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【詳解】第77回社会保障審議会介護保険部会(5月23日)

介護サービス基盤の整備などを議論

社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫部会長)は5月23日、介護保険制度改正に向け、介護サービス基盤の整備等について意見交換を行った。また厚労省は介護分野の文書の簡素化等に向けワーキング・グループを設置することを示した。

85歳以上の急増等を踏まえ基盤整備

厚労省は、認定率や1人当たり介護給付費が特に85歳以上で急増するため、その割合の動向が、今後の介護サービス基盤の整備等を検討する上で重要になることを指摘。2025年にかけて85歳以上の高齢者数は全都道府県で増加する見通しなどを提示した(図表1-8)。

▲図表1 今後の高齢化の進展等に伴う課題について(検討の視点)
▲図表2 今後の高齢化の進展と介護サービスの基盤整備について①
▲図表3 今後の高齢化の進展と介護サービスの基盤整備について②
▲図表4 今後の介護保険をとりまく状況(1)
▲図表5 今後の介護保険をとりまく状況(2)
▲図表6 年齢階級別にみた要介護認定率(平成29年度)
▲図表7 サービス類型別の利用割合(年齢階級別)
▲図表8 都道府県別の高齢化の状況の推移(85歳以上高齢者割合)

また第8期介護保険事業計画の策定では、①介護離職ゼロに対応した整備量の上乗せ、②地域医療構想による病床の機能分化・連携に伴う介護サービスへの整備、③介護予防等の取り組み状況を踏まえて行うことになることを紹介した(図表9)。

▲図表9 今後の高齢化の進展と介護サービスの基盤整備について③

その上で、▽85歳以上や中重度の高齢者に地域差があることを踏まえ、2025年を見据え、介護の受け皿を計画的に整備していくための方策▽介護離職ゼロの実現に向けた取り組みを効果的に進める観点からの基盤整備▽医療・介護の役割分担と連携を一層推進する観点からの介護サービスに求められる役割▽介護医療院への介護療養病床等の円滑な転換に向けた第7期計画期間における対応及び第8期計画期間に更に求められる取り組み─など多岐にわたる論点を示した(図表10-14)。

▲図表11 地域包括ケアシステムの推進について①
▲図表12 地域包括ケアシステムの推進について②
▲図表13 地域包括ケアシステムの推進について③
▲図表14 地域包括ケアシステムの推進について④

また厚労省は今年3月末時点での介護医療院の開設状況を報告した(図表15)。3月末時点で150施設・1万28療養床で、転換元の病床割合は介護療養病床が最も多く、65.8%(97施設・6602床)、介護療養型老健施設18.3%(31施設・1833床)、医療療養病床15.8%(45施設・1589床)となっていることを示した。なお介護療養病床は2019年1月末時点で981施設・4万968床あり、2023年度までの転換等が法律で決まっている。

▲図表15 介護医療院の開設状況

移行定着支援加算の効果に疑問

日本医師会の江澤和彦委員は、「介護保険事業計画は長期の視点での策定が求められる」として、2040年までを見据えての計画策定を要請。さらに事業者は長期返済の借り入れをして施設整備を行うことから配慮を求めた。

介護医療院について「医療療養病床からの移行が市町村財政にどういう影響を及ぼしているのか」と指摘。負担が大きい場合の国による支援の必要性に言及した。

さらに2018年度介護報酬改定効果検証の調査で、調査時点の病床から2023年度末で変更が無い施設に理由を聞いたら、介護療養病床では「2021年度介護報酬改定の結果を見て判断する」との回答が4割に上ったことに言及。「移行定着支援加算はあまり効果が無かったのではないか」と指摘した。

健保連の河本滋史委員は、介護医療院が1万床を超えたことに触れ、転換の進行の評価と今後の転換方針について質した。

また団塊の世代が第8期計画の途中の2022年度から後期高齢者に入り始めることから、要介護の高い利用者に「ウェイトをかけていくべき」とし、給付の重点化・効率化を求めた。

河本委員の質問に対し、厚労省は、介護医療院がゼロの都道府県があることを指摘(上記図表15)。今回示したものが3月末までのもので、「4月1日に開設している施設も結構あると聞いている」とし、今後とも詳細を把握することを説明した。また転換に向け支援していく考えを強調した。

他方、複数の委員が介護人材の確保に言及した。

全国町村会の藤原忠彦委員は、山間へき地での慢性的な人材不足の問題を訴え、「支える人がいなくなる現実があり、地域内で完結できなくなっている」とし、「福祉人材の地方への派遣機構」をつくることを要望した。

日本介護支援専門員協会の濱田和則委員は、人口減少が激しい地域において、実績のある事業者・法人に、指定管理や業務委託で地域占有を認める代わりにサービス提供も義務付けることの検討を提案した。

文書軽減でWG設置を提案

厚労省は「介護分野の文書に係る負担軽減に関するワーキング・グループ(仮称)」の設置を提案した。

→「介護分野の文書に係る負担軽減に関するワーキング・グループ(仮称)の設置について」【PDF】

昨年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」で介護分野の文書の削減の方向性が掲げられ、厚労省でも順次、進めてきた(図表16-19)。

▲図表16 「未来投資戦略2018」(抜粋)
▲図表17 文書量半減の取組
▲図表18 介護サービス事業者等の事務負担軽減に向けた取組
▲図表19 (参考)実地指導における文書量の削減

今回、国や指定権者・保険者及び介護サービス事業者の間でやり取りされている文書を対象とし、必要に応じて更なる共通化・簡素化の方策を検討する。様式例の見直しなどを進める考え。

具体的に、①指定申請②報酬請求③指導監査─の関連文書を対象とする。さらに自治体により解釈が分かれ、独自の文書の提出が求められることがある。そうした件も対象とする。なお介護報酬の要件等に関連する事項は介護給付費分科会で検討する。

6月にワーキングの構成メンバーなどを含めた設置要綱を決定し、2~3回議論を行い、12月に中間とりまとめを行い当面の方針を固める。

全国老人福祉施設協議会の桝田和平委員は、地域密着型サービスの指定申請において各市町村で新しい様式をつくっている点を指摘。また「国が指定申請で定款をつけなくていいとしていても、定款をつけなくていい自治体はほとんどない」とした。

介護職員処遇改善加算では届出書添付書類において、介護職員の氏名と年収の提出を求める自治体が多く、そうした事項も職員に向け周知が求められることを指摘。

10月に導入する介護職員特定処遇改善加算では、経験・技能のある介護職員について年収440万円のものを設定・確保することから「名前と年収を書いて出しなさいというところがいっぱい出てくるのではないか」として、プライバシーへの配慮も求めた。

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