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三宅社労士の年金セミナー|#11 在職中の繰下げ受給~65歳以降も高収入な場合

三宅明彦(みやけ あきひこ)/社会保険労務士

最近は65歳以降も働ける環境が整いつつあり、年金を繰下げ受給する方が増えてきています。しかし、65歳以降に高収入の場合は、在職老齢年金のしくみによる「在職停止を除いた部分のみ」が繰下げ増額の対象になることを正しく理解していない方も見受けられます。

そこで、わかりやすいケースとして、65歳以降に年金の一部が在職停止されている方が68歳に会社を退職し、70歳から繰下げ受給をすると、年金はどのようになるのか、相談事例をもとに説明していきたいと思います。

相談事例

(昭和33年2月生まれ・男・64歳)
私は今年の2月で65歳になります。現在まで厚生年金に約43年加入し、給与が高いために年金は一部支給停止になっています。現在の給与は月額50万円で賞与はありません。私はこのまま68歳まで働くつもりで、給与は今後も変わらない予定です。
65歳になると老齢基礎年金と老齢厚生年金がもらえるとのことですが、給与収入があるので年金は繰下げ受給をしたいと考えています。
退職する68歳で繰下げ受給する場合の年金額と、退職してから70歳まで待って受給する場合の年金額、また繰下げ受給する際の手続きについて教えて下さい。
なお、私の65歳からの年金額は、老齢厚生年金が年額約144万円、経過的加算が年額約6万円、老齢基礎年金が年額約75万円、合計で年額約225万円になります。

繰下げの手続について

まず、手続きについて説明します。現在、特別支給の老齢厚生年金(一部支給停止)を受給中とのことなので、65歳になると65歳時の諸変更裁定請求手続(特別支給の老齢厚生年金から本来の老齢厚生年金・老齢基礎年金に切り替える手続)をします。

65歳になる誕生月の初めに日本年金機構から「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」というハガキ様式の書類が送付されます。このハガキの下部に繰下げ希望欄がありますので、この欄に繰下げ受給の意思を記載します。

〇繰下げ希望しない場合は、何も記入をせずに提出(郵送)します。
〇老齢基礎年金の繰下げを希望する場合は、老齢基礎年金の欄に○印をつけて提出します。
〇老齢厚生年金を繰下げ希望する場合は、老齢厚生年金の欄に○印をつけて提出をします。
〇老齢基礎・厚生年金の両方を繰下げ希望する場合は、ハガキを提出しません。

なお、老齢厚生年金を繰下げ希望する場合に、厚生年金基金加入期間がある場合は、厚生年金基金の代行給付(報酬比例部分)も繰下げ扱いになりますので、別途、厚生年金基金にも連絡が必要です。
 
この手続により、繰下げを希望した年金が支給されなくなります。その後、年金を受給したい年齢になったら、繰下げ請求をします。「老齢基礎・老齢厚生年金支給繰下げ請求書」(様式235号)に年金証書等を添付して、住所地の年金事務所に提出します。

繰下げ請求をした翌月から増額された年金が受給できます。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰下げ受給する場合には、その都度、提出が必要です。

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