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「CHASE」実践の調査研究の速報が報告される(11月13日)

厚労省は13日、社会保障審議会介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会(松田晋哉委員長)に今年度実施している「介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業」の速報を報告した。16日の分科会にも報告され、令和3年度の介護報酬改定に向けた検討で活用される。

同調査研究は、今年度から試行的に導入されている、新たな介護のデータベース「CHASE」により収集されたデータを分析し、介護施設・事業所に対してフィードバックを実施、その効果が介護サービスの質の向上に役立つかを検証することなどが狙い。

データ分析とともに、フィードバック等に関するアンケートが行われ、CHASEへの入力の負担感が「大きい」との回答が9割に上ることや、フィードバックデータについて「現時点では活用できないが、改善すれば活用できる」が4割程度であることが紹介された。

老健で6剤以上の服薬が4割

データベースを用いた分析は、CHASEにデータ登録があった特養や老健、通所サービス250事業所の3230人を対象に実施。またフィードバックに関するアンケート調査173事業所に対して行った(回収90事業所、回収率52.0%)。なお調査研究でデータ登録があったのは642事業所、利用者3万584人。CHASEのID発行墨事業所数は10月末時点で2999事業所となっている。

データとしては、①利用者概況等②ADL③認知機能④口腔機能⑤栄養状態⑥日中活動等⑦服薬─について収集した。

今回の速報では、「栄養状態」について922人のうち低栄養リスクが6ヶ月で悪化したのは17.7%と2割弱いた。またBMIの変化でも910人のうち20.8%と2割で「1超低下」した。

また「服薬」について老健施設の入所者741人分について報告された。6剤以上服薬している入所者が37.8%と最も多く、4~5剤が26.3%、1~3剤が35.9%となっている。薬剤分類別では血圧降下剤が26.9%で最も多かった。 参考として2施設・86人の6か月間での変化も報告された。0ヶ月では服薬6剤以上が84.9%と8割を超えたが、6か月目には37.2%と4割弱に低下し、1~3剤が34.9%、4~5剤が27.9%と、服薬数が減ったことが示された。

CHASEへの入力の負担感「大きい」が9割

フィードバックについては、事業所単位と利用者単位のそれぞれで実施。事業所フィードバック票では、▽利用者属性▽栄養状態▽認知機能▽口腔機能▽栄養状態▽日中活動等に係る生活・ケア指導等評価▽服薬状況─について、全国データや自施設における過去データと比較等ができるような内容とした。

利用者フィードバック票は、▽ADL▽認知機能▽口腔機能▽栄養状態▽日中活動等に係る生活・ケア指導等評価─について、全国データや各人の過去データとの比較ができるようにした。

アンケートでは、これまでも継続的に評価・記録を行ってきた項目をCHASEシステムに入力することの負担感について「大きい」は53%、「どちらかといえば大きい」は37%と、合わせて90%に上った。負担感を感じるのは、「データ入力作業」「システムの操作方法についての理解」「利用者情報の収集」など。

事業所フィードバック票を用いることでケアの質の向上に活用できるかどうかについて、「ケアの結果の評価」など8場面について聞いたところ、各項目で最も多かったのは「現時点では活用できないが、改善すれば活用できる」で4割程度。「活用できる」は1割から2割で、「現時点である程度活動できるが、改善されれば更に活用できる」も1割程度に止まっている。

「ケアの結果の評価」で「活用できる」は9%、「現時点である程度活用できるが、改善されれば更に活用できる」は10%と合計で19%。また「施設全体の取組の見直し」では「活用できる」は14%、「現時点である程度活用できるが、改善されれば更に活用できる」は10%と合計で24%になっている。

改善点としては、「自施設の記録システムともデータ連携が出来るようにしてほしい」「自施設における前年比較が出来ることが望ましい」などがあげられた。

委員からは、「チェイス入力加算等を作らなければなかなか入力してもらえないのではないか」「(介護職員への)データ入力やデータ分析の研修を行うべき」「医療でもDPCが入るまでは大学病院でもあまり分析は行われていなかった。分析の面白さを知ってもらえたらいい」などの意見が出された。

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