化を図ることを想定している。

その他、厚労省は、マイナンバーの登録方法について説明。新規資格取得者の場合各資格の免許証等の申請書の提出時にマイナンバーの登録を求めていく。また資格保持者の場合、施行後に国がマイナンバーの登録の呼びかけを行う。変更申請の際には、合わせてマインバーの登録を求める。定期的な届出や離職時に届出を行う資格はその際に登録を求めていく。

また厚労省は、関係団体に対してマイナンバー制度の利活用に関する意向調査を行うことを説明した。

第2回会合では、意向調査の結果が報告されるとともに、検討会に参加している関係団体からヒアリングを実施し、意見交換を行うとしている。さらに11月下旬から12月上旬を目途に開催する第3回で報告書案を検討する予定だ。

意見交換では、構成員からマインバー制度の活用には概ね賛同が得られた。また免許証のデジタル化の検討を求める意見や、免許証の受け取り時等の本人の「なりすまし」を懸念する声が上がった。

検討会の構成員は次の通り(五十音順)。▽秋山智弥(日本看護協会副会長)▽石倉正仁(全国社会保険労務士会連合会副会長)▽今村文典(日本介護福祉士会副会長)▽宇佐美伸治(日本歯科医師会常務理事)▽小野太一(政策研究大学院大学教授)▽神成淳司(慶應義塾大学環境情報学部教授)▽田中滋▽長島公之(日本医師会常任理事)▽樋口範雄(武蔵野大学法学部特任教授)▽松本純夫(国立病院機構東京医療センター名誉院長)▽渡邊大記(日本薬剤師会常務理事)

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