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年齢上がるほど公的年金に期待ー『令和4年社会保障に関する意識調査報告書』の結果公表ー

厚生労働省は8月27日、「令和4年社会保障に関する意識調査~社会保障における公的・私的サービス~」の結果を公表した。これによると、民間の医療保険や介護保険に加入している者の割合は73.4%で、平成27年に行われた前回調査より1.3%増加している。一方で、「保険料を払えないから」という理由で、医療保険、介護保険ともに加入していない割合は43.2%で、年齢階級が低く、等価所得階級別が200万円未満の層でこの割合が顕著だった。
今後の老後の生活を支える年金給付等のあり方については、「公的年金に要する税や社会保険料の負担が増加しても、老後の生活は公的年金のみで充足できるだけの水準を確保すべき」という回答が20~29歳では29.0%であるのに対し、70歳以上では50.6%となっており、年齢が上がるにつれ、公的年金に期待する割合が高くなっていることが窺える。

厚生労働省が8月27日に公表した「令和4年社会保障に関する意識調査~社会保障における公的・私的サービス~」は、「2022(令和4)年国民生活基礎調査」の対象単位区から無作為に抽出した360単位区内のすべての世帯の20歳以上の世帯員を対象に2022年7月に実施したもの。調査客体の10,493人のうち7,128人の有効回答を集計した。

(1)民間の医療・介護保険の加入状況について
民間の医療保険や介護保険に加入している割合は73.4%。前回調査(平成27年)の加入者割合(72.1%)より1.3%増加となっている。
前回調査(平成27年)の加入者(72.1%)より1.3%増加した。

年齢階級別にみると、医療保険、介護保険ともに加入している割合は、40~49歳、50~59歳の年齢階級でもっとも高くなっている。

民間の医療保険か介護保険のいずれかに加入している者のうち、医療保険のみに加入している者は64.9%、介護保険のみ加入者は1.6%となっている。医療保険・介護保険の両方に加入している者は33.5%だった。
医療保険・介護保険の両方に加入している者がもっとも多い年齢階級は40~49歳の38.0%となっている。


全年齢階級を通して、医療保険のみ加入している人に比べ、介護保険のっみに加入している人が少ないことがわかる。

民間の医療保険や介護保険に加入している(「両方に加入している」、「民間の医療保険のみ加入している」、「民間の介護保険のみ加入している」)者の加入理由は、「公的医療保険や公的介護保険の自己負担分を補うため」が最も多く 56.8%、次いで「治りにくい病気にかかり治療が長期化することに備えて」が 44.5%、「公的医療保険で賄えない高度の医療や投薬を受けるかもしれないから」が 34.6%となっている。

「家族や友人に勧められたから」、「勧誘されたから」以外の回答をみると、将来の金銭的な不安を解消するために医療保険や介護保険に加入する人が多いことが窺える。

一方で、民間の医療保険や介護保険に加入していない(「両方に加入していない」)者を対象に、加入していない理由(複数回答)をみると、「保険料を払えないから」が最も多く43.2%となっており、次いで「公的医療保険や公的介護保険に満足(信用)しているから」が35.7%となっている。

貯蓄や自費で足りると思っているから」という理由を挙げた割合を見ると、総数では12.8%だが、男性(15.1%)の割合の方が、女性(10.8%)の割合より多くなっている。

等価所得階級別に「民間の医療保険や介護保険に加入していない1番の理由」を見ると、400万円未満では「保険料を払えないから」を理由に挙げている割合がもっとも高く、30%以上となっており、100万円~200万円未満では、45.6%が同理由を挙げている。
一方で、800万円~1,000万円未満では、「貯蓄や自費で足りると思っているから」という理由が25%で、「保険料を払えないから」(20.0%)を上回っている。


等価所得1000万円以上の回答で、「保険料を払えないから」(18.2%)、「貯蓄や自費で足りると思っているから」(18.2%)が同じ割合になっている。

(2)個人年金への加入状況
民間の個人年金加入者は29.5%、未加入者は69.5%で、未加入者の方が多いという結果になった。年齢階級別にみると、20~29歳の79.1%が「加入していない」と答えており、30歳を過ぎると、加入者の割合が増えてくる。

年齢階級をみると、20~29歳代が「加入していない」と回答した割合がもっとも高い。

等価所得階級別では、所得が増えるほど「加入している」が多くなり、1,000万円以上では45.8%となっている。

等価所得階級別では、所得が増えるほど「加入している」が多くなり、1,000万円以上では45.8%となっている

個人年金に加入していない者の理由(複数回答)をみると、「保険料を払えないから」(50.4%)がもっとも多く、「公的年金制度に満足(信用)しているから」(21.0%)、「将来のことは分からず、今のほうが大事だと思っているから」(18.7%)、「個人年金の商品を知らないから」(15.7%)、「貯蓄や自費で足りると思っているから」(10.3%)と続き、「勤務先の企業年金や確定拠出年金などに加入しているから」(8.3%)を上回っている。

「勤務先の企業年金や確定拠出年金などに加入しているから」(8.3%)より、「個人年金の商品を知らないから」(15.7%)という回答の割合の方が高くなっている。

(3)老後の生計を支える手段
老後の生計を支える手段(すでに老後生活を送っている場合は現在の状況)として、どのようなものを考えているかについて、1番目に頼りにするものは、「公的年金(国民年金や厚生年金など)」(57.2%)を挙げる割合がもっとも多く、次いで「自分または配偶者の就労による収入」(22.1%)、「貯蓄または退職金の取り崩し」(8.8%)となった。

「2番目に頼りにするもの」でいちばん多いのが「貯蓄または退職金の取り崩し」(29.8%)となっている。

前回調査(平成27年)では、老後の生計を支える手段として1番目に頼りにするものは「公的年金(国民年金や厚生年金など)」となり、今回と同様だが、その割合は54.4%で、今回の調査では前回より2.8%増加している。
また、前回調査では「自分または配偶者の就労による収入」の回答割合は29.3%だったが、今回は22.1%と前回より7%以上減少した。

前回調査(平成27年)より、公的年金に期待する回答が増加している。

(4)今後の老後の生活を支える年金給付等のあり方

今後の老後の生活を支える年金給付等のあり方については、「公的年金に要する税や社会保険料の負担が増加しても、老後の生活は公的年金のみで充足できるだけの水準を確保すべき」という回答が全体の44.0%を占め、「公的年金を基本としつつも、その水準は一定程度抑制し、これに企業年金や個人年金、貯蓄などを組み合わせて老後に備えるべき」(41.7%)という回答より多い結果となった。
年齢階級別にみると、20~29歳は、「公的年金を基本としつつも、その水準は一定程度抑制 し、これに企業年金や個人年金、貯蓄などを組み合わせて老後に備えるべき」(51.0%)という回答がもっとも多いが、70歳以上になると「公的年金に要する税や社会保険料の負担が増加しても、老後の生活は公的年金のみで充足できるだけの水準を確保すべき」(50.6%)という回答がもっとも多くなっている。
年齢を重ねるほど、公的年金に期待する傾向がうかがえる。

男女別でみると、男性の方が、わずかながら公的サポートを期待する回答が多い。
60歳を境に、「公的年金を基本にしつつも、その水準は一定程度抑制し、これに企業年金や個人年金、貯蓄などを組み合わせて老後に備えるべき」との回答は40%以下になる。




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